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大学・研究所にある論文を検索できる 「子宮体癌におけるヒストンメチル化酵素の新規機能解析および新規分子治療薬の探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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子宮体癌におけるヒストンメチル化酵素の新規機能解析および新規分子治療薬の探索

大木, 慎也 東京大学 DOI:10.15083/0002002451

2021.10.15

概要

婦人科悪性腫瘍の中で、子宮体癌の罹患率は近年世界中で上昇しており、肥満と未経産の女性の割合が増加していることが原因と考えられている。早期子宮体癌の予後は良好であるが、進行・再発癌においては、既存の化学療法や放射線療法では治療抵抗性を示すことが多く、新たな治療戦略が必要とされている。真核生物の染色体は、DNAとヒストンが結合しクロマチン構造をなすことで成り立っている。主に4つのヒストンタンパク質(H2A, H2B, H3, H4)が8両体を形成し、DNAと結合することで、ヌクレオソームと呼ばれる規則正しく折りたたまれた構造となっている。また、ヒストンタンパク質は、アセチル化、メチル化、ユビチキン化、スモリレーション化、リン酸化といった様々な化学修飾(タンパク質翻訳後修飾)を受けることが知られており、これらの修飾反応が遺伝子発現や複製などの細胞内プロセスの制御をしている。こうしたタンパク質翻訳後修飾の中で、メチル化は近年エピジェネティックの分野を中心にその重要性が注目されている。2004年にHamamotoらは世界に先駆けてヒストンメチル化酵素SMYD3がヒストンメチル化異常を介してヒト癌化に寄与していることを報告した。この研究を端緒に、乳癌、白血病、膀胱癌、食道癌等の様々な癌において、様々なヒストンメチル化酵素が過剰発現していることが報告され、ヒストンメチル化の亢進、およびその均衡の破綻が癌化と関連しているのではないかと考えられてきている。これまでは、タンパク質リン酸化阻害薬が癌の分子治療薬において中心的に開発されてきたが、近年ヒストンメチル化酵素EZH2を標的とした新規分子治療薬の臨床試験が白血病を中心として国内外で進行中であり、ヒストンメチル化も分子治療薬のよい標的になる可能性がある。このようにヒストンメチル化を標的にした癌治療は最近のトピックスであるにも関わらず、婦人科癌の分野では殆ど報告が少ない。そこで我々のグループでは、婦人科癌において発現が亢進しているヒストンメチル化酵素を同定し、機能解析を行うことにより子宮体癌における新たな分子治療薬の開発を目指すことを目的とした。候補遺伝子はこれまでに報告のある遺伝子、未報告であるが研究中の遺伝子、計10種類のヒストンメチル化酵素とした。子宮体癌細胞株11株、コントロールとして子宮内膜不死化細胞株1株を用い、定量的リアルタイムPCR法で10種類の遺伝子発現量を解析した。その結果、7遺伝子の発現が亢進していることが明らかとなった。続いて子宮体癌臨床検体52例、正常子宮内膜4例を用いて上記7遺伝子を対象に定量的リアルタイムPCR法で発現量を比較したところ5遺伝子が正常内膜と比較して発現が亢進してることが明らかとなった。さらにこれら5遺伝子のうち、現在選択的阻害剤が利用可能なEZH2を最終的に新規分子治療薬の候補遺伝子とした。EZH2は、EED, SUZ12, RbAp46, RbAp48とPCR2複合体を形成し、ヒストンH3K27をメチル化することで遺伝子発現を抑制し、非ヒストンタンパク質をメチル化することで様々な遺伝子活性に寄与してることが明らかとなっている。そこでまず、子宮体癌におけるEZH2の発現と予後をTCGAのRNA sequencing data(N=540)を用い、カプランマイヤー法を用いて解析を行ったところ、EHZ2高発現群では明らかに全生存期間と無病悪再発期間が短縮していることが明らかとなった。また、子宮体癌104例のTissue Micro Arrayを用いたEZH2の免疫染色検体を用いた予後解析でも無病悪生存期間はEZH2高発現群で明らかに短縮していた。続いて, 子宮体癌細胞株(HEC1B, HEC50B, HEC180, HEC151A)を用いてsiRNA法によるEZH2のノックダウンを行ったところ、約40%の細胞増殖抑制効果が認められ、アポトーシスを介した細胞死が誘導されていた。さらに、EZH2の選択的阻害剤であるGSK126は子宮体癌細胞株に対し2.3µM-4.0µMのIC50を示し、siRNAを用いたノックダウン後と同様、アポトーシスを介した細胞死が誘導されることも明らかとなった。また、GSK126は子宮体癌のキードラックであるアドリアマイシン、シスプラチンと併用することで上乗せ効果があることも明らかとなった。以上の実験結果より、子宮体癌においてEZH2の高発現は増殖促進に深く関与し、同阻害が新規分子治療薬のとなる可能性が示された。

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