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書き出し

MicroRNA-93はWASF3を標的とし、乳癌の転移抑制因子として機能する

渋谷, 尚樹 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

MicroRNA-93 targets WASF3 and functions as a
metastasis suppressor in breast cancer

渋谷, 尚樹
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8503号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482251
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

MicroRNA-93 targets WASF3 and functions as a metastasis
suppressor in breast cancer
MicroRNA-93 は WASF3 を 標 的 と し 、 乳 癌 の 転 移 抑 制 因 子 と し て
機能する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
食道胃腸外科学
(指導教員:掛地 吉弘 教授)
渋谷 尚樹

はじめに
進行乳がんは治癒が難しく、特に転移の克服は重要な課題である。がん幹細胞は腫瘍組織中
に含まれる特に腫瘍原性の高い細胞集団であり、がん転移にもその初期段階から重要な働
きをすることが示されてきた。私たちは乳がんにおいて CD44+/CD24low/-の乳がん幹細胞のが
ん幹細胞性の維持にはエピジェティックな制御因子であるマイクロ RNA の働きが重要であ
ることを明らかにしてきた。マイクロ RNA は、標的のメッセンジャーRNA の翻訳を阻害する
働きをもち、上皮間葉転換、エキソソーム分泌やがん幹細胞性の維持などを介して、がん細
胞の転移を含むがん進展の過程を調節している。本研究では、転移に関わるがん幹細胞のエ
ピジェネティック制御機構を明らかにするため、ヒト乳がん異種移植マウスモデルを用い
て原発巣と肝転移巣における CD44 陽性がん細胞のマイクロ RNA 発現を比較した。つぎに、
転移がん幹細胞で発現低下していた miR-93 に着目し、がん幹細胞の転移進展に関わる分子
機構を検討した。

方法
同意の得られた乳がん患者組織(ER (+)/PR (+)/HER2(−))を異種移植して肝臓で微小多発
転移巣を形成する乳がん異種移植マウスモデル (Patient derived-tumor xenograft; PDX)
を樹立した。この PDX の乳がん原発巣と肝転移巣より CD44 陽性がん細胞をセルソーターに
て分離し、定量的 PCR 法にて 754 種のマイクロ RNA の発現量を比較検討した。リポフェク
ションあるいはレンチウイルスを用いてマイクロ RNA の発現を増強あるいは抑制した乳が
ん細胞(MDA-MB-231、MCF7、T-47D)を作製した。トランスウェル法およびコンフルエント
な状態の培養細胞の間に 500µm の一定なギャップを作成しそこへ遊走する細胞を評価する
創傷治癒アッセイ法によりがん細胞の移動能や浸潤能を解析した。また、マトリゲルを用い
た三次元培養により乳がん細胞のがん幹細胞性を解析した。マイクロ RNA の標的遺伝子は
TargetScan データベースを用いて予測し、レポーターアッセイやウエスタンブロッティン
グを用いて検証した。乳がん細胞を免疫不全マウス(NSG)の脾臓に移植し、肝臓への転移
能を解析した。また、マイクロ RNA 発現細胞とコントロール乳がん細胞を等量混合し脾臓に
移植する競合移植法によりマイクロ RNA が肝臓転移能に及ぼす影響を解析した。

結果
乳がん PDX マウスにおける肝転移巣の CD44 陽性がん細胞の miR-93 の低下
ヒト乳がん PDX マウスの肝転移巣より分離した CD44 陽性がん細胞では 3 種類のマイクロ

RNA クラスター(miR-106b-25, miR-17-92, miR-106a-363)に属するマイクロ RNA の発現量が
原発巣の CD44 陽性がん細胞に比べ顕著に低下あるいは発現が検出感度以下であった。本研
究では、原発巣の CD44 陽性がん細胞で発現がみられるが CD44 陽性転移がん細胞では顕著
に発現低下しており、かつ miR-106a / b、miR-20a / b、および miR-17-5p とマイクロ RNA
の標的配列を共有すると考えられる miR-93 に着目して検討を進めた。

miR-93 による浸潤能の抑制
細胞外基質を含むマトリゲルをコートしたトランスウェルを用いて、miR-93 の発現を亢進
または抑制した乳がん細胞株 MDA-MB-231 と T-47D の浸潤能を評価した。miR-93 の発現亢進
により浸潤能はそれぞれ 36%、
65%抑制され、
miR-93 の発現抑制では浸潤能がそれぞれ 64%、
76%増加した。一方、トランスウェルを用いた遊走アッセイや創傷治癒アッセイでは、miR93 の発現の亢進または抑制による MDA-MB-231 細胞の遊走能の変化を認めなかった。

