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大学・研究所にある論文を検索できる 「Tumor-infiltrating M2 macrophage in pretreatment biopsy sample predicts response to chemotherapy and survival in esophageal cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Tumor-infiltrating M2 macrophage in pretreatment biopsy sample predicts response to chemotherapy and survival in esophageal cancer

山本, 慧 大阪大学

2021.09.24

概要

〔目的(Purpose)〕
局所進行食道癌に対する術前補助化学療法(NAC)は標準治療として近年確立された一方で、NACの非奏効例の予後は極めて不良であり、治療抵抗性機序の解明が予後改善のためには喫緊の課題である。化学療法はがん細胞への直接的細胞傷害性のみならず、周囲がん免疫環境への影響を介して臨床効果に寄与する事が知られている。今回、食道癌NACの治療抵抗性に関わる因子を明らかにする事を目的に、多重蛍光免疫染色法を用いたがん免疫微小環境の解析を施行した。

〔方法(Methods)〕
2010年から2015年の期間に当科においてNACとしてDCF (Docetaxel/Cisplatin/5-FU)療法を2コース投与後に根治切除を施行した食道扁平上皮癌86症例[年齢中央値67(47-79)歳、男性/女性=75/11例、化学療法葵効群/非奏効=47/39例]を対象とした。NAC前に内視鏡にて採取した腫瘍生検組織を用いて、蛍光標識チラミドを用いたシグナル増幅(Tyrandde Signal AmplificationJTSA)法による多重蛍光免疫染色を施行し、主に腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte; TIL)および腫瘍関連マクロ ファージ(tumor associated macrophage; ΤΑΜ)を定量的に評価した。TILにおいてはCD4+T細胞、CD8+T細胞、Foxp3+制御性Τ細胞、PD-1+T細胞を、ΤΑΜにおいては CD86+M1マクロファージ、CD163+あるいはCD206+M2マクロファージ、CD14+単球を分画化し解析対象とした。マクロファージの主な抑制性機能分子であるArginase-1の発現に関しても同様の染色法にて解析した。また、各分画細胞数の算出は癌部における2視野(1視野:670μm×500μm)における陽性細胞数の平均の中央値を高値/低値群の2群に分け、NACの治療効果および予後を含む臨床病理学的因子との関連を検討した。なおNACの効果判定については、食道癌取り扱い規約(第11版)に準じてGradeO/la/lbを非奏効群、Grade2/3を奏効群とした。

〔成績(Results)〕
TILにおいてCD4、CD8およびPD-1は主に細胞膜が、Foxp3は主に核が染色された。一方でΤΑΜにおいてはCD14、 CD86、CD163、CD206は大型の細胞膜が染色され、またArginase-1は主に細胞質が染色された。これらの陽性細胞は全て癌胞巣内部よりも間質部においてより多く存在した。臨床病理学的因子との関連では、CD86+高値群において CN2-3症例が有意に多く(p=0.024)、またCD206+高値群においてはcT3-4症例、cM1症例が多く(p=0.008, p=0.044)かつMLR(neutrophi1to lymphocyte ratio)が有意に高値であった(p=0. 042>。NACの治療効果との相関については、奏効群と非奏効群の2群間でTILの分画であるCD4+T細胞、CD8+T細胞、Foxp3+制御性T細胞、PD-VT細胞の細胞数にいずれも有意差は認めなかった。一方でΤΑΜに関しては、CD14+およびCD86+細胞数には差は認められないものの、 CD163あるいはCD206+細胞数(以下、非奏効vs奏効)は非奏効群で奏効群に比して有意に高かった[CD163+細胞数(中央値);378 vs 209個/視野,p=0. 0057, CD206十細胞数(中央値);252 vs 119 個/視野,p=0.0196)]。また Arginase -1
を共発現したCD163+細胞数は非奏効群で有意に髙く(Arginase-1+CD163+細胞数(中央値);134 vs 41個/視野, P=0. 0108). CD163+細胞に対するArginase~lの割合においても非奏効群で髙い傾向を認めた(% Arginase-1+CD163/CD163(中央値);29, 4 vs18.2%,p=0.17>。NACが非奏効となるリスク因子の多変量解析では、M2マクロフアージ(CD163+あるいはCD206+)高浸澗(≧中央値)が独立予測因子であった(Hazard ratio=3.0 , 95% Confidence Interval=1.2-7. 3,p=0.019)。予後との相関では、M2マクロファージ高浸澗例は低浸澗例と比較して有意に予後不良であり(5年全生存率;57.2 vs 71.0%,p=0.498)、この傾向はとくにcStage3-4症例において顕著であった(47.9 vs 67. 7%, p=0. 0504) 。

〔総括(Conclusion)〕
化学療法前の内視鏡生検組織におけるM2マクロファージの高浸潤が、食道扁平上皮癌において化学療法の治療効果および予後の新たな予測因子となる可能性が示唆された。