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大学・研究所にある論文を検索できる 「Ultrasonographic evaluation reveals thinning of cervical nerve roots and peripheral nerves in spinal and bulbar muscular atrophy」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Ultrasonographic evaluation reveals thinning of cervical nerve roots and peripheral nerves in spinal and bulbar muscular atrophy

渡辺 大祐 横浜市立大学

2022.03.31

概要

1. 序論
従来, 末梢神経は画像的に評価することが難しい臓器の一つであり, 日常臨床においては主に神経学的診察, 電気生理学的検査, 神経生検によってその病態が評価されてきた. 近年の超音波診断装置の進歩により末梢神経を高解像度で描出することが可能となり, その臨床応用が増加しつつある. 超音波画像上, Charcot-Marie-Tooth 病のような脱髄性ニューロパチーにおいては末梢神経は腫大傾向となり, 一方で筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)においては, 脊髄運動ニューロンの減少を反映して末梢神経が軽度萎縮傾向になることが報告されている (Hobson-Webb et al., 2013). アンドロゲン受容体遺伝子異常によって生じる球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy: SBMA)も脊髄運動ニューロンの減少をきたす疾患である(Tanaka et al., 1996)が, これまでに超音波検査による末梢神経の評価は行われておらず, ALS との相違も明らかでなかった. 本研究では, 超音波検査を用いて SBMA 患者群の末梢神経幹横断面積(cross-sectional area: CSA)を測定し, ALS 患者群と比較し, 両群間における差異と末梢神経超音波検査の有用性について検討した.

2. 対象と方法
2014 年 7 月から 2020 年 6 月の間に,国立病院機構箱根病院神経・筋難病医療センターと横浜市立大学医学部附属病院において前方視的に SBMA と ALS の症例を登録した. SBMA は遺伝子検査により確定され, リュープロレリン未投与であった 11 症例(66.8±12.5 歳)を対象とした. ALS はEL Escorial ALS criteria またはAwaji ALS criteria において“definite”または“probable”の基準を満たす男性 9 症例(62.1±17.5 歳)を対象とした. 過去の健常者における末梢神経超音波研究において男女間で有意な CSA 基準値の差が報告されていることから, ALS 女性症例については検討の対象外とした. 本研究は,国立病院機構箱根病院神経・筋難病医療センターと横浜市立大学医学部附属病院において倫理審査委員会の承認の下に施行した(承認番号 国立病院機構箱根病院神経・筋難病医療センター:13、横浜市立大学医学部附属病院:B130509017).すべての参加者からインフォームドコンセントを得た.
各症例に対し,(1) Medical Research Counsil (MRC) sum score と ALS Functional Rating Scale-Reviced (ALSFRS-R) score による臨床的評価を実施した. (2) 電気生理学的評価として, nerve conduction study (NCS)による複合筋活動電位(compound motor action potential: CMAP)振幅と感覚神経活動電位(sensory nerve action potential: SNAP)振幅を, 正中神経と尺骨神経で評価した. また運動単位数推定( motor unit number estimation: MUNE) を母球筋で評価した. (3) さらに片側の頸部神経根と上肢の正中神経, 尺骨神経において超音波を用いて末梢神経 CSA を評価した. 各測定部位毎に得られた CSA について, SBMA 群と ALS 群の比較を行った. また受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic: ROC)曲線を用いて SBMA とALS を鑑別するカットオフ値を求めた.

3. 結果
(1)MRC sum score とALSFRS-R score には, SBMA 群とALS 群の間に有意な差は認められなかった. その他の臨床的特徴として, 発症からの罹病期間はSBMA 群(14.1±5.6 年)の方が, ALS 群(3.1±2.4 年)よりも有意に長かった(p<0.001). (2) NCS における CMAP振幅は, SBMA 群よりも ALS 群で有意に小さかった(正中神経;SBMA 群 6.6±2.6mV, ALS 群 2.0±2.3mV, p=0.004, 尺骨神経;SBMA 群 5.5±2.8mV, ALS 群 2.6±2.3mV, p=0.025). 一方, SNAP 振幅は, ALS 群よりも SBMA 群で有意に小さかった(正中神経; SBMA 群 4.4±4.4mV, ALS 群 26.4±8.6mV, p<0.001, 尺骨神経;SBMA 群 3.2±2.7mV, ALS 群 20.2±7.7mV, p<0.001). また MUNE の結果は SBMA 群とALS 群の間に有意な差を認めなかった. (3) 超音波検査で得られたCSA 値は, C6, C7 頸部神経根と, 正中神経上腕部, 前腕部と, 尺骨神経上腕部において, ALS 群よりも SBMA 群の方が有意に縮小していた(C6; SBMA 群 6.8±1.5mm2, ALS 群 9.5±1.0mm2 , p=0.001, C7; SBMA 群 8.1± 1.3mm2, ALS 群 9.7±1.6mm2, p=0.033, 正中神経上腕部; SBMA 群 5.5±0.9mm2, ALS 群 7.6±0.9mm2, p<0.001, 正中神経前腕部; SBMA 群 4.0±1.2mm2, ALS 群 5.4±0.8mm2, p=0.020, 尺骨神経上腕部; SBMA 群 3.2±0.6mm2, ALS 群 4.5±0.9mm2, p=0.002). ROC 曲線を用いた解析では, CSA 値でALS からSBMA を鑑別する診断能としてarea under the curve (AUC) が高い順に, 正中神経上腕部(AUC=0.97, カットオフ値 6.0mm2), C6 神経根(AUC=0.93, カットオフ値 7.9mm2), 尺骨神経上腕部(AUC=0.92, カットオフ値 3.7mm2)であった.

4. 考察
超音波を用いた評価によって, SBMA 患者の末梢神経はALS 患者よりも萎縮していることが示された. 過去の報告において ALS 患者の末梢神経は健常者よりも萎縮していることが示されている(Nodera et al., 2014)ため, SBMA 患者の末梢神経も健常者より萎縮していると推測された. 今回の検討において臨床的な筋力低下は SBMA 群と ALS 群で同程度であり, 電気生理学的検査で評価した運動ニューロン障害の程度も SBMA 群は ALS 群より高度ではなかった. 従って SBAM 群に認められた末梢神経萎縮の原因は, 運動ニューロン減少だけではなく, 一次感覚ニューロンの減少や, 長期の罹病期間が影響している可能性が考えられた.

この論文で使われている画像

参考文献

Hobson-Webb LD. (2013) Neuromuscular ultrasound in polyneuropathies and motor neuron disease. Muscle Nerve 47:790–804.

Nodera H, Takamatsu N, Shimatani Y, Mori A, Sato K, Oda M, Terasawa Y, Izumi Y, KajiR. (2014) Thinning of cervical nerve roots and peripheral nerves in ALS as measured by sonography. Clin Neurophysiol, 125:1906–11.

Tanaka F, Doyu M, Ito Y, Matsumoto M, Mitsuma T, Abe K, Aoki M, Itoyama Y, Fischbeck KH, Sobue G. (1996) Founder effect in spinal and bulbar muscular atrophy (SBMA). Hum Mol Genet, 5:1253–7.

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