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大学・研究所にある論文を検索できる 「在宅医療受療高齢者の要介護認定度悪化と死亡の要因」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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在宅医療受療高齢者の要介護認定度悪化と死亡の要因

山本, 真理子 大阪大学

2020.09.25

概要

【研究背景】
急速な高齢化の進展に伴い、年々増え続ける医療費削減のために、介護保険を柱とした在宅医療の推進や社会サービスの充足が進められており、在宅療養高齢者も増加傾向にある。高齢者が介護度を悪化させることなく過ごせることは高齢者本人や家族にとってのQOL向上にもつながる。しかし、虚弱な在宅療養高齢者の介護度悪化予防についての研究はほとんど行われていない。また、在宅看取り推進の状況下においても、死亡場所の中心は病院であるが、病院における終末期高齢患者の看取りに関する研究は、主に緩和ケア病棟やホスピスにおける緩和ケアや、がん患者を対象にしたものが中心である。

【研究目的】
①在宅療養高齢者の要介護度悪化に関連する要因を検討し、要介護度悪化防止にむけた支援のあり方について検討する。
②死亡場所の中心となっている病院における終末期高齢者に対する看護実践について明らかにする。

【研究1】
目的:訪問診療受療中の高齢者の要介護度悪化と死亡に関連する要因を明らかにする。

方法:Osaka Home CAre REgistry study (在宅医療におけるエビデンス確立のためのレジストリー研究) において、訪問診療受療中の65歳以上の在宅療養高齢者179名 (平均年齢84±8.1歳、男74名) に対して約2年半の追跡調査を行った。そのうち、初回介護度5の患者を除いた110名において、介護度が悪化しなかった者を「維持群」、悪化した者を「悪化群」、死亡した者を「死亡群」とし、性別をコントロールして、疾患名、認知症の程度、社会サービスの利用状況などを要因とし、「維持群」をreferenceとした3群間比較を実施した。

結果:「維持群」が42名(20.0%)、「悪化群」は22名(38.2%)、「死亡群」は46名(41.8%)であり、年齢(OR=1.10; CI=1.00-1.21; P=0.051)、骨関節疾患(OR=0.34; CI=0.09-1.22; P=0.098)が要介護度悪化に有意な傾向を認めた。死亡と有意な関連を認めたのはアルブミン(OR, 0.22; CI=0.07-0.73 P=0.013)であった。

結論:在宅医療受療者の要介護度悪化と死亡に関連する要因が明らかとなった。今回の知見は在宅療養の継続をさせるための方策を講じる際に重要と考えられた。

【研究2】
目的:死亡場所の中心である病院において、看護師の明確な意思表示のできない終末期高齢者に対するEnd-of-Life Care(EOLC)の実践プロセスとそれを進めるための家族への関わりについて記述する。

方法:療養病床と200床以下の一般病院において高齢患者看取り経験のある看護師19名に面接調査を実施し、質的に分析した。

結果:EOLC実践のプロセスは、<病棟の医療チームからEOLCに対する承認や理解を得>て、<家族が患者の死を受容できるよう家族に介入>してEOLC実践の条件づくり行い、EOLC実施後は<看取り後の家族のフィードバックによりEOLCの質を評価する>の3つで構成された。

結論:病院におけるEOLC実践は、終末期高齢患者への直接ケアだけでなく、家族が患者の死を受容できるよう働きかけるプロセスでもあった。本研究からEOLCに関わるメディカルスタッフは、家族が持つ高齢患者に対する医療への期待が現実的になるよう、終末期であることや衰弱していることを家族に自覚してもらい家族とともにEOLC実践することが肝要である。

【まとめ】
介護度が比較的高い在宅療養高齢者の介護度悪化に関連する要因を明らかにできたことは、今後の在宅医療・在宅ケアを支援していくうえで一つの知見となりうると考える。また、延命や積極的治療を志向しやすい病院においてより良い看取りを見据えた医療実践における看護職の役割を明らかにできたことで、医療的ニーズのある超高齢患者のEOLC実践の質のさらなる向上に寄与すると考える.