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大学・研究所にある論文を検索できる 「A New Treatment Strategy for Pulmonary Fibrosis Targeting the Bone Morphogenetic Protein Pathway, and the Importance of Radiological Pattern for Selecting Candidates for Receiving a New Treatment for Pulmonary Fibrosis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A New Treatment Strategy for Pulmonary Fibrosis Targeting the Bone Morphogenetic Protein Pathway, and the Importance of Radiological Pattern for Selecting Candidates for Receiving a New Treatment for Pulmonary Fibrosis

富貴原, 淳 名古屋大学

2022.10.24

概要

【背景】
特発性肺線維症(IPF)は慢性進行性で予後不良の線維化性肺疾患である。現在実臨床で用いられている抗線維化薬の効果は限定的であり、新規の治療法の開発が求められている。トランスフォーミング成長因子 β(TGF-β)は、線維芽細胞からの細胞外マトリックス産生の促進などの作用により、IPF の病態において中心的な役割を担っている。一方、骨形成蛋白(BMP)4 や BMP7 はその受容体である BMP 受容体 1 型(BMPR1)・ 2 型(BMPR2)のヘテロダイマーと結合し、TGF-β 刺激によって誘導される線維化性変化を修飾することが、肺線維症を含む様々な線維化性疾患において報告されている。本研究では BMPR2 の過剰発現が TGF-β/BMP 経路の均衡を修飾することで、肺線維症において TGF-β によって誘導される細胞外基質産生を抑制すると仮説を立てた。
また、IPF は他の慢性線維化性間質性肺炎との鑑別が容易ではないため、仮に新規治療法が開発されたとしても、臨床試験などにおいて新規治療の対象患者の絞り込みが難しく、このことが IPF 研究におけるもう一つの課題といえる。現在のガイドラインでは、外科的肺生検によって病理学的評価ができていない特発性間質性肺炎(IIP)患者においては、胸部 CT で「通常型間質性肺炎(UIP)パターン」を示すことが、IPF を診断する上で必要な条件とされている。一方、近年の研究においては、胸部 CT 所見が少し典型像から外れた「probable UIP パターン」であっても、肺の病理像を確認せずに IPF と診断してよい、という意見も支持されている。しかしこの「広義診断」の妥当性は、これまで臨床試験のサブ解析以外(実臨床)では検証されておらず、また生存期間などの長期アウトカムによる評価もされていない。

【方法】
肺線維症におけるBMPR2 過剰発現の効果を検証するため、肺線維芽細胞に対して、アデノウイルスベクターによる BMPR2 過剰発現を行い、TGF-β への反応性を評価した。また BMPR2 を過剰発現した血管内皮前駆細胞(EPC)の静脈内注射を用いた、ブレオマイシン誘発性肺線維症ラットモデルにおける BMPR2 過剰発現や、この EPC から放出されたエクソソームを用いた肺線維芽細胞における BMPR2 過剰発現も試みた。 TGF-β やブレオマイシンにより誘導された線維化促進のマーカー(Smad2/3 のリン酸化、及び fibronectin の産生)の抑制の程度を治療効果の指標として用いた。
一方臨床研究として、胸部 CT が probable UIP パターンを呈していれば、肺病理所見の確認がされていなくても IPF と診断できる、という「広義診断」の妥当性を検証するために、後ろ向きコホート研究を実施した。この研究では胸部 CT が UIP パターンの患者と probable UIP パターンの患者との間で、臨床・画像・病理の専門家による合議診断(MDD)が IPF とならなかった患者の割合を比較した。また IPF は鑑別が問題となる他の慢性線維化性間質性肺炎と比較して、予後不良で急性増悪を起こしやすいことから、両群間での生存期間や初回急性増悪までの期間の比較を行った。

【結果】
肺線維症を来したラットの肺組織、及び TGF-β で刺激したヒト及びラット由来の肺線維芽細胞において、BMPR2 の発現が低下していた(Fig.1A-D)。肺線維芽細胞への BMP7 単独刺激では、TGF-β による Smad2/3 のリン酸化や fibronectin の産生抑制はされなかったが、アデノウイルスを用いて BMPR2 を過剰発現させた場合、BMP リガンドによる無刺激条件でも Smad2/3 のリン酸化は抑制され(Fig.1E)、この BMPR2 過剰発現細胞を BMP7 で刺激することで fibronectin の産生も抑制された(Fig.1F)。
BMPR2 過剰発現 EPC を準備し、そこから放出されたエクソソームによって肺線維芽細胞を処理すると、同様に肺線維芽細胞において BMPR2 の発現上昇が観察されたが、このエクソソーム治療を行った細胞を TGF-β によって刺激すると(詳細な原因検索は完遂できていないが)多くの細胞が死滅してしまうことが明らかになり、BMPR2の抗線維化効果の確認実験を完了することはできなかった。また、ラット肺線維症モデルを BMPR2 過剰発現 EPC の静脈注射により治療することも試み、EPC の肺への送達には成功した。しかし、BMPR2-EPC 治療を受けたラットでは肺内のコラーゲン産生が抑制される傾向はみられたが、本研究中では重症度の安定した肺線維症モデルの作出に至らず、治療効果の検証実験の完遂には至らなかった。
一方の臨床研究では、402 名の慢性線維化性間質性肺炎患者のデータを後ろ向きに収集した。Probable UIP パターンを呈した患者において、最終的に IPF と診断された患者の割合は僅か 66%であった。CT 上の Probable UIP pattern は長期生存や初回急性増悪までの期間が長いことの独立した有意な関連因子であった(Fig.2)。一方で分析対象を IPF と最終診断された患者に限れば、CT パターンと予後との関連はなかったことから、臨床的に IPF が強く疑われる場合に限れば、probable UIP パターンを呈する患者において病理所見の確認を省略して IPF を診断することの妥当性が示唆された。

【結論】
線維症を生じた肺の組織や TGF-β で刺激された肺線維芽細胞において、BMPR2 の発現は低下していた。アデノウイルスによる BMPR2 過剰発現は、肺線維芽細胞において TGF-β により誘導される線維化促進性マーカーの抑制に有効であった。エクソソームによる線維芽細胞への BMPR2 過剰発現実験、ならびに動物実験における EPC を用いた肺への BMPR2 送達実験は十分な検証に至らなかった。BMPR2 過剰発現の臨床的有効性を明らかにするために更なる検証が必要である。
胸部 CT で probable UIP パターンを呈する患者においては、UIP パターンを呈する患者と比較して、最終診断が IPF ではない患者の割合が高く、予後も良好であった。臨床的に IPF が強く疑われる場合に限れば、CT 所見が典型像でなくても病理所見の確認を省略して IPF を診断することの妥当性が示唆されたが、診断においては慎重な臨床的評価が重要である。また IPF の臨床試験の結果を実臨床に応用する際には、本来は IPF よりも予後のよい別の慢性間質性肺炎患者がコホートに含まれている可能性について注意が必要であると考えられた。

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