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大学・研究所にある論文を検索できる 「Nutritional epidemiological study on starch and sugar intake in Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Nutritional epidemiological study on starch and sugar intake in Japan

藤原, 綾 東京大学 DOI:10.15083/0002004249

2022.06.22

概要

背景および目的
 齲蝕、肥満、Ⅱ型糖尿病、心血管疾患、抑うつ症状といった疾患リスクとの関連が示唆されているため、食事中の炭水化物への関心が集まっている。しかし、炭水化物の健康影響はでんぷんや単糖・二糖類といった各糖類の種類により異なる可能性がある。
 でんぷん・糖類の健康影響を調べるにはこれらの摂取量の測定方法の開発が不可欠である。具体的には摂取量や摂取源を推定するための食品成分表、大規模疫学研究に適した食事評価質問票が挙げられる。一方日本を含むアジア諸国では、欧米諸国に比べてでんぷん・糖類の摂取とその健康影響を調査した疫学研究が乏しい。日本と欧米諸国との食習慣の違いを考慮すると、でんぷん・糖類の摂取量や摂取源は日本と欧米諸国で異なる可能性があり、その健康影響も異なる可能性がある。このため日本においてでんぷん・糖類の摂取に関する疫学研究の実施とそのための測定方法の開発が必要である。

 そこで本論文の目的は、日本人におけるでんぷん・糖類の摂取の測定方法を開発すること(目的1)と、日本におけるでんぷん・糖類の摂取実態を明らかにすること(目的2)、とした。各章の構成は下記の通りである。
1章:アジア諸国におけるでんぷん・糖類摂取に関する栄養疫学研究のレビュー
2章:日本におけるでんぷん・糖類成分表の開発(目的1-1)
3章:日本人におけるでんぷん・糖類摂取量の推定(目的2)
4章:日本人における食事評価質問票のでんぷん・糖類摂取量の推定の妥当性の検討(目的2-2)

アジア諸国におけるでんぷん・糖類摂取に関する栄養疫学研究のレビュー(第1章)
 日本を含むアジア諸国では欧米諸国に比べて、でんぷん・糖類の摂取に関する栄養疫学研究が乏しい。そこでアジア諸国におけるでんぷん・糖類の摂取に関する栄養疫学の全体像を示すことを目的として、レビューを実施した。文献検索は、でんぷんと糖類、食事摂取、アジアに関する検索語を用いてPubMedで行った。アジアの定義は国連の定義を使用した。推定されたでんぷん・糖類摂取量の精度は、でんぷん・糖類摂取量の測定方法に依存すると考えられるため、特に測定方法に着目した。具体的には、①食事調査法が複数日の食事記録/24時間思い出し法あるいは妥当性の確認された食事評価質問票か、②食事全体が評価されているか、③食品成分表が調査国の食品を包括的に収載しているか、の3点で各研究の質を評価した。
 全部で59研究がレビューの対象となった。このうち、①食事調査法が複数日の食事記録/24時間思い出し法あるいは妥当性の確認された食事評価質問票であった研究は26研究、食事全体が評価されていた研究は49研究、③食品成分表が調査国の食品を包括的に収載していた研究は17研究だった。しかし、①~③の全ての基準を満たしており、質が高いと評価された研究は5研究のみだった。残りの研究に関しては、①~③のどれかについてそれぞれ不備があり、でんぷんまたは糖類の摂取量が過小・過大評価されている可能性が考えられる。このため、これらの研究で報告されたでんぷん・糖類摂取量は不正確である可能性が示唆された。以上の結果より、調査国を対象とした包括的な食品成分表の開発と妥当性の確認された食事評価質問票が、アジア諸国におけるでんぷん・糖類の疫学研究の実施に必要であることが示唆された。

日本におけるでんぷん・糖類成分表の作成(第2章)
 でんぷんや糖類といった炭水化物の種類によってその健康影響は異なることが示唆されており、各炭水化物に関してその健康影響を調査することが必要である。一方で1章では、でんぷん・糖類摂取量の正確な測定のためには、各国における包括的な食品成分表が必要であることが示唆された。そこで日本において習慣的に摂取されている食品2222種類を対象として、でんぷんと10種類の糖類(総糖類、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、添加糖類、遊離糖類)の含有量のデータベースを作成した。
 食品中のでんぷんと各糖類(添加糖類と遊離糖類以外)の含有量の推定に際しては、2015年版日本食品標準成分表の収載値、日本で報告された文献上の分析値、類似食品の値、原材料配合割合からの計算値、他国の食品成分表の収載値、利用可能炭水化物含有量から総糖類含有量を差し引いた値(でんぷんのみ)を使用した。この時、含有量を推定できなかった食品についてはでんぷん・各糖類の含有量は0g/食品100gとした。一方で食品中の添加糖類と遊離糖類については、総糖類と単糖・二糖類の含有量と添加糖類・遊離糖類の定義をもとに、でんぷん・各糖類と同様の方法で含有量を推定した。このデータベースを用いて、日本人におけるでんぷん・糖類摂取量を推定することが可能となった。

