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書き出し

腎移植後患者におけるサルコペニアとα-アクチン-3遺伝子多型との関連

藤本, 卓也 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Association of alpha-actinin-3 polymorphism
with sarcopenia in kidney transplant recipients

藤本, 卓也
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8695号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485879
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Association of alpha-actinin-3 polymorphism with sarcopenia in
kidney transplant recipients

腎移植後患者におけるサルコペニアとα-アクチン-3 遺伝子多型との関連

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
腎泌尿器科学

(指導教員:黒田 良祐教授)
藤本

卓也

【背景】
サルコペニアは筋力、筋量、身体機能にて定義される疾患で、死亡率の増加や医療費の増加
と関連している。末期腎不全患者(ESKD)は代謝亢進、酸化ストレス、インスリン抵抗性、
尿毒症による食欲不振、運動不足、炎症、栄養不良など様々な要因でサルコペニアになるリ
スクが高く、心血管イベントの増加と関連していると言われている。腎移植は、ESKD 患者
にとって最も効果的な治療法の一つであり、理論的にはサルコペニアの危険因子を排除す
ることにより筋肉量や筋力を回復させると考えられる。しかし、ESKD におけるサルコペニ
アの有病率は 32.7~73.5%、腎移植後のサルコペニアの有病率は 20~72.1%と報告されて
おり、サルコペニアの原因が取り除かれた腎移植後でも ESKD 患者にはサルコペニアのリ
スクが高く、前述の原因以外の要因も存在すると考えられます。近年、サルコペニアの原因
として様々な要因が報告されており遺伝子多型(SNPs)の関与も報告されている。しかし、
腎移植後患者のサルコペニアに対する SNPs の影響を評価した研究はほとんどない。本研
究では、腎移植後のサルコペニアへの影響を明らかにするために腎移植前後で筋肉量を評
価し、腎移植後の SNPs と筋萎縮の関係を検討した。
【対象と方法】
2017 年 1 月から 2018 年 12 月において神戸大学医学部附属病院で腎移植を受けた患者 65
名を対象とした。
サルコペニアの指標である骨格筋量を Psoas Muscle Index(PMI)を用いて測定した。PMI
は、CT 画像を用いて L4/5 腰椎レベルの左右の大腰筋の断面積の合計を被験者の身長で補
正し算出した(cm2/m2)
。全患者が腎移植前と腎移植 1 年後に CT スキャンを受け、PMI の
変化率を次のように算出した:デルタ PMI=(腎移植 1 年後の PMI-腎移植前の PMI)/ 腎
移植前の PMI×100。腎移植後1年で PMI が増加した患者、PMI が減少した患者の 2 群に
層別化し患者特性や SNPsの頻度分布を比較検討した。SNPS は既存の報告からサルコペ
ニアに関連する 5 つの遺伝子多型(SOAT2 rs2272303, FZR1 rs740681, ACTN3 rs1815739,
MTHFR rs1801131, KLF5 rs1028883)同定し、臨床検査における残血を使用し SNPs を同
定した。
【結果】
腎移植前の PMI は 7.4(4.6-13.2)cm2/m2、腎移植後 1 年の PMI は 7.0(3.6-13.6)cm2/m2
で、腎移植後1年で PMI は有意に低下していた(p<0.05)
。腎移植後 1 年で 43 人(66.2%)
の PMI が減少し、22 人(33.8%)の PMI が上昇した。PMI 減少群と PMI 増加群では、患
者特性(年齢、性別、BMI、透析期間、CNI の種類、mTOR 阻害剤の使用の有無、術後1
年での血性 Cr 値、血液適合/不適合腎移植、生体/死体腎移植、先行的腎移植の有無
)に有意な差は認められなかった。デルタ PMI は -6.43(-26.32~23.88)% であった。
PMI 増加群と PMI 減少群における各 SNPs の分布割合に関して、ACTN3 遺伝子の

rs1815739 SNP は以下の結果であった。TT、TC、CC 遺伝子型の分布は PMI 減少群でそ
れぞれ 44.2%、44.2%、11.6%、PMI 増加群で 27.3%、36.4%、36.4%で、TC、TT 遺伝子
型は CC 遺伝子型に比べて PMI 低下のリスクが高い結果であった(OR, 4.23; 95% CI, 0.050.97; p = 0.025 )
。さらに、ACTN3 の rs1815739 SNP の T 対立遺伝子の頻度は PMI 減少
群 66.3%、PMI 増加群で 45.5%で、PMI 減少群で有意に高かった(OR, 2.34; 95% CI, 0.180.95; p = 0.025)

