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大学・研究所にある論文を検索できる 「超音波屋内高精度測位技術とその実用化に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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超音波屋内高精度測位技術とその実用化に関する研究

石井, 徹 神戸大学

2022.09.25

概要

本研究は、屋内測位方式の中では比較的高精度ながら移動体測位が出来ないという、超音波測位の従来課題を克服し、cm精度の高精度測位を可能とする基盤技術と、本技術の実用化について述べている。本論文は全6章で構成される。

第1章は序論である。本論文の研究背景及び、研究目的について述べられている。研究背景として、屋外測位ではスマートフォンの地図アプリケーションに代表される測位衛星(GNSS)による測位システムが我々の一般生活に広く普及している一方で、屋内測位では電波、磁気、カメラ画像、音波/超音波、あるいはこれらのうちの複数を組み合わせた様々な方式が実用化されており、屋外測位におけるGNSSのようなデファクトスタンダードは確立されていないという状況がある。

2章では、第1章の序論を踏まえ、屋内で移動する人や物に対し、cm精度の位置検知が可能な屋内測位基盤技術の確立を目指した技術研究テーマを2つ提案している。

第3章では、直接スペクトラム拡散(DSSS)による高精度超音波測距おけるドップラシフトの補正技術について述べられている。超音波DSSS測距におけるドップラシフトによる相関信号波形の劣化は、DSSS符号'“の種類よりもむしろコード長に依存し、コードが長いほどドップラシフトの影響が顕著に現れ、相対速度の増加につれ、相関信号波形は急激に悪化する。送信するDSSS符号全体では相関信号上に明確なピークが得られないがDSSS符号を複数に分割した各々のサブブロックではピークが得られる条件があり、異なるサブブロックのピーク間隔からドップラ速度を求め、相互相関演算に供する参照信号を伸縮補正する新方式が提案されている。コード長384のDSSS符号を用いて評価を行い、ドップラ補正を行わない従来手法では加速度2.9m/s2、速度l.Om/sで測距不能となるのに対し、本提案に基づいてブロック長96の4サブブロックに分割してドップラ補正を行い、加速度9.8m/s2、速度2.0m/sにて標準偏差5mm未満で測距できることが実機実験で確認されている。さらに本提案方式による動体測定の適応範囲をシミュレーション評価し、前期実験と同じDSSS符号にて、加速度30m/s2、速度5.5m/sの移動体まで追従可能であることが確認されている。この研究は、ISHIIT., Y. Yoshikawa, S. Izumi, and H. Kawaguchi, "Subcentimeter Precision Ranging System for Moving Targets with a:Doppler-Effect-Compensated Ultrasonic Direct Sequence Spread Spectrum," IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement (TIM), vol. 70, no. 9505008. pp. 1-8, Jan. ・ 2021, DOI: 10. l 109/TIM.2020.304 7932として出版された。

第4章では、1つの超音波トランスデューサと複数のマイクが空間内に三角形を形成する三角形制約を適用し、離散的な位置に誤観測として現れる「外れ値」を抑制する3次元測位精度向上技術が提案されている。DSSSにて符号分割多元接続(CDMA)を行う3次元超音波測位手法による高精度屋内測位システムに適用できる技術として、DSSSの送受信信号の相互相関関数からピーク抽出する際に、1つの超音波トランスデューサ(送信点)と、超音波波長のオーダーで隣接して配置した3マイクのうちの任意の2つが空間内に三角形の頂点を構成するという制約条件を考慮したピーク抽出により、偽ピーク判定を行う原理が述べられている。床上2m強の1辺lmの正方形の頂点に配置した4つの超音波トランスデューサからそれぞれ異なる256ビットDSSS符号を送信し、床面近傍にロボットアームで固定した7mmの正方間隔で小型MEMSマイクを実装したマイクアレイ基板で受信する測位実験を実施した。測位結果に外れ値を発生させる要因としては、波長単位での誤差(入リープ)とマルチパス干渉の2つがあるが、従来の改善手法である、4送信信号中の相互相関ピークが最も低いものを除去して残り3つの送信信号を用いる方式(UDD)では真値から離れた離散的位置に外れ値が観測される条件にて、今回提案手法(UDD+Triangle)では、入リープ、マルチパス干渉のいずれに起因する場合でも、外れ値の発生のない、真値近傍に密集した測位結果が得られることが確認されている。また別の実験としてロボットアームを水平および鉛直方向に10mmピッチで移動した空間内の異なる33点での測位精度評価を行い、いずれの測定でも外れ値がなく標準偏差1.21mm以下で測位結果が得られている。さらにより現実的な厳しい環境を模して3枚のアクリル板で構成したコーナー内部の異なる18か所にマイクアレイ基板を配置して検l知確率評価を行い、測位結果が得られなかった2か所を除いた全測定結果に対する累積誤差分布の90%レベルが応差4mmであることが確認されている。この研究はISHIIT,Y.Yasuda, S. Sato, S.IzumiandH. Kawaguchi, Mlhmeter-Precision Ultrasonic DSSS Positioning Technique with Geometric Triangle Constraint," IEEE sensors Journal (JSEN), vol. 22, no. 16, pp. 16202-16211, Aug. 2022, DOI: 10.1109/JSEN.2022.3188007として出版予定である。

第5章では、本研究における測位技術を実用化する上での技術戦略と事業戦略が述べられている。技術戦略では、超音波DSSSを選択した理由として「超音波」は消費電力面、「DSSS」は測定精度面で原理的に有利であることを示され、実用化の際の差別化要素を意識した開発目標を定められている。また今後から事業開始後にかけてこの先5年間の技術ロードマップが示されている。事業戦略では最初に事業コンセプトが述べられた後、提供製品、事業化事例の説明に続き、環境分析としてPEST分析、ファイブフォース分析、バリューチェーン分析、VRIO分析の結果が示され、実用化検討が加えられている。

第6章では、本学位論文の結論について述べられている。

本研究は超音波屋内高精度測位技術について、ドップラシフトにより困難となる移動体検知と、3次元測位結果における外れ値の、2つの課題を研究したものであり今後の実用化とイノベーションの創出について重要な知見を得たものとして価値ある集積である。提出された論文は科学技術イノベーション研究科学位論文評価基準を満たしており,学位申請者の石井徹は,博士(科学技術イノベーション)の学位を得る資格があると認める。

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