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書き出し

国立大学の現状と農学教育

奥田 潔 帯広畜産大学

2020.02.19

概要

国立大学の現状と農学教育
著者
雑誌名

ページ
発行年
URL

奥田 潔
農業
1660
19-20
2020-01
http://id.nii.ac.jp/1588/00004622/

:~

司直盈》
国立大学の現状と農学教育

奥田
法人化以降国立大学は 6年毎に中期目
標・中期計画を立て,本年度,第 3期中期
目標−中期計画期間の 4年目を終える。国
立大学の運営資金である運営費交付金は,
第 2中期目標期間終了まで大学の規模に応
じて一定の割合で減額されてきた。このま
までは国立大学として質を担保した大学運
営が出来なくなるという危機感が全ての大
学に高まり ,各大学はもちろん国大協など
を通じて運営費支付金の増額が要求されて
きている。第 3期中期目標期聞からは一定
の割合で減額されるものの,前年度の業務
などの実績評価に応じて再配分されること
になった。つまり,各大学が設定する K
P
I

重要目標達成指標〉
の達成度の評価が運営
費支付金の配分額に反映されることになっ
たが,この 3年間だけでも文科省が提示す
る評価基準が毎年蛮わるなど評価制度が不
安定であるため,中期目標期間を見通した
経営戦略に基づく大学運営が難しくなって
いる現状にある。これらはすべて国の厳し
い財政状況を背景とした施策なのだが,最
高学府である国立大学の予算を減らして行
くことが日本の将来にとって正しい選択か
強い疑問を覚える。
文部科学省の推計によると, 2
0
2
0年と比
0
4
0年の 1
8歳人口は 75%まで減少
較した 2
し,大学進学者は 82%になると推測されて
いる。こうした社会状況を背景に令和元年



6月に文科省が示した「国立大学改革方針」
では,各大学,各学部が求められる役割を
果たすための教員集団や学生規模〈学生定
員)のあり方に言及している。文科省は各
大学の第 4期中期目標の策定に向け ,各大
学の将来ビジ、
ョンをもとに各学部の存在意
義,適正規模などについて「徹底対話」す
るとしている。
こうした現状を基に「農学Jに話を移し
6
校中,農学系学部
たい。全国の国立大学8
を有する大学は 3
9ある。国の財政状況が悪
化し 1
8歳人口が、
減少する中で,農学系学部
を有する大学の配置,学生定員は適正であ
るかという議論がなされるのだ。農学系大
0
1
2年
学 (
学部〉は,国立大学においても 2
以降に 3校新設されるなど,農学系の学
部・学科を新設する大学が増えている。こ
の背景として,農林水産物−食品の輸出額
及び食品産業の国内総生産額が飛躍的に伸
びていること,さらに農学系学部が地域の
産学官民連携の要として地方創生の中心的
な位置を占めるなど農学分野に対する社会
的要請が増大していることなどが、
要因とし
て考えられる。また,農学は,農林水産業
の基礎となる教育研究とともに,国土環境
保全に繋がる生態学や多様性生物学さらに
は人間の栄養 −健康の増進に関わる食品科
学の教育研究等幅広い使命があるととも
に,学問体系に理学,工学はもとより,経

-19Journalo
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.1
6
6
0 2
0
2
0
.1

済,経営,管理等の分野を包含しており,

SDGs (
S
u
s
t
a
i
n
a
b
l
e
Development
Goals:世界が、抱える問題を解決し,持続
可能な社会をつくるために世界各国が合意
した目標)が目指す目標のほぼ全てと深い
関係がある。これらを総合して考えると,
農学系分野は今後更に充実する必要がある
と考えるのが妥当である。各農学系学部
(大学〉の「適正な規模」を考えるこの機会

, 1
8歳人口の減少という現実を真筆に受
け止め,学生の賓の低下を招くことのない
よう教育研究の充実方策と併せて真剣に検
討するべきであろう。
帯広畜産大学の現状からさらに論を進め
たい。本学は日本の食料生産の中心である
北海道十勝に位置し,「生産から消費
Farmt
oTabl
e
J まで一貫した教育ができ
る環境にあり,生命・食料・環境をテーマ
に農学,畜産科学,獣医学の教育研究を
推進する我が国唯一の国立農学系単科大学
である 。平成3
0年度の地域別入学者は北海
道外が65%,
女子の割合は6
7
.
6%であった。
農学系学部 (
大学〉の女子入学者の割合が
年々増加し,国立大学においても女子入学
者の割合は 50%近くに達している。獣医師
養成系でも女子学生比率は高く,農学部が
男の世界という時代は完全に過ぎ、去ったと
言える 。女子の志望者が増えてきた理由は
多岐にわたる。昭和時代の農学部と言えば

第 1次産業(食料生産〉」というイメージ
が強かった。一例であるが,約5
0年前,私
が農学系学部に進学すると表明したとき,
友人が「ア力デミック田子作」になるのか
と笑いながら言った。農学部は「農作物の
生産(農業〉技術を学ぶところ」というイ
メージだ、ったのだろう(私はその日寺全く不
快に思わず,ア力デミックという言葉に惹
かれそのまま学究の道に進んだ、

。 農学系
学部が女子学生に人気のある理由として,

近年では,「農学は,加工・流通,安全性の
確保,生命にかかわる基礎科学,地球環境
への対処に欠かせない,地域からグローパ
ルな課題に立ち向かう新しい学問」(日本
0
1
5)として社会に受け止められ
学術会議2
るようになったことが大きい。また,景気
に左右されない食品産業への就職に農学部
卒が有利なことが大きな要因としてあげら
れる。食品産業の国内生産額は 1
9
8
9年7
9兆
0
1
6年には9
9兆円まで拡大し
円だ、ったが, 2
た。約 1
0年前のリーマンショック後の 2
0
0
9
年,園内産業全体の生産額は景気後退で前
年に比べて 11%減少したが,食品産業は横
ぱいで持ちこたえており(農林水産省「農
業−食料関連産業の経済計算」〉,その安定
ぶりは特筆に値する。ちなみに本学入学者
を対象に志望動機についてアンケー卜調査
したところ,「北海道の大自然における農
畜産業(食料生産)への関心」が一位で,
「食品産業への就職に有利 J「野生動物(環
境〉の保全に携わりたい」と続いた。北海
道−十勝という自然と食の宝庫に立地する
本学ならではの志望動機であると言える。
各大学の役割や地域性によって農学系学
部への志望動機は異なっているに違いな
い。大学の使命は人材育成である。国公私
立を問わず農学系学部(大学〉は上で述べ
たような明確な動機で入学してきた学生の
モチベーションを維持し,多様な社会の要
請に応えられる人材を養成するため,実学
を基調とした質の高い教育を展開しなけれ
ばならない。男女を問わず農学を志望して
きた学生諸君には食料生産だけでなく,「現
代社会が抱えている地球規模問題Jと「農
業Jは密接に関連していることを念頭に置
き,「鳥の自のように社会全体を術轍しな
が、
らJ勉学に取り組んでもらいたい。

-20農業

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6
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号 2
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0. ...

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