CC、CT、TT 遺伝子型のデルタ PMI はそれぞれ 4.25(-13.64~14.58)
、-8.29(-12.69~
2.69)
、-7.19(-23.79~19.38)で(p = 0.027)
、TT 遺伝子型のデルタ PMI は CC 遺伝子型
よりも有意に低かった(p = 0.023)

【考察】
腎移植後患者のサルコペニアと SNPs との関連を評価した研究はほとんどない。そこで腎
移植後の SNPs と筋萎縮の関係を検討した。本研究では、サルコペニアの程度を評価するた
めの代替マーカーである PMI が腎移植後に低下していることを確認した。さらに、腎移植
を受けた日本人患者において、ACTN3 の rs1815739 SNP の T/T および T/C 遺伝子型を
持つ患者は、C/C 遺伝子型を持つ患者よりも PMI が低下するリスクが高い可能性があるこ
とを明らかにした。
既知の研究で、腎移植はサルコペニアの原因である代謝性アシドーシスや慢性炎症を改善
することで筋肉量や身体機能を改善することが示されている。それにもかかわらず、いくつ
かの研究では腎移植後に筋肉量が減少することや腎移植後にサルコペニアが増加すること
が報告されており、その原因としては術後の活動量の低下、運動不足、ステロイドやカルシ
ニューリン阻害剤、mTOR 阻害剤などの免疫抑制剤の使用に伴う代謝異常が挙げられてい
る。本研究は、腎移植後に PMI が低下することを示し、PMI 増加群と PMI 減少群の間で
患者背景に差を認めず、腎移植後のサルコペニアに寄与する遺伝的要因を含む他の要因の
存在を示唆するものであった。
ACTN3 は筋節を区切る Z 膜の主要な構成成分で、筋収縮や骨格筋の構造維持に関与して
いる。ACTN3 遺伝子のナンセンス塩基置換 rs1815739 多型は第 16 エクソンの C>T の塩
基置換により 577 番目のアミノ酸をアルギニンから終止コドンへと変化させる。したがっ
て、この多型を有する者は ACTN3 を発現しておらず ACTN2 が代償的に発現している。
ACTN3 rs1815739 多型は筋力やパワーパフォーマンスに影響することが報告されている。
また、サルコペニアとの関連も報告されており、例えば韓国の高齢者において T 対立遺伝
子保有者は C 対立遺伝子保有者よりもサルコペニアのリスクが高いことが報告されている。
本研究は、ACTN3 rs1815739 多型が腎移植後のさらなる筋萎縮に対する感受性を高める可
能性を示す結果となった。
腎移植後のサルコペニアは死亡率や移植腎機能の発現遅延、低下、急性拒絶反応に影響する
と言われている。したがって、術前よりサルコペニアの危険因子を評価し早期に予防介入す

ることが重要である。今回の結果は、術前の遺伝子スクリーニング検査が腎移植後の ESKD
患者のサルコペニアを予測し、術後の食事療法やリハビリテーションなどの治療介入に有
益である可能性を示唆している。

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)
言合江文亡苓昏三酋Eクつ糸吉長艮ク>要巨旨す

甲 第 3297号





受付番号

藤 本 卓也

腎移植後患者におけるサルコペニアと a ・ アクチン •3 遺伝子多型と

の関連
論文題目

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審査委員

副 査

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元叶

長忠ー

1

柏乃巧
況ょ属\乙

(要旨は 1, 0 0 0字∼ 2, 0 0 0字程度)

