Twisted arrow categories of operads and Segal conditions
概要
審査の結果の要旨
氏 名 ブルキン セルゲイ ウラディミロヴィチ
ブルキン セルゲイ ウラディミロヴィチの博士論文は,オペラッドに対して,捻れ射圏と
よばれる圏を構成し,その上の Segal 前層の圏と,オペラッド上の代数の圏との間の圏同値
を示したものである.
一般に圏 C に対して,その捻れ射圏 T w(C) は次のように構成される.捻れ射圏 T w(C)
の対象は,圏 C の射全体とする.また,T w(C) の射は圏 C の射 f, g に対して,それらの
間の可換図式を与える射の組,つまり,g = h0 ◦ f ◦ h1 を満たす (h0 , h1 ) として定める.
オペラッド (operad) は圏の一般化であり,対象の間の射を,根付きツリー (rooted tree)
で記述される演算によって定めたものである.本論文では,まず圏に対する捻れ射圏の概念
を拡張して,一般のオペラッド P に対する捻れ射圏 T w(P ) を構成した.
圏論的な手法によるホモトピー論では,Eilenberg-Zilber による単体的集合の概念が重要
な役割を果たす.単体的集合とは,単体の圏 ∆ から集合の圏への反変関手である.圏 C に
対してその nerve N (C) とは,圏 C の対象と射から構成される単体的集合であり,その幾
何学的実現は圏 C の分類空間とよばれる.単体的集合がある圏 C から構成される N (C) と
なるための条件は Segal 条件として知られている.
本論文では,この枠組みを以下のように一般化した.まず,オペラッド P がモノイド圏
の場合に,対応する捻れ射圏 T w(P ) は単体の圏 ∆ であることを示した.さらに,さまざ
まなオペラッド P を考えることにより,Connes の巡回圏など重要な圏が得られることを
示し,このような一般的な捻れ射圏 T w(P ) 上で,Segal 条件を定式化した.圏 C 上の前層
(presheaf) とは,C から集合の圏への反変関手であるが,T w(P ) 上で,Segal 条件を満たす
Segal 前層の圏を定義することができる.本論文の主定理は次の通りである.
定理 P をオペラッドとする.P の捻れ射圏 T w(P ) 上の対象が一つの Segal 前層の圏は P
上の代数の圏と同値である.
本論文では,さらにオペラッド P に対して,捻れ射圏 T w(P ) が一般化された Reedy 条
件を満たすための特徴付けを与えた.
ブルキン セルゲイ ウラディミロヴィチの博士論文は,オペラッド P から捻れ射圏 T w(P )
を構成し,その上の Segal 条件を考察することによって,従来の単体的集合に関する理論を
一般化した.これは,圏論的手法によるホモトピー論の分野に新しい知見を与えたものであ
る.よって,論文提出者 ブルキン セルゲイ ウラディミロヴィチは,博士 (数理科学) の学
位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める.