miR-93 によるオルガノイド形成能の抑制
miR-93 によるがん幹細胞性への影響を検証するために、マトリゲルを用いた三次元培養法
によるオルガノイドの形成能の評価を行った。miR-93 の発現を亢進した MDA-MB-231 細胞は
オルガノイドへと成長する能力が低下し、CD44、BMI1、SNAI2 などの幹細胞関連遺伝子およ
び上皮間葉転換関連遺伝子の発現レベルが低下した。一方、miR-93 の発現を抑制した MCF7
細胞では、オルガノイドへと成長する能力が亢進した。

miR-93 の標的遺伝子 WASF3
TargetScan を用いた miR-93 の標的候補遺伝子の検索により、がん幹細胞性の維持やがん細
胞の浸潤に関わる WASF3 が候補として特定された。ルシフェラーゼ発現プラスミドを用い
たレポーターアッセイにより、WASF3 の 3’非翻訳領域内の一か所に miR-93 の標的配列が
含まれることを確認した。さらに、ウエスタンブロッティングを用いて、MDA-MB-231 細胞
で miR-93 は WASF3 の蛋白質の発現を抑制することを確認した。MDA-MB-231 細胞ならびに T47D 細胞の浸潤アッセイにおいて、WASF3 の共発現は miR-93 によって認めた浸潤能の低下
を抑えたことから、miR-93 は WASF3 を標的遺伝子の一つとして乳がん細胞の浸潤能を抑制
すると考えられた。また、前述の乳がん PDX マウスでは、原発巣と比べ miR-93 の発現が低
下している肝転移巣で WASF3 の発現が亢進していた。

マウスにおいて miR-93 は乳がんの肝転移能を抑制する
乳がん細胞株 MDA-MB-231 への miR-93 の強制発現により、免疫不全マウスの肝転移数が有
意に低下した。さらに、miR-93 の強制発現 MDA-MB-231 細胞とコントロールの MDA-MB-231
細胞を1対1の細胞数で混合し脾臓へ注射させた競合移植実験は、肝臓への転移がん細胞
に占める miR-93 の強制発現 MDA-MB-231 細胞の割合が有意に減少した。

まとめ
ヒト乳がん異種移植モデルを用いた解析から、乳がん幹細胞の遠隔転移に関わるマイクロ
RNA として 3 種類のマイクロ RNA クラスター(miR-106b-25, miR-17-92, miR-106a-363)に属
するマイクロ RNA が同定された。特に miR-106b-25 マイクロ RNA クラスターのメンバーで
ある miR-93 は、細胞骨格とがん幹細胞性の制御因子である WASF3 を標的とすることで、乳
がん幹細胞の浸潤能およびがん幹細胞性を抑制する可能性が示唆された。


) i大学 大学院医学(系)研究科 (
博じ課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

論 文 起





3247 号





受 付番号

渋谷尚樹

MicrnRNA-93t
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加亦己
:艮恥、召こ

]叶]こ

(要旨は 1, 000字 ∼ 2
, 000宇程度)

(はじめに)
進行乳がんは治癒が難しく、特に転移の克服(ま屯要な課穎である C がん幹細胞は腫瘍組織中に含まれる
特に腫瘍原性の高い細胞集団であり、がん転移 にもその初期段階から重要 な働きをすることが示されて
卜の乳がん幹細胞のがん幹細胞性の維持にはエピジェティックな
きた。乳がんにおいて CD44+/CD241ow
制御因(であるマイクロ RNAの働きが屯要であることが明らかになって い るC マイクロ RNAは、棟的
::
のメッセンジャー RNAの翻ぷを阻害する働きをもち 、 日支間槌転換、エキソソーム分泌やがん幹細胞ヤ1

の維持などを介して、がん細胞の転移を含むが ん進展の過程を調節している 。本研究では、転移に閲わ
るがん幹細胞のエピジェネティック制御機構を明らかにするため、ヒト乳がん異種移植マウスモデルを

i発巣と肝転移巣における CD44陽性がん細胞のマイクロ RNA発現を比較した。 つぎに 、転移
用いて)!(
1し、がん幹細胞の転移進展に関わる分-(-機構 を検村した。
がん幹細胞で発現低下していた miR-93に府 1

(
)
j法と結呆)

I
. 乳がん PDXマウスにおける肌転移巣の CD44陽性がん細胞の mi
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3の低下
ER(+)/PR(+)/HER2(-)
)を異種移植して 肝 臓で微小多発転移巣を形成
同忍の得られた乳がん患者糾織 (
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;POX)を樹立した。この PDx(/)乳が
する乳がん異種移柏マウスモデル (
ん原発巣と肝転移巣より CD44陽性がん細胞をセルソーターにて分離し 、定屎的 PCR法にて 754種の
マイクロ RNAの発現限を比較検討した -ヒト乳がん PDXマウスの肝転移巣より分隣した CD44陽性が