【背景】末期腎不全患者 (ESKD) は代謝充進、酸化ストレス、インスリン抵抗性、尿毒
症による食欲不振、運動不足、炎症、栄養不良など様々な要因でサルコペニアになるリス
クが高く、心血管イベントの増加と関連していると言われている。腎移植は、 ESKD患者
にとって最も効果的な治療法の一つであり、理論的にはサルコペニアの危険因子を排除す
ることにより筋肉量や筋力を回復させると考えられる。しかし、 ESKDにおけるサルコペ
ニアの有病率は 32.7 73.5%、腎移植後のサルコペニアの有病率は 20 72.1%と報告され
ており、サルコペニアの原因が取り除かれた腎移植後でも ESKD患者にはサルコペニアの
リスクが高く、前述の原因以外の要因も存在すると考えられる。近年、サルコペニアの原
因として様々な要因が報告されており遺伝子多型 (SNPs) の関与も報告されている。し
かし、腎移植後患者のサルコペニアに対する SNPsの影響を評価した研究はほとんどない。
本研究では、腎移植後のサルコペニアヘの影響を明らかにするために腎移植前後で筋肉量
を評価し、腎移植後の SNPsと筋萎縮の関係を検討した
【方法】 2017年 1月から 2
018年 1
2月において神戸大学医学部附属病院で腎移植を受け
5名を対象とした。
た患者 6
サルコペニアの指標である骨格筋量を P
s
o
a
sMuscleI
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x(PM
I)を用いて測定した。 PMI

、 CT画像を用いて L
4
/
5腰椎レベルの左右の大腰筋の断面積の合計を被験者の身長で補
正し算出した (
cm2/m2)。全患者が腎移植前と腎移植 1年後に CTスキャンを受け、 PMI
の変化率を次のように算出した:デルタ PMI= (腎移植 1年後の PMI腎移植前の PM
I
)
/腎移植前の PMIX100
。腎移植後 1年で PMIが増加した患者、 PMIが減少した患者の 2
群に層別化し患者特性や SNPsの頻度分布を比較検討した。 SNPSは既存の報告からサル
コペニアに関連する 5つの遺伝子多型 (SOAT2r
s
2
2
7
2
3
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3
, FZRlr
s
7
4
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6
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,ACTN3
r
s1
8
1
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9
,MTHFRr
s1
8
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1
3
1
,KLF5r
s
1
0
2
8
8
8
3
) 同定し、臨床検査における残血を使用
し SNPsを同定した。
【結果】腎移植前の PMIは 7.
4(
4
.
6

1
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.
2
)cm2/m2、腎移植後 1年の PMIは 7
.
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3
.
6

1
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.
6
)
0
.
0
5
)。腎移植後 1年で 43
cm2/m2で、腎移植後 1年で PMIは有意に低下していた(p<
人 (
6
6
.
2
%
) の PMIが減少し、 22人 (
3
3
.
8
%
) の PMIが上昇した。
ACTN3遺伝子の rs1815739SNPは以下の結果であった。 TT、TC、CC遺伝子型の分希
は PMI減少群でそれぞれ 4
4.2%、44.2%、1
1
.
6
%、PMI増加群で 27.3%、36.
4
%
、 3
6.4%

、 TC、TT遺伝子型は CC遺伝子型に比べて PMI低下のリスクが高い結果であった (
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,
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.
2
3
;95%C
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,0
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5

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;p 0.025)。さらに、 ACTN3の rs1815739SNPの T対立遺伝
子の頻度は PMI減少群 66.3%、
PMI増加群で 4
5
.
5%で、 PMI減少群で有意に高かった (
O
R
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0
.
0
2
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)。
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3
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;p=
c
c、CT、TT遺伝子型のデルタ PMIはそれぞれ 4.25 (・13.6414.58)、-8.29 (・12.69
2.69)、7
.
1
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.
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8
) で(p=
0
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)、TT遺伝子型のデルタ PMIは CC遺伝
子型よりも有意に低かった(p=0
.
0
2
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)。
9


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1

【考察】本研究では、サルコペニアの程度を評価するための代替マーカーである PMIが腎
移植後に低下していることを確認した。さらに、腎移植を受けた日本人患者において、
ACTN3の r
s
1
8
1
5
7
3
9SNPの TITおよび TIC遺伝子型を持つ患者は、 CIC遺伝子型を持
つ患者よりも PMIが低下するリスクが高い可能性があることを明らかにした。腎移植後の
サルコペニアは死亡率や移植腎機能の発現遅延、低下、急性拒絶反応に影響すると言われ
ている。したがって、術前よりサルコペニアの危険因子を評価し早期に予防介入すること
が重要である。今回の結果は、術前の遺伝子スクリーニング検査が腎移植後の ESKD患者
のサルコペニアを予測し、術後の食事療法やリハビリテーションなどの治療介入に有益で
ある可能性を示唆しており、重要な知見を得たものとして価値ある集積と認められる。よ
って本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。



.

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