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大学・研究所にある論文を検索できる 「Microcarcinoid arising in patients with long-standing ulcerative colitis: histological analysis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Microcarcinoid arising in patients with long-standing ulcerative colitis: histological analysis

金田 幸枝 横浜市立大学

2021.03.25

概要

1.序論
炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease: 以下IBD)は,慢性あるいは寛解・再燃性の腸管の炎症性疾患の総称である.代表的なIBDは潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis: 以下UC)とクローン病である.UCの炎症では大腸粘膜を直腸側から連続性かつ,びまん性に,びらんや潰瘍が形成される.UCの慢性炎症性粘膜は,大腸癌の発生母地となると考えられており,UC関連大腸癌はcolitic cancerと呼称される.異形成(dysplasia)や癌を早期発見するためにUC患者には定期的なサーベイランスの内視鏡検査が行われる.UCの治療について,内科的治療が奏功しない重症例やdysplasia,癌を合併した場合しばしば大腸全摘が行われる.病理診断業務において大腸全摘された検体から偶発的に神経内分泌細胞からなる小病変が見つかることが指摘されている.消化管の神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm: 以下NEN)の分類のうち,小病変については微小カルチノイド(microcarcinoid: 以下MC)の名称が使われ(Maruyama et al,1988),UCを背景とした大腸のNENの小病変についてはMCの名称で症例報告がなされてきた(MillerandSumner,1982).UCの大腸全摘標本をレビューしたところ,MCが数例確認された.本研究では,UCを背景とした大腸におけるMCの臨床病理学的特性を明らかにするために以下の解析を行った.

2.実験材料と方法
横浜市民病院外科で2011年1月から2013年9月までの期間に大腸全摘されたUC症例135例を対象とした.MCを肉眼的に見つからず,組織学的に索状または小細胞巣を形成する病変で大きさは問わないと定義した.MCを有する症例をMC群とし,残りを非MC群とした.切除検体はホルマリン固定され,厚さ5mmの組織片に切り出しパラフィン包埋した.術前にdysplasiaまたは癌が認められた症例ではその病変より遠位の粘膜すべてを組織学的に検索した.術前にdysplasiaも癌も認められなかった症例では大腸粘膜を腸管の長軸に10cm間隔で標本作成した.免疫組織学的検討では神経内分泌マーカー等の染色を行った.背景粘膜の陰窩1個ごとの神経内分泌細胞(neuroendocrine cell以下NE cell)数をMC群と非MC群で比較するため,HE染色で陰窩20個におけるNE cell数を計測した.2群間の統計的有意差を調べるために,Fisher検定とMann-Whitney検定を行った.p値は0.05とし統計処理にはSPSSを使った.一方,横浜市立大学医学部附属病院で2019年9月から2020年10月の期間に直腸癌のため切除された100症例において直腸HE染色標本をレビューし,MCの有無を検索した.

3.結果
MCの組織像は,類円形核をもつ小円形や多角形の細胞よりなる索状または充実性構造をつくる細胞集塊であった.粘膜固有層の深部から粘膜筋板,粘膜下層の上部で線維化を伴って増殖していた.脈管侵襲,核分裂像,壊死はなく,病変の境界は不明瞭だったが明らかな悪性所見はなかった.免疫組織学的には神経内分泌マーカーが陽性であった.MCの発生部位はいずれも直腸で,大きさは0.1-5.5mmだった.MC群の大腸粘膜は脆い顆粒状または萎縮性であり,MCの位置は肉眼的に同定できなかった.MCは14症例見つかり,MC群14例,非MC群121であった.多発病変があったのは8例57%で最も多い症例では13病変まであった.平均罹患年数は非MC群で8.1年(0.1-31年),MC群で11.9年(range2-31年)であった(Mann-Whitney U検定p=0.045).colitic cancerを合併していた症例はMC群で7例(50%)であった.陰窩ごとのNE cell数の平均をMC群と非MC群で比較したところ,MC群で0.18±0.23,非MC群で0.18±0.22(Mann-Whitney検定 p=0.769)と差は認めなかった.一方,非UC直腸癌症例96例のうち,MCが見つかったのは2例(2.1%)のみであった.

4.考察
今回の検討では,MCは,非UC患者に比較して,UC患者により高頻度に起こることが示された.文献的にはNENの発生頻度はUC,非UCで差はないと報告されている(Derikx et al,2016).このことを考慮すると,MCにNENの前駆病変とは考え難く,MCが偶発的に内視鏡検査で見つかった場合でも切除せずに経過観察を行うべきであると考えられた.MCを伴うUC患者では,colitic cancerを合併する頻度が有意に高く,特に積極的な内視鏡検査フォローアップが必要と考えられた.また,MCの組織発生について,多数のMCを伴うUC患者においてもの腺管内のNE cellの過形成を認めなかったことから,MCは粘膜深部がUCの慢性炎症により傷害を受ける過程で腺管内のNE cellや幹細胞が腺管外に取り残され,増殖した結果に形成されるものと推察された.

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参考文献

Derikx, L. A. A. P. , Vierdag, W. A. M. , Kievit, W. , Bosch, S. , Hoentjen, F. , Nagtegaal, I. D. (2016), Is the prevalence of colonic neuroendocrine tumors increased in patients with inflammatory bowel disease?, Int. J. Cancer. 139, 535-542.

Maruyama, M. , Fukayama, M. , Koike, M. (1988), A Case of Multiple Carcinoid Tumors of the Rectum With Extraglandular Endocrine Cell Proliferation, Cancer, 61, 131-136.

Miller, R. R. , Sumner, H. W. (1982), Argyrophilic cell hyperplasia and an atypical carcinoid tumor in chronic ulcerative colitis, Cancer, 50, 2920-5.

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