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大学・研究所にある論文を検索できる 「病院総合診療医の診療対象になりうる新しい成人発症自己炎症性疾患 : VEXAS症候群」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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病院総合診療医の診療対象になりうる新しい成人発症自己炎症性疾患 : VEXAS症候群

高橋, 徳幸 佐藤, 寿一 名古屋大学

2021.09

概要

不明熱診療を専門とする病院総合診療医にとって,自己炎症性疾患は記憶に留めておきたい疾患である1)2)。2020 年 10 月にベックらが,新しい成人発症自己炎症性疾患である VEXAS 症候群に罹患した男性 25 例を報告した3)。臨床症状および所見は多彩で,発熱,血球減少,骨髄系および赤芽球系前駆細胞の空胞,骨髄異形成,皮膚の好中球性炎症,肺浸潤影,耳や鼻の軟骨炎,深部静脈血栓症,血管炎が生じていた。ベックらによれば観察された症例のほぼ全て(90%以上)に発熱と骨髄の空胞,大球性貧血が認められた3)。壮年から高齢者に発症(発症年齢の中央値は 64 歳)し,多くが膠原病類縁疾患(再発性多発軟骨炎,Sweet 病,結節性多発動脈炎や巨細胞性動脈炎)および血液疾患(骨髄異形成症候群や多発性骨髄腫)の一方もしくは双方と診断され,半数近くが分類不能の発熱すなわち不明熱と診断されていた。有効な治療法は高用量の副腎皮質ステロイド以外は明らかではない。そして最初に報告された 25 例のうち 10 例(40%)が原疾患(呼吸不全や進行性貧血)および治療に伴う合併症によって死亡していた。

VEXAS 症候群は X 染色体上に位置する UBA1 遺伝子の体細胞変異で生じる3)。UBA1遺伝子は全ての細胞のユビキチン化開始に必要不可欠なユビキチン活性化酵素(E1 酵素)を決める遺伝子であり,UBA1 遺伝子に規定される 41 番目のアミノ酸であるメチオニンの置換(p. Met41)によって病原性を有すると同定された。ユビキチン化異常は自然免疫異常である自己炎症性疾患に位置づけられている4)。VEXAS 症候群の名称は以上のような臨床的かつ分子遺伝学的特徴を表す頭文字(空胞;Vacuoles,E1 酵素;E1 enzyme,X 染色体性;X-linked,自己炎症性;Autoinflammatory,体細胞性;Somatic)に由来する。

本邦からの報告も相次いでいる。再発性多発軟骨炎患者の男性 11 例のうち 8 例が UBA1 遺伝子の変異陽性であったことを示した報告や,多発軟骨炎に合併した再発性器質化肺炎から本症候群と診断した報告がある5)6)。我々も視神経周囲炎に加えてエタネルセプトやカナキヌマブへの過敏症を考慮する肺炎を生じ,全身関節痛から 4 年を経て関節炎が明らかになったという,診断に難渋した一例を報告した7)。本症候群は膠原病類縁疾患や血液疾患という既存の診断名から,膠原病内科や血液内科という各専門科が診療している可能性がある。しかし臨床像は多彩で臓器横断的であり,既存の診断名では全ての臨床像を説明することが困難である。よって不明熱として病院総合診療医が診療対象としている可能性もある。

参考文献

1) Naito T, Mizooka M, Mitsumoto F, et al. Diagnostic workup for fever of unknown origin: a multicenter collaborative retrospective study. BMJ open. 2013; 3:e003971.

2) 國松淳和,前田淳子,渡邊梨里,他.外来における不明熱の原因疾患としての家族性地中海熱の重要性.日臨免疫会誌.2016;39:130-9.

3) Beck DB, Ferrada MA, Sikora KA, et al. Somatic Mutations in UBA1 and Severe Adult-Onset Autoinflammatory Disease. N Engl J Med. 2020; 383:2628-38.

4) Aksentijevich I, Zhou Q. NF-κ B pathway in autoin- flammatory diseases:dysregulation of protein modi- fications by ubiquitin defines a new category of autoinflammatory diseases. Front immunol. 2017;8: 399.

5) Tsuchida N, Kunishita Y, Uchiyama Y, et al. Pathogenic UBA1 variants associated with VEXAS syndrome in Japanese patients with relapsing polychondritis. Ann Rheum Dis. 2021;0:1-5.

6) Sakuma M, Tanimura A, Yasui S, et al. Case of polychondritis-onset refractory organising pneumo- nia with cytopaenia diagnosed as VEXAS syndrome: the disease course of seven years. Rheumatology (Oxford). 2021:keab349.

7) Takahashi N, Takeichi T, Nishida T, et al. Extensive multiple organ involvement in VEXAS syndrome. Arthritis Rheumatol. 2021.

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