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大学・研究所にある論文を検索できる 「Association Study of ARMC9 Gene Variants with Vogt-Koyanagi-Harada Disease in Japanese Patients」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Association Study of ARMC9 Gene Variants with Vogt-Koyanagi-Harada Disease in Japanese Patients

大野 智子 横浜市立大学

2020.12.31

概要

1.序論
Vogt-Koyanagi-Harada(フォークト・小柳・原田)病(VKH)は全身性炎症疾患であり,メラノサイトを有する眼,髄膜,内耳,皮膚などの臓器に炎症を生じる.前駆症状として頭痛,難聴などを伴うウイルス感染様症状が出現し,その後急性期に,ぶどう膜炎による両眼性霧視を生じる.回復期には,白斑,白髪などの皮膚症状がみられる.眼所見として,両眼性びまん性ぶどう膜炎,視神経乳頭腫脹,多発性胞状網膜剥離が観察され,治療は基本的にステロイド全身加療を行うが,一定の割合で深刻な視力障害を残す(Damico et al., 2005).

VKHはメラノサイトを標的とするヘルパーT細胞によって引き起こされる自己免疫疾患であると考えられており,VKHの病態には1型ヘルパーT細胞,17型ヘルパーT細胞および制御性T細胞が関与している可能性が示唆される(Liang et al., 2019)が,その発症のメカニズムは未だ明らかではない.VKHはヒト白血球抗原(human leukocyte antigen: HLA)の特定のタイプであるHLA-DR4と強い相関を示すことが知られている(Zhang et al., 1992)が,すべてのVKH患者がHLA-DR4を保有することはなく,また人種によりその相関性の強さは異なる.

KU-MEL-1はメラノサイトで優先的に発現される細胞質タンパク質であり,以前にKUMEL-1に対するIgG抗体がVKH患者の血清中で単離されたという報告がある(Otani et al., 2006).Armadillo repeat containing 9(ARMC9)はKU-MEL-1をコードする遺伝子であり,ARMC9遺伝子がVKHの病態に関与している可能性が考えられる.したがって本研究では,日本人集団を対象にVKHのARMC9遺伝子多型解析を実行した.

2.実験材料と方法
日本人VKH患者380例と日本人健常者744例を対象とした.VKHの診断はReadらが定めた診断基準「Revised diagnostic criteria for Vogt-Koyanagi-Harada disease」を用いて行われた.ARMC9遺伝子領域を網羅する7個のSNPs(single nucleotide polymorphisms:一塩基多型)(rs17586603,rs13415839,rs13418346,rs6710104,rs1868929,rs7570052,rs3752780)を対象に,TaqManアッセイ法を用いてジェノタイピング(genotyping;遺伝子型判定)を実行した.取得した7個のgeno typed SNPsの遺伝子型情報をもとに,各SNPのアリル頻度および遺伝子型頻度を集計し,患者・健常者間で比較した(関連解析).ARMC9遺伝子領域内の未判定のSNPsとVKHの相関性も網羅的に評価するため,ARMC9遺伝子領域内のimputation解析を行った.imputation解析により取得した195個のimputed SNPsに関しても同様に,患者・健常者間の関連解析を実行した.さらに,ARMC9遺伝子領域内のSNPsとARMC9遺伝子の発現の関連を調査するため,ARMC9遺伝子のeQTL(expression Quantitative Trait Locus)解析をGTEx Portalオンラインデータベースを用いて実行した.

3.結果
計202個のSNPs(7個のgeno typed SNPsと195個のimputed SNPs)を対象に関連解析を行った結果,rs28690417においてP<0.05の有意性が認められ,rs28690417のAアリルの頻度が健常者(8.3%)と比較してVKH患者(11.7%)で上昇を示した(オッズ比(OR)=1.46,P=0.0097).また,rs28690417のAアリルはdominantモデルの遺伝形式を取るときに,P<0.05の有意性を示した(A/A+A/Gvs.G/G:P=0.011,OR=1.51).しかしながら,これらP値を補正するとその有意性は消失した(Pc>0.05).rs28690417とARMC9遺伝子を対象としたeQTL解析を行った結果,rs28690417のAアリルにおいて,ARMC9遺伝子発現量の増加との有意な関連が認められた.

4.考察
本研究では,日本人集団においてARMC9遺伝子領域内のSNPsとVKHの間に有意な相関は認められず,ARMC9遺伝子多型がVKHの発症に関与する可能性は低いことが示唆された.今後,ARMC9遺伝子領域内のSNPsとVKHの関連をより明確にするため,患者・健常者のサンプルサイズを増やすとともに,低頻度の遺伝子多型およびレアな変異を含むより高密度な遺伝子多型・変異セットを用いてARMC9遺伝子の解析を行う必要がある.

参考文献

Damico FM, Kiss S, Young LH. (2005b), Vogt-Koyanagi-Harada disease, Semin Ophthalmol, 20, 183-190.

Liang L, Peng XY, Wang H. (2019), Th lymphocyte subsets in patients with Vogt-KoyanagiHarada disease, Int J Ophthalmol, 12, 207-211.

Otani S, Sakurai T, Yamamoto K, Fujita T, Matsuzaki Y, Goto Y, Ando Y, Suzuki S, Usui M, Takeuchi M, Kawakami Y. (2006), Frequent immune response to a melanocyte specific protein KU-MEL-1 in patients with Vogt-Koyanagi-Harada disease, Br J Ophthalmol, 90, 773-777.

Zhang XY, Wang XM, Hu TS. (1992), Profiling human leukocyte antigens in Vogt-KoyanagiHarada syndrome, Am J Ophthalmol, 113, 567-572.

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