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低周波波動を印加した磁場反転配位プラズマに関するシミュレーション研究

浦野, 貴弘 ウラノ, タカヒロ Urano, Takahiro 群馬大学

2020.03.24

概要

磁場反転配位プラズマ(FRC) は高ベータで装置内部に構造物がないなどの利点を有しているが,配位維持時間が非常に短いという欠点がある.近年の FRC 実験では,従来数十~数百マイクロ秒であった配位維持時間が外部入力によって10 ミリ秒程度まで伸びている.配位維持時間が伸長した一方でイオン加熱方法がまだ確立できていない.そこで注目されている方法が波動加熱である.しかし,FRC は磁気中性点を有していること,磁場の非均一性が高いことからサイクロトロン共鳴による加熱効果は小さいことが想定されている.一方で,過去に行われた実験結果では励起された低周波波動の効果によるイオン加熱がみられている.その加熱機構として,トランジットタイム磁気減衰や磁気ポンプによる加熱が示唆されている.それら加熱機構研究の中でプラズマ中のイオンの粒子効果を考慮したシミュレーションは行われていない.そのため本学位論文では,プラズマ中のイオンを粒子,電子を流体として取り扱うハイブリッドシミュレーション技法に波動励起用アンテナからの効果を考慮したシミュレーションが行われ,FRC 中に励起された波動による諸現象の解析結果について論述される.本学位論文の内容は大きく 2 つに分かれている.1 つ目は,励起された波動の伝播とプラズマの応答である.2 つ目は励起された波動によるプラズマ加熱効果とそのメカニズムの解明である.

まず FRC 中に励起された波動の伝播に関するシミュレーションとして,半径 0.3m のループアンテナを(r, z) = (0.3m, -0.5m) に一つだけ配置した場合のシミュレーションを実行した.アンテナ電流波形は正弦波であり,最大電流値は 30 kA, 周波数 160 kHz と設定した.最大電流の際に発生する磁場強度は separatrix 付近で約 0.04 T であり,その値は外部磁場の 40% である.シミュレーションの結果,過去の実験結果と同様に FRC には存在しないトロイダル磁場の励起が確認された.そのトロイダル磁場の軸方向伝播速度を求めた結果, separatrix より外側ではシアアルフベン波(VA)程度で伝播しており,separatrix に近づくにつれイオン音波(Vs)に近づくという結果が得られた.この結果は過去の実験から示唆されているものと同様の結果である.Separatrix 内の高密度な領域も軸方向へ移動しているように確認されたが,separatrix 外に励起された磁場によってプラズマが圧縮または膨張されたことに起因することがわかった.また,励起された波動は高圧力領域には伝播しないことがわかった.励起された波動が減衰する径方向位置は VA = Vs となる位置(局所ベータ値が 0.88)であった.この理由として,FRC は高ベータであるため,励起された磁場による磁気圧の増減に応じてプラズマの圧縮膨張が生じ,そのため電磁場の揺動は高ベータ領域に伝播しないことが考えられる.エネルギー密度の変化を観測した結果,separatrix 外に励起された磁気エネルギーによってプラズマが圧縮膨張され separatrix 内プラズマエネルギーが増減していることが確認された.また,その時のイオンエネルギーと電子エネルギーの変化分の比は初期の温度に依存することもわかった.

次に,励起された波動による加熱効果を検証するための解析モデルとして,separatrix を挟むように 2 つのループアンテナを配置した.配置位置は(r, z) = (0.3m, ±0.5m)である.アンテナ電流や周波数は上記と同様であるがアンテナ電流初期位相を反転させた 2 パターンによる結果の違いを確認した.励起された波動によるプラズマ加熱効果を検証するために, separatrix 体積で平均したイオン温度と電子温度が求められた.本シミュレーションでは,イオン温度は波動無しの場合と比較して最大で 7 eV 程度増加した.電子温度は波動無しの場合の電子温度を中心として振動しているのみで波動による明らかな増加はみられなかった.また,磁力線に垂直または平行な速度成分から評価した温度はそれぞれ異なることが示され,イオン熱運動の非等方性が確認された.アンテナ電流位相の違いによる加熱効果に大きな違いはみられなかった.さらに、低周波波動印加による電子温度の変化と separatrix体積の変化の間に相関があることが見出された.電子の断熱条件は満たされており,本シミュレーションの結果からも,クーロン衝突による温度変化分を除いて主に断熱過程に従うことが明らかになった.一方で,イオンの断熱近似の条件は弱磁場領域で満たしておらず,弱磁場領域において磁力線に平行なエネルギーの増加が観測されていることから,断熱不変性の破れに起因する磁気ポンプイオン加熱が発生していることが明らかになった.

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参考文献

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