リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「移植後拒絶反応におけるOGG1の役割」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

移植後拒絶反応におけるOGG1の役割

五味淵, 俊仁 信州大学

2021.02.22

概要

1.研究開始当初の背景
移植医療は、実験的医療の域を脱し世界中で多くの末期臓器不全の患者に恩恵をもたらしている。しかし、移植後拒絶反応は、免疫抑制剤の進歩した現在においてもなお、重要な合併症であり、特に急性拒絶反応は移植後一年以内の死亡率に最も影響を及ぼす因子である。近年、虚血再潅流障害と急性拒絶反応の相互作用による移植後急性炎症の研究がすすんでおり、移植後早期の炎症をいかに抑制するかが、グラフト生着の長期成績を左右すると考えられるに至っている。脳、心、腎などの臓器における虚血後の再還流は、その過程で生成されるreactive oxygen species(ROS)により臓器障害を惹起するとされている。ROS の蓄積による酸化ストレスは細胞へのストレスの中で重要なものの一つである。すなわち DNA やヌクレオチドなどの核酸が反応性の高い活性酸素にさらされると、塩基の損傷などが起こり、細胞は増殖を停止し DNA の修復を行う。これが適切に修復されないと、突然変異やアポトーシス機構を誘導し自ら細胞死を引き起こす。この中で最近注目されているのが 8-oxoguanine で、OGG1 はこれを除去修復する DNA 修復酵素である。OGG1 と虚血再還流障害の関連については、Fitton らは犬の心臓の虚血再灌流障害によって、心筋内に OGG1 が蓄積していることを報告し(Fitton et al.,Ann Thorac Surg 2005;80:1812-20)、その他にも、Kosieradzki らは腎移植での虚血再還流障害は急性拒絶反応に影響していると報告している(Kosieradzki et al., Transplant Proc. 2008 Dec;40(10):3279-88)。また Tanakaらはマウスの心移植モデルにおいて、虚血再還流障害の影響を改善させることで急性および慢性拒絶反応が減少したと報告している。(Tanaka et al., Blood 2004 Dec 1;104(12):3789-96)

2.研究の目的
急性拒絶反応における DNA 修復酵素の一つである OGG1 の役割について、OGG1 ノックアウトマウスを用いた異所性心移植モデルを用いて解析したい。この研究成果は OGG1 を介した虚血再還流障害の制御により、急性拒絶反応を抑制しうる有用な治療戦略として期待できると考えている。

3.研究の方法
(1) 急性拒絶モデル作成および生着率の比較
6 週から 8 週の雄のOGG1 ノックアウトマウス(C57BL/6 (H-2b)バックグランド)をドナー、BALB/c (H-2d)マウスをレシピエントに用い、腹部への異所性心移植モデルを作成する。コントロール群として、C57BL/6 (H-2b)マウスをドナー、BALB/c (H-2d)マウスをレシピエントとした MHC フルミスマッチモデルを作成する。移植後は移植心の拍動を確認、拍動の消失をもって拒絶とし、生着率を比較検討する。

(2) 組織学的検討
このコントロール群においては、移植後 6 日から 10 日で移植心は拒絶されるので、移植後 5日に犠牲死させ移植心を摘出する。摘出した移植心は、2 分割しパラフィン包埋標本、凍結標本とする。HE 染色にて炎症細胞浸潤や心筋傷害の程度を観察し比較検討する。IL-1β、8OHdG、 OGG1 について免疫染色を行い両群間で比較検討する。

4.研究成果
(1) 急性拒絶モデルのグラフト生着率
OGG1 ノックアウト群(n=4)、コントロール群(n=4)とも移植後5日までに拒絶され、両群間に有意差を認めなかった。(図 1)

(2) 組織学的検討
(i) 移植後5日に摘出された移植心の HE 染色においては、OGG1 ノックアウト群では広範囲に炎症細胞浸潤、心筋炎を認め、組織の浮腫や出血を認めた。コントロール群においても同様に炎症細胞浸潤や心筋障害を認めたが、ノックアウト群と比較すると程度は軽度であった。(図 2)
(ii) 図 3 は IL-1βの免疫染色を示す。炎症細胞の浸潤する部位に一致して発現を認めた。コントロール群ではOGG1 ノックアウト群と比較すると発現の程度は軽度であった。

(3) サイトカインの解析
移植後5日に犠牲死させIL-1β、TNF-α、IFN-γ、IL-6 に関して、PT-PCR を施行した。現在、データの解析を施行中である。

(4) 慢性拒絶モデル作成と生着率の比較
OGG1 ノックアウトマウス(C57BL/6 (H-2b)バックグランド)をドナー、B6.C-H-2bm12 をレシピエントに用い、急性期モデル同様に 異所性心移植モデルを作成した。コントロール群として、 B6.C-H-2bm12 マウスをドナーとした MHC マイナーミスマッチモデルを用いた。移植後 21 日、 42 日に犠牲死させて移植心を摘出した。現在データを解析中である。

これまでの研究で、OGG1 は急性拒絶反応と関与していた。二群間でグラフト生着率に有意差はなかったが、組織学的には OGG1 ノックアウト群で炎症細胞浸潤や心筋障害の程度は重度であった。急性拒絶反応との関連を解析すべく移植後 5 日の摘出心で IL-1β、8OHdG、OGG1 で免疫染色を施行したところ、OGG1 ノックアウト群でIL-1β、8OHdG が強く発現していた。RT-PCR、ERISAを施行し現在データを解析中である。また、OGG1 が慢性拒絶に関与している可能性を考慮し、現在慢性拒絶モデルを作成し、現在データを解析中である。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る