-106b-25,miR-17-92,miR-106a-363)に屈するマイク
ん細胞 では 3種類のマイクロ RNAクラスター (miR
ロ RNAの発現岱が瓶発巣の CD44陽性がん細胞に比べ顕約こ低下ある いは発現が検出感度以 ドであっ

(発巣の CD44陽性がん細胞 で 発現がみられるが CD44陽性転移がん細胞では顕杵に
た。本研究では、))1

5pとマイクロ RNAの標的配列を
発現低卜.しており、かつ miR-106a/b、 miR-20a/b、および miR-17共有ずると拷えられる miR-93に着 Hして検討を進めた。
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iR-93による没憫能の抑制

細胞外)j
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;質を含むマトリゲルをコートしたトランスウェルを) 1
]いて 、 miR-93 の発現を)』じ進または抑 制
した乳がん細胞株 MDA-MB-231 と T-47Dの設潤能を評価した。miR-93の発現冗進により浸潤能はそれ
ぞれ 36% 、65%抑制 され、 miR-93の発現抑制では没潤能がそれぞれ 64% 、 76%増加した。

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. miR-93によるオルガノイド形成能の抑制
miR93 によるがん幹細胞性への影粋を検証ナるために、マトリゲルを 用いた 一
・次元培促法によるオル
ガノイドの形成能の評価を行っ f
こ miR-9
3の発現を充進した MDA-MB-231細胞はオルガノイドヘと成
長する能力が低下し 、CD44、BMl1、SNAl2などの幹細胞関連辿伝 fおよび上皮間菓転換関連辿伝 fの
発現レベルが低下した c
能力がん進した。

•力.、 miR-93 の発現を抑制した MCF7 細胞では、オルガノイドヘと成長する

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. miR-93(
/)椋的辿伝

(
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-WASF3

TargetScanを川いた miR-93の椋的候補追伝(りの検索により、がん幹細胞性の維持やがん細胞の没潤に

関わる WASF3が候補として特定された。ルシフェラーゼ発現プラスミドを用いたレポーターアッセイ
により、 WASF3の 3
'非翻訳領域内のーか所に miR-93の標的配列が含まれることを確認した。 さらに、
R-93は WASF3の蛋白質の発現を抑制す
ウエスタンブロッティングを用いて、 MDA-MB-231細胞で mi

ることを確認した。MDA-MB-231細胞ならびに T-47D細胞の浸潤アッセイにおいて、 WASF3の共発現
は miR-93によって認めた汝潤能の低卜を抑えたことから 、miR-93は WASF3を標的迫伝げ)クつとし
て乳がん細胞の浸潤能を抑制すると考えられた e また 、前述の乳がん PDXマウスでは、原発巣と比べ
miR-93の発現が低 1、している肝転移巣で WASF3の発現がた進していた。
V. マウスにおいて miR-93は乳がんの肝転移能を抑制する

乳がん細胞株 MDA-MB-231への miR-93の強制発現により、免疫イ<全マウスの肝転移数が布謡に低ドし
た。 さらに、 miR-93の強制発現 MDA-MB-231 細胞とコントロールの MDA-MB-231 細胞を 1対 1の細
J
蔵への転移がん細胞に古める miR-93 の強制発現
胞数で混合し牌臓へ注射させた説合移植実験は、肝 I

MDA-MB-231網胞の割合がイ i
邸に減少した ,

(まとめ)
ヒト乳がん異種移植モデルを)廿いた解析から、乳がん幹細胞の遠隔転移に関わるマイクロ RNA として
3種頼のマイクロ RNAクラスター (miR-106b25
,mi
R17-92,miR-106a363)に)属するマイクロ RNA が

同定された C 特に miR-106b-25マイクロ RNAクラスターのメンバーである miR-93は 、 細 胞1
i
格とが
ん幹細胞性の制御因(である WASF3 を標的とすることで、乳がん幹細胞の浸潤能およびがん幹細胞1•It

を抑制する

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I
r
f
胆性がぷ唆された^

本研究は、乳がんにおける miR-93について、その機能および標的辿伝子を研究したものであるが、従
来ほとんど行われなかった原発巣と肝転移における miR-93の発現鼠の違いに着 F
lし、肝転移における
その機能を詳細に検討し、また新規標的辿伝(•として WASF3 を同定した報告である 。 乳がんの肝転移

について龍炭な知見を得たものとして価値ある集積であると認める 。
よって、本研究者は、博 L
ク(灰学)の学位を得る毀格があると認める c

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