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大学・研究所にある論文を検索できる 「Characterization of bioactive peptides without disulfide bridges from the venom of Lycosa poonaensis species inhabiting the Egyptian environment」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Characterization of bioactive peptides without disulfide bridges from the venom of Lycosa poonaensis species inhabiting the Egyptian environment

Megaly, Alhussin Mohamed Abdelhakeem 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24241

2022.09.26

概要

クモは自身が生産する毒を利用することで餌となる昆虫を確実に捕獲するとともに哺乳類などの外敵から身を守っている。クモ毒には様々な生理活性成分が含まれており、神経毒性や細胞毒性などを示すペプチドがその中心的な役割を果たす。クモ毒ペプチドの多くは分子内にジスルフィド結合で架橋された構造を持つのに対し、架橋構造を持たない直鎖状のペプチドも見つかっており、それらはたいていの場合、餌の捕獲や防御には直接寄与しないように思われる抗菌活性を示す。現在、世界中に約5万種のクモが棲息すると言われるが、そのなかで毒成分が研究されたものは限られており、新規生理活性ペプチドの探索対象として興味が持たれている。本論文は、エジプト地域に棲息し先行研究のないLycosa poonaensis(コモリグモ科)の毒液に含まれる生理活性成分、特に直鎖状ペプチドの構造と活性を明らかにしたものである。内容は以下のとおりである。

第1章の序論に続く第2章では、まずL.poonaensis毒液のLC/MS分析による全成分の分子量分布を調べた。その結果、毒液には分子量500〜8000Daまでの成分が400種以上含まれ、特に1000〜2000Daの成分が多いことを明らかにした。次にすべての成分に対して、還元とそれに続くCysアルキル化反応をおこなった。それぞれの反応前後の質量変化をLC/MS分析でモニターしたところ、質量が変化しないものが120成分見つかり、それらを直鎖状ペプチドと推定した。続いてこの直鎖状ペプチド群のうち、HPLC上で単一のピークを与えた2370Da(lyp2370と命名)と1987Da(lyp1987と命名)の2成分についてそのアミノ酸配列をMS/MS解析により推定した。その際、同じ質量を持つLeuとIle残基の識別には、MALDI-TOF/TOF型質量分析計を用い、観測されたアミノ酸側鎖のフラグメンテーションの違いからそれぞれを同定した。推定した配列を確認するためそれぞれのペプチドをFmoc固相合成法により化学的に調製し、天然試料と比較したところ、いずれのペプチドについてもHPLC保持時間が一致し、これにより配列を確定した。さらにその配列をBLAST検索した結果、lyp2370及びlyp1987はそれぞれL.singoriensisから同定されたM-lycotoxin-Ls4a及びM-lycotoxin-Ls3bと類似していることが判明した。抗菌活性試験の結果、lyp2370は弱い活性しか示さなかったのに対し、lyp1987は顕著な活性を示した。またlyp2370とその構造類縁化合物の構造と活性の関係を検討した結果、lyp2370の低い抗菌活性は両親媒性α-helix構造の親水性面に存在するGlu残基の負電荷に起因することが示唆された。

第3章では、L.poonaensis毒腺において発現するペプチドやタンパク質の構造を網羅的に明らかにすることを目的として、次世代ハイスループットシーケンス技術を用いるトランスクリプトーム解析を行った。毒腺から抽出したmRNAからcDNAライブラリーを構築し、高速シーケンサー(DNBSEQ-G400、MGITech社)による200bppaired end sequencingにより得られた短い配列(リード)をつなぎ合わせて配列断片(コンティグ)を推定した後、コーディング領域を予測した。その結果、他のクモ毒ペプチドやタンパク質と類似したコンティグが87個同定された。内訳としては神経毒と類似したものが最も多く、次いでペプチダーゼならびに直鎖状ペプチドが多かった。直鎖状ペプチドと推定されるコンティグは15個見つかったが、クモ毒直鎖状ペプチドの前駆体において同定されているプロペプチドと成熟配列を隔てるモチーフを目印に解析したところ、それぞれが1〜5種の成熟型ペプチドを含んでいることが明らかとなり、毒腺で発現すると考えられる計17種類の成熟型直鎖状ペプチドを同定した。また、第2章においてMS/MS解析によって同定された2つのペプチドのうちlyp2370の配列は同定された成熟型ペプチドM-lycotoxin-Lp1aに含まれていること及びlyp1987の配列はMlycotoxin-Lp2と一致することが確認された。さらにlyp2370はM-lycotoxin-Lp1aのN末端が欠損したペプチドであり、前者は毒液中のプロテアーゼによる後者の分解により生成すると考えられた。

第4章では同定された17種の直鎖状ペプチドから構造的特徴が異なるもの7種を選抜し、Fmoc固相合成法により化学合成してその生物活性を評価した。合成したペプチドは、いずれもグラム陰性菌(大腸菌)並びにグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌及び枯草菌)に対して抗菌活性を示したが、ペプチド間でバクテリアに対する選択性が異なっていた。また、すべてのペプチドが昆虫に対する毒性も示したのに対して、溶血活性は認められなかった。円偏光二色性分光法による二次構造解析の結果、これらのペプチドはすべてα-helical構造を形成していることが明らかになり、さらに三次元モデルによりこのα-helical構造の一方の表面に親水性アミノ酸残基が配置し、その反対側に疎水性アミノ酸残基が配置することが予想された。このことから分子が全体として両親媒性を持ち、細胞膜と相互作用して構造を破壊することで活性を発揮するものと推定している。また被験ペプチドの抗菌活性が、ペプチドの正味電荷、α-helical構造の親水面における塩基性残基と酸性残基の配置、全体の疎水性などの違いにより変化することを示し、それぞれのペプチドの化学的特性も膜との相互作用の強さに影響を与える要因となることから、観察された生理活性の種間選択性は生物種による膜の構成成分の違いが反映されたものと考察した。

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