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大学・研究所にある論文を検索できる 「非小細胞肺癌に対する気管支腔内超音波断層法を用いた生検における太径ガイドシースで採取した腫瘍量の前向き研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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非小細胞肺癌に対する気管支腔内超音波断層法を用いた生検における太径ガイドシースで採取した腫瘍量の前向き研究

桂田, 直子 神戸大学

2022.09.21

概要

背景:肺癌は、世界の癌死亡原因の第一位であるが、近年、遺伝子変異を標的と した薬剤や免疫チェックポイント阻害薬の導入により、非小細胞肺癌患者の生 存率が向上している。個々の症例に最適な治療選択を行うために、遺伝子変異検 索や免疫チェックポイント阻害薬の効果の指標となる PD-L1 検査が必須である。 PD-L1 検査には、組織検体中に腫瘍細胞数 100 個以上、遺伝子パネル検査には、 例えば、サーモフィッシャー社の DNA for the Ion AmpliSeqTM Cancer Hotspot Panel 検査では、解析に必要な 10ng の DNA を得るのに約 2000 個の腫瘍細胞が 必要であり、組織検体中に十分な腫瘍細胞数かつ腫瘍割合を有することが不可 欠である。

バーチャル気管支鏡ナビゲーション(virtual bronchoscopic navigation: VBN)を併用し、ガイドシース併用気管支内腔超音波断層法(endobronchial ultrasonography with a guide sheath: EBUS-GS 法)を用いた肺末梢病変の生検は、良好な診断率が示されている。ガイドシース(GS)には細径と太径の 2 種類があり(細径;鉗子外径 1.5 mm、太径;鉗子外径 1.9 mm) 、それぞれ適合するチャンネル径を有する気管支鏡を使用する。細径 GS は先端外径 4.0 もしくは 4.2 mm の細径気管支鏡、太径 GS は先端外径 5.9 mm の気管支鏡を使用する。太径 GS での生検は、得られる検体が大きいが、気管支鏡の先端外径が太いため、末梢の気管支を選択しにくいと考えられている。これまで、太径 GS の使用に関する報告は少数のみである。肺末梢結節影に対する太径 GS での生検は、細径 GS と同等の診断率との報告が 2 つ、太径 GS での生検は、細径よりも多くの腫瘍細胞数が得られるとの報告が 1 つあるが、いずれの報告もどちらの GS を選択するかは、術者の判断に委ねられていた。

そこで我々は、太径 GS がより多くの腫瘍細胞数を得ることができるか、また、どのような病変であれば太径 GS が使用できるかを検討するためにこの研究を行った。

方法:非小細胞肺癌が疑われる肺末梢病変を有する患者を前向きに登録した。径 5.9 mm 気管支鏡で太径 GS を用いて EBUS で病変を確認し、生検を行った。太径 GS を使用した EBUS で病変が確認できない場合は、5.9 mm 気管支鏡を細径気管支鏡(径 4.0 mm か 4.2 mm)に変更し、細径 GS で生検した。太径 GS で前向きに得られた非小細胞肺癌の腫瘍細胞数(前向き太径 GS 群)と細径 GS で過去に得た非小細胞肺癌の連続症例の腫瘍細胞数(細径 GS コホート)を比較した。主要評価項目は太径 GS 群と細径 GS コホートでの検体あたりの腫瘍細胞数とした。副次評価項目は、連続した 5 検体のうち最も多く腫瘍細胞が含まれている検体の腫瘍細胞数、検体の大きさ、全有核細胞中の腫瘍細胞の割合、PD-L1 検査の成功率を太径 GS 群と細径 GS コホートで比較した。また、前向き登録群において、細径気管支鏡への変更に関連する因子、検査の安全性を評価した。

結果:2018 年 8 月より 2020 年 3 月までの期間に 87 例の症例が前向きに登録された。太径 GS で検体が採取されたのは、87 例中 55 例 (63.2%)、診断率は、50.6% (44/87)であり、37 例が非小細胞肺癌と診断された (Fig.1)。細径気管支鏡への変更例も含めた前向き登録患者の全診断率は、66.7% (58/87)であった。Table 2 に患者背景を示した。

