在宅療養中の高齢慢性閉塞性肺疾患患者に対する訪問リハビリテーション及び訪問看護による在宅呼吸リハビリテーションの実態
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 北村 智美
本研究は、在宅療養中の高齢慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary
Disease: 以下 COPD)患者に対する訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)及び訪問
看護による在宅呼吸リハビリテーション(以下在宅呼吸リハ)の実態を明らかにするた
め、医療介護レセプトデータを用いた観察研究及びインタビューによる質的研究を行った
ものであり、以下の結果を得た。
1.
千葉県柏市の医療介護レセプトデータを用いた観察研究において、在宅療養中の高齢
COPD 患者に対する在宅呼吸リハを提供する主要な医療介護サービスである訪問リハ
及び訪問看護の利用率は 3.8%であった。
2.
訪問リハ・看護利用者の約半数が要介護 3〜要介護 5 であった。加えて、訪問リハ・
看護利用者の約半数が追跡期間 2 年間のうちに死亡していたことから重症者が多い可
能性が示唆された。
3.
訪問理学療法士・作業療法士・看護師に対するインタビュー調査において、訪問リハ
及び訪問看護による COPD 患者に対する在宅呼吸リハの実践では、
“利用者が暮らし
ていく上で必要なことを見極め、息苦しさに対処しながら「なんとか生活していく方
法」を一緒に見出”していた。
4.
訪問理学療法士・作業療法士・看護師は、在宅呼吸リハにおいて、
【利用者のありた
い姿を捉え、希望を尊重したケアを行】い、
【呼吸リハビリテーションを効果的に行
うために心身の土台作りを】し、
【生活する中で自然と呼吸リハビリテーションが行
われるよう環境を整え】ていたことが明らかになった。
5.
訪問理学療法士・作業療法士・看護師は、在宅呼吸リハにより高齢 COPD 患者の暮ら
しを支えている一方で、重症者に対するケアの標準化や疾患管理に関する医師との協
働体制には課題がある可能性が示唆された。
以上、本論文は、高齢 COPD 患者に対する訪問リハ及び訪問看護による在宅呼吸リハの
実態として、利用者の ADL は低く重症者が多い可能性を示した。さらに、暮らしを支え
る在宅呼吸リハの具体的な実践内容を明らかにした一方で、重症者に対するケアの標準化
等には課題があることも示された。これらの知見は、訪問リハ及び訪問看護による重症患
者の暮らしを支える在宅呼吸リハの発展に資するものと期待される。
よって本論文は博士(保健学 )の学位請求論文として合格と認められる。