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大学・研究所にある論文を検索できる 「Desloratadine inhibits heterotopic ossification by suppression of BMP2-Smad1/5/8 signaling」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Desloratadine inhibits heterotopic ossification by suppression of BMP2-Smad1/5/8 signaling

Kusano, Taiki 草野, 大樹 名古屋大学

2020.06.01

概要

【緒言】
異所性骨化は本来骨組織が形成されない部位に病的な骨形成が起こる現象として定義され、脊髄損傷や大関節手術、熱傷後、遺伝子異常に伴う疾患に発生し、股関節、肘関節などの関節近傍に好発する。発症率としては、脊髄損傷、頭部外傷後の10~20%、人工股関節置換術後の0.6~61.7%であり、関節痛や関節拘縮の原因となる。治療は骨化成熟後の切除が行われるが再発のリスクを伴うため、基本的には予防が重要である。しかし、古典的に施行されているインドメタシンやエチドロネートなどのビスフォスフォネート製剤、放射線療法は副作用の発生が危惧され、さらには異所性骨化の発生メカニズム含め予防の基礎的なエビデンスは乏しいのが現状である。
我々は、これまで骨格筋の間質に存在する間葉系幹細胞で、PDGFRαを特異的なマーカーとして抽出されるもので、筋内の脂肪化や線維化、骨化のoriginとなるPDGFRα陽性細胞を報告してきた。本研究は、この細胞を使用し、既存薬から別の効能を見出す創薬方法であるdrugrepositioningの手法にて、異所性骨化を抑制する薬剤を抽出することを目的とした。

【対象および方法】
FDAから認可された1271薬剤の中から日本で長期投与可能な320薬剤を選択し、それらを添付しつつPDGFRα陽性細胞を骨分化誘導し、ALP活性にて定量化を行った。次にscreeningにて得られた薬剤であるデスロラタジンにてWST-8assayによる毒性試験、さらにALP活性・Alizarin染色による濃度依存性試験を行った。
次にデスロラタジン(第2世代の抗ヒスタミン剤)の骨分化抑制のメカニズムを解析した。まず使用したdrugplate内にあるデスロラタジン以外の抗ヒスタミン剤7薬剤を使用し骨分化誘導を行い、ALP活性による定量化で濃度依存性試験を行った。また、PDGFRα陽性細胞にデスロラタジンを投与し骨分化誘導を行い、骨形成関連遺伝子の発現を定量的PCR法にて評価した。さらには、骨化の主要なシグナルとして知られているBMP2-Smad1/5/8シグナル、MAPKカスケードであるBMP2-Erk1/2シグナル、BMP2-p38シグナルにつきWesternblotting法を用いて評価した。
異所性骨化モデルは、有効性・信頼性とも知られているマウスのアキレス腱切離モデルを使用し、切離後から人の投与量の12倍でデスロラタジンを投与した。術後10週でµCTにて定量化を行い、凍結切片作成後にHE染色とvonKossa染色にて組織学的評価を行った。

【結果】
Drugrepositioningの結果、FDA承認の320薬剤からPDGFRα陽性細胞の骨分化を抑制するデスロラタジンを抽出し、デスロラタジンは毒性なく濃度依存性にPDGFRα陽性細胞の骨分化を抑制した(Fig.1A-C)。
また定量的PCR法の結果、デスロラタジンは早期骨芽細胞分化マーカーであるCOL-1の発現を抑制し、骨分化の重要な転写因子であるRUNX2の発現も抑制傾向であった(Fig.2A1-2A4)。第2世代の抗ヒスタミン剤であるデスロラタジンの骨分化抑制メカニズムを解析するため、使用したdrugplate内にあるデスロラタジン以外の抗ヒスタミン剤7薬剤を使用し骨分化誘導を行い、ALP活性による定量化で濃度依存性試験を行ったが、骨分化の抑制は見られなかった(SupplementaryTableS1,Fig.S1)。次にPDGFRα陽性細胞にBMP2を刺激し、Smad1/5/8リン酸化、Erk1/2リン酸化、p38リン酸化をWesternblotting法を用いて解析した結果、Smad1/5/8リン酸化のみ抑制され、Erk1/2リン酸化、p38リン酸化は不変であった(Fig.2B-D)。この結果より、デスロラタジンは抗ヒスタミン作用やMAPKカスケードではなくBMP2-Smad1/5/8シグナル経路の抑制によりPDGFRα陽性細胞の骨分化を抑制することが考えられた。
またマウスのアキレス腱切離する異所性骨化モデルの結果、デスロラタジン投与によって有意に異所性骨化を抑制し(Fig.3A,B)、HE染色とvonKossa染色にて組織学的には同様であるがサイズが縮小した(Fig.3C,D)。この結果より、デスロラタジンはinvivoの異所性骨化モデルにおいても異所性骨の形成を抑制することが分かった。

【考察】
異所性骨化のoriginであるPDGFRα陽性細胞を使用し、drugrepositioningの手法を用いることで、invitroでもinvivoでも骨分化を抑制するデスロラタジンを抽出した。さらにその骨分化抑制メカニズムは抗ヒスタミン作用ではなく、骨分化の主要なシグナル経路であるBMP2-Smad1/5/8の抑制であることが分かった。デスロラタジンは既にFDAで承認された薬剤であり、マウスの薬剤投与量は人の投与量の6から13倍が適切であるといった報告があることから、本研究のinvivoにおける人の投与量の12倍量は適切であり、早期に臨床応用することが期待できる。
過去の文献では、アキレス腱切離モデルの異所性骨化にBMP2-Smad1/5/8シグナル経路が関連していると報告しており、本研究においてデスロラタジンがアキレス腱切離モデルの異所性骨化を抑制したことを支持するものであった。ただし、アキレス腱切離モデルの異所性骨化にはmTORC1シグナル経路が関わるといった報告もあり、さらなる研究が必要であると考える。
また、異所性骨化を起こす遺伝子異常として進行性骨化性線維異形成症(FOP)があり、レチノイン酸γアゴニストであるパロバロテンやmTORインヒビターであるラパマイシンが治験中であるが、現時点では有効な治療薬はない。FOP患者のiPS細胞の研究やFOPマウスモデルにおいてBMP2-Smad1/5/8シグナルの活性上昇があるといった報告があり、BMP2-Smad1/5/8の抑制をしたデスロラタジンはFOP治療薬の可能性があると考えられ、さらなる研究が必要である。

【結論】
人由来の異所性骨化のoriginであるPDGFRα陽性細胞を使用し、invitroでもinvivoでも骨分化を抑制するデスロラタジンを発見した。その効果メカニズムはBMP2-Smad1/5/8の抑制であり、今後早期臨床応用も期待できる薬剤と考えられた。

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