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書き出し

Ex-vivo における骨髄由来間葉系幹細胞を用いた歯周組織構築

鈴川 雅彦 広島大学

2020.02.27

概要

学位論文の内容要約

Ex-vivo における骨髄由来間葉系幹細胞を用いた歯周組織構築

鈴川

雅彦

広島大学大学院医歯薬保健学研究科
博士課程

医歯薬学専攻

2019 年度
主指導教官:栗原
(医系科学研究科

英見

教授

歯周病態学)

【目的】
歯周炎は歯周病原細菌の感染とそれに伴う生体の免疫応答によって歯周組織
が破壊される炎症性の疾患である。歯周組織は、歯肉、セメント質、歯周靭帯お
よび歯槽骨によって構成され、ひとつの組織として機能している。一般的に組織
再生は、組織工学的には細胞、足場及びシグナル分子が重要とされ、それらを取
り巻く環境と作用時間などが再生に導くための条件とされる。一方で、細胞の機
能制御は、液性因子、細胞外基質、あるいは場の硬さなどの細胞を取り巻く微小
環境が重要因子である。歯周組織再生において最も重要なことは、セメント質再
生とセメント質および歯槽骨に埋入したコラーゲン繊維を伴う歯周靭帯の再生
である。根分岐部病変に骨髄由来間葉系幹細胞を移植した研究や、脳由来神経栄
養因子による歯周組織再生研究において、良好な歯周組織の再生を認めている。
また両者に共通する特徴的な所見として、根表面においてオステオポンチン
(OPN)が強く発現した。すなわち OPN はセメント質形成において重要なシグ
ナルであると考えられ、歯周組織再生の鍵を握る分子と考えられる。本研究で
は、大規模歯周組織欠損部の再生と歯周病が原因で抜歯した歯の再植への応用
を目指し、自己増殖能と多分化能を有する骨髄由来のヒト間葉系幹細胞(hMSC)
を用い、ex vivo においてセメント質と歯周靭帯の再生を目的として以下の研究
を行った。
【材料および方法】
1. 象牙質表面に播種した hMSC の分化に関する病理組織学的検討
ヒトの抜去歯を用いて象牙質片を作成し、24%EDTA を用いて象牙質表面の脱
灰を行なった。タイプⅠコラーゲンゲルに hMSC を懸濁し、hMSC―コラーゲン
複合体を作製し、象牙質片を完全に覆うように培地に静置した。通常培地(GM)
下で4週間培養し、通法に従い固定、脱灰およびパラフィン包埋を行なった。組
織切片作製後に HE 染色、また免疫染色として OPN、PCNA および integrinαV
β3について行なった。
2. 象牙質表面で培養した hMSC の増殖に関する検討
象牙質片上に hMSC を播種し、2 週間後にギムザ染色を行い、実体顕微鏡で観
察した。2 および 4 週間後には位相差顕微鏡を用いて、hMSC の増殖に関する観
察を行った。

1

3. hMSC の培養を行なった象牙質片上での hMSC―コラーゲン複合体の 3 次元
培養における病理組織学的検討

一次培養として象牙質片上で hMSC を播種し、GM 下において2週間培養し
た後に、継続して二次培養として、hMSC―コラーゲン複合体を、hMSC を付着
させた象牙質を覆うように培地に静置し、GM 下で2週間培養した。その後、組
織切片を作製し HE 染色およびアザン染色を行った。
4. 一次培養時の骨分化誘導および二次培養時のコラーゲンゲル中の hMSC の
有無に関する病理組織学的検討

一次培養として象牙質片上で hMSC を播種し、GM 下において 9 日間培養し
た後に、骨分化誘導培地(OIM)下において 5 日間培養した。継続して二次培養
として、hMSC―コラーゲン複合体を、hMSC を付着させた象牙質を覆うように
培地に静置し、GM 下で 3 日および 1 週間培養した。その後、組織切片を作製し
HE 染色、OPN の免疫染色およびアザン染色を行った。
【結果および考察】
象牙質片とコラーゲンゲル及び hMSC を用い、ex-vivo において OPN 発現お
よびセメント質形成に焦点をあてて、歯周組織を構築する研究を行い、以下の結
果を得た。
1. hMSC は象牙質表面に偽足を伸ばし伸展し、細胞増殖した。
2. hMSC を含んだコラーゲンゲルは象牙質と組織化した。
3. 象牙質表面と hMSC を含んだコラーゲンゲルが組織化する際、OPN が発現
した。
4. hMSC を象牙質上で 2 週間の一次培養を行い、象牙質表面に hMSC を伸展、
接着させ、続けて hMSC を含んだコラーゲンゲル中で hMSC 培養後の象牙質
片を二次培養すると、象牙質表面と細胞外基質が組織化した。
5. 一次培養期間中、hMSC に骨分化誘導をかけた後に、hMSC を含んだコラー
ゲンゲル中で hMSC 培養後の象牙質片の二次培養を1週間行うと、象牙質表
面上の細胞の付着、象牙質表面と連続した細胞外基質産生との組織化が促進
されるとともに、OPN が象牙質表面や細胞外基質内に発現した。
6. 二次培養時のコラーゲンゲル中の hMSC の有無は、1 週間の培養期間におい
ては、象牙質と細胞外基質の組織化に影響を及ぼさなかった。

2

以上の結果から、ex-vivo において象牙質が hMSC の象牙質面への接着を介し
て歯周組織が構築されるメカニズムは以下の様に推察される。EDTA 処理により
象牙質表面は再生阻害因子であるスメア層が除去され、脱灰を受けることによ
りコラーゲン繊維が露出し、より細胞の遊走促進および増殖しやすい環境が整
っている。象牙質表面に接着している hMSC は、周囲を象牙質及び細胞外基質
という硬い基質に囲まれ、メカノトランスダクションによる細胞の分化が制御
され、より骨分化しやすい環境が整うことで多くの細胞外基質を産生し、伸展、
増殖していると考えられる。また hMSC は象牙質表面で多くの液性因子を放出
することにより、細胞の遊走、増殖や基質の産生は亢進する。一方で hMSC が
自ら分泌する OPN を象牙質表面に堆積させると共に、インテグリンなどの接着
因子を介して、細胞外基質や象牙質表面への接着性が増加すると推察できる。
OPN の分泌は hMSC をセメント芽細胞へ分化させる重要な液性因子であり、象
牙質表面に hMSC を効率的に接着させ、OPN を発現させることで、hMSC が象
牙質表面上でセメント質形成を介して歯周靭帯が象牙質表面に封入された歯周
組織構築への礎となると考えられた。
【結論】
象牙質表面上で 3 次元培養を行った hMSC-コラーゲン複合体は象牙質と密着
し、象牙質界面に OPN を産生し、セメント質形成細胞へと分化し、象牙質表面
構造の再生の起点となる可能性が示唆された。

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