日本人におけるでんぷん・糖類摂取量の推定(第3章)
 欧米諸国ではでんぷん・糖類の摂取量が広く報告されているが、摂取量の範囲は対象者の性・年齢、また国によって様々である。一方で日本をはじめとするアジア諸国ではでんぷん・糖類の摂取量に関する知見が乏しい。そこで2章で開発したでんぷん・糖類のデータベースを用いて、日本人におけるでんぷんと10種類の糖類(添加糖類を除く成分表に存在する糖類と天然糖類)の摂取量を推定した。摂取量の推定にあたり、日本全国の幼児368人(18~35ヶ月)、未就学児376人(3~6歳)、小中学生915人(8~14歳)、成人392人(20~69歳)の食事記録のデータ(幼児が1日間、未就学児と小中学生が3日間、成人が4日間)を使用した。天然糖類の摂取量は総糖類の摂取量から遊離糖類の摂取量を差し引いて推定した。
 でんぷんの摂取量平均は55.6g/日(18~35ヶ月の女児)から206.0g/日(8~14歳の男子小中学生)であり、性・年齢に関わらず摂取量の50%以上が米類由来だった。総糖類の摂取量平均は46.1g/日(18~35ヶ月の女児)から68.7g/日(8~14歳の男子小中学生)であった。全年齢・性別において、総糖類の摂取量に寄与する糖類はスクロース(平均:18.2~34.0g/日)、グルコース(7.8~13.1g/日)、ラクトース(5.3~13.1g/日)、フルクトース(7.6~11.1g/日)であった。各糖類の主要な摂取源は、総糖類は乳類(幼児)と菓子類(その他の年代)、スクロースは菓子類、グルコースは果物類(幼児)と野菜類(その他の年代)、ラクトース(乳類)、フルクトースは果物類(幼児と未就学児)と野菜類(小中学生と成人)であった。以上の結果より、欧米諸国と比較して、日本人のでんぷんの摂取量は同程度であったが、総糖類の摂取量は比較的低いことが示唆された。

日本人成人における自記式食事歴質問票のでんぷん・糖類摂取量の推定の妥当性の検討(第4章)
 大規模分析疫学研究の実施には妥当性の確認された食事評価質問票が不可欠である。一方で1章からは、でんぷん・糖類の摂取量の正確な推定には妥当性の確認された食事評価質問票が必要であることが示唆された。そこで2章で開発したでんぷん・糖類のデータベースを用いて、日本において広く利用されている2種類の食事評価質問票(自記式食事歴法質問票(DHQ)と簡易型DHQ(BDHQ))で推定したでんぷんと10種類の糖類(開発した成分表に存在する糖類)の摂取量の妥当性を、16日間食事記録を基準として検討した。対象者は日本の3地域からリクルートした女性92人(31~69歳)、男性92人(32~76歳)とし、でんぷん・糖類摂取量は密度法または残渣法を用いてエネルギー調整した。
 評価したほとんどの炭水化物について、DHQまたはBDHQで推定した平均摂取量はDRで推定した平均摂取量と有意に異なっていた。食事記録とDHQの間のピアソン相関係数から、DHQは評価したほとんどの炭水化物(マルトース以外)について個人をランク付けできることが示唆された(マルトース以外の相関係数:女性0.31~0.71、男性0.43~0.74、マルトースの相関係数:女性0.14、男性0.18)。同様にBDHQもほとんどの炭水化物(マルトースとガラクトース以外)について個人をランク付けできることが示唆された(マルトースとガラクトース以外の相関係数:女性0.37~0.55、男性0.44~0.63、マルトースの相関係数:女性0.15、男性0.21、ガラクトースの相関係数:女性0.19、男性0.10)。しかし食事記録とDHQ、BDHQで推定した摂取量のBrand-Altman Plotからは、評価した全ての炭水化物についてDHQとBDHQは集団レベルの摂取量平均と個人レベルの摂取量を評価するには不十分であることが示唆された。残渣法によるエネルギー調整値に関しても同様の結果が得られた。以上の結果より、DHQとBDHQは評価したほとんどの炭水化物に関して、摂取量による個人のランク付けが可能であることが示唆され、日本における疫学研究においてこれらの質問票が使用可能であると考えられる。

結論
 本研究は、日本人におけるでんぷん・糖類摂取量の測定方法として、食品中のでんぷん・糖類含有量のデータベースを開発し、食事評価質問票のでんぷん・糖類の摂取量推定の妥当性の検討を行った。また本研究では、開発したデータベースを使用して日本人小児・成人を対象としてでんぷん・糖類の摂取状況を把握することにより、欧米諸国と比較して、日本人のでんぷんの平均摂取量は同程度、総糖類の平均摂取量は比較的少ないことを明らかにした。本研究で開発した測定方法と提示した知見がでんぷん・糖類の健康影響を調査する今後の疫学研究の基盤を提供することは確実である。

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