主要評価項目である、太径 GS 群(37 例)、細径 GS コホート(37 例)で比較した、1 検体あたりの腫瘍細胞数は 2 群間で差がなかった(658±553 vs. 532±526,p=0.32)。連続した 5 つの検体のうち最も多くの腫瘍細胞を含む検体での比較でも差はなかった(1436±1103 vs. 1170±994, p = 0.28)。一方、検体の大きさは太径 GSで有意に大きかった(1.75±0.87 mm2 vs. 0.83±0.42 mm2, p = 0.00000019) (Fig.2)。 2000 個以上の細胞数が得られた検体の割合は、太径 GS で 29.7%, 細径 GS で18.9%であった。PD-L1 検査の成功率は、太径 GS 群の方が多い傾向にあった(100.0% vs. 89.7%, p = 0.08)。有核細胞中の腫瘍細胞の割合に差はなかった (10(0–60) vs.10 (0–70), p = 0.97) (Table 3)。

前向き登録症例のうち、細径気管支鏡への変更なし群(n=55)と変更群(n=32)とで病変の特徴を検討したところ、変更なし群で、病変サイズがより大きく、 bronchus sign 陽性(腫瘍へ到達する気管支がある)例が多く(29 (90.6%) vs. 55 (100.0%), p = 0.047)、VBN で作成された病変への気管支分岐数がより少なかった (4.40±1.17 vs. 4.93±0.84, p = 0.028) (Table 4)。多変量解析の結果、気管支分岐数が細径気管支鏡への変更と関連した因子であった。5.9 mm 気管支鏡と細径気管支鏡とで直視可能であった気管支分岐数は、それぞれ 3.26±0.8 と 4.13±0.8 (p = 0.0000016)であり、細径気管支鏡の方がより末梢の気管支を選択することができた。3 次 (亜区域支) 以下の気管支分岐数を持つ症例 12 例のうち、11 例(91.7%)で太径 EBUS で病変を確認できた。前向き登録群での安全性の検討では、検査中の大動脈解離で 1 例死亡、1 例が肺膿瘍のために入院を要した。

考察:この研究は、すべての症例に太径 GS を使用し、非小細胞肺癌の腫瘍細胞数を細径 GS で得られた検体と比較した初めての研究である。太径 GS の方がより多くの腫瘍細胞数を得られると推定し、主要評価項目としたが、達せられなかった。しかし、2000 個以上の腫瘍細胞数を含む検体の割合が太径 GS で多く、太径 GS で得られた検体では全例で PD-L1 検査が可能であった。一方、細径 GS で得られた検体では、腫瘍細胞数が足りないために 11%が検査不能であった。これらのことから、今回の研究では太径 GS では統計学的に有意に多い腫瘍細胞数を得ることができなかったものの、臨床的な意義はあると考えている。太径 GSで得られた検体は有意に大きいにも関わらず、腫瘍細胞数に差がなかった原因のひとつとして、太径 GS の検体に腫瘍以外のものが多く含まれていた可能性がある。腫瘍サイズが大きいにもかかわらず、腫瘍細胞割合が低い場合、腫瘍細胞が多く含まれる部分をマイクロダイセクションし、遺伝子解析を行うことができる。

また、我々は、5.9 mm 気管支鏡を用いる太径 GS はどのような病変に使用可能かを明らかにした。5.9 mm 気管支鏡は、3 次以下の気管支分岐数をもつ病変の診断率がよいことを確認し、そのような病変には 5.9 mm 気管支鏡を使用することがよい適応である可能性があると考える。より細い気管支鏡検査では、より末梢の気管支の選択が可能となるため、末梢の肺病変の診断率に優れるという利点はあるが、使用できる鉗子が細いため、得られる検体サイズが小さいという欠点もある。気管支鏡で肺末梢病変の検体を得る際にもっとも大事なことは、個々の病変に応じた径の気管支鏡やデバイスを選択することである。

本研究の限界の一つに、2 名の細胞病理医が細胞数を数えたという点があり、人工知能での測定など他の方法の方がより正確に細胞数を測定できたかもしれない。また、遺伝子パネル検査が実臨床で実施できるようになったのは、研究期間の後半であったため、遺伝子解析成功についての検討ができていない。太径 GS の有用性を確認するためには、多施設でより大きいサンプルサイズで、遺伝子解析も含めた検討が今後必要である。

結論:太径 GS 群では細径 GS コホートに比べ有意に検体が大きかったが、腫瘍細胞数には有意差はなかった。5.9mm の気管支鏡は,気管支分岐数が 3 次以下の病変に使用できる可能性がある。

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