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q-超幾何関数の一般化から現れるモノドロミー保存変形

朴, 佳南 神戸大学

2020.03.25

概要

本博士論文では、超幾何関数の拡張とそれを特殊解に持つモノドロミー保存変形について論じている。

Gaussの超幾何微分方程式はC上0,1, ∞の3 点に確定特異点を持つ2階線形常微分方程式で、種々の特殊関数を含む点において極めて重要な方程式である。Gaussの超幾何級数2Fiはその解であり、3パラメーター1変数の級数で表される。

超幾何関数2Fiの拡張もこれまでに研究がなされてきた。髙階化、多変数化の拡張として、一般化超幾何関数m+iFm、Appell-Lauricella関数FDなどがよく知られている。

これらに対応するq・類似も研究されてきた。Gaussの超幾何方程式や超幾何関数のq-類似については、Heineによる古典的な研究がある。また、2Fiの髙階化の一般化超幾何関数 m+iFmのq-類似である一般化q・超幾何関数Μ+1ΦMも古くから研究されており、また、
Appell-Lauricella関数FDのq-類似であるq*Appell-Lauricella関数ΦD についても研究が進められている。

一方、以上で述べた関数で表される特殊解を持つ非線型方程式系についても研究がなされてきた。古典的な結果として、2 階非線形常微分方程式であるPainleve 第6 方程式ΡνΙはGaussの超幾何関数で表される特殊解を持っことが知られている。また、この多変数化であるGamier系は、Appell-Lauricella関数FDで表される特殊解を持つことも古くから-知られている。近年では、一般化超幾何関数m+i Fmで記述される特殊解を持っ非線形微分方程式系が、Drinferd-Sokolov階層の相似簡約により、藤-鈴木により構成された。そして、津田によってGarnier系と藤・鈴木による方程式系を包括する結果が構成された。すなわち、津田はAppe U- Lauricella 関数FD および一般化超幾何関数m+i Fmを包括するような関数 Fn+i,mで表される特殊解を持っ非線型方程式系を得た。

以上の結果のq・類似に関して、次の結果がある。神保-坂井はΡνΙのq-類似q-Pviを導入し、q・超幾何関数2φΙで表される特殊解を持つことを示した。さらに坂井は、ΡνΙの多変数化であるGarnier系のq・類似q-Garnier系を構成し、それがq-Appell-Lauricella関数φϋ で表される特殊解を持っことを示した。鈴木はFDのq_類似である一般化-q-超幾何関数Μ+1ΦMによって記述される特殊解を持つ高階のq・差分方程式系を,微分の場合で用いた方法のq-差分化によって導入した。

本論文では、津田の結果のq•類似の構成を目的にq-超幾何関数の拡張を定義し、それを特殊解に持っ非線型方程式系を構成した。

本論文は、2部構成になっていて、章立ては以下の通りである。
第1部
第1章q-超幾何関数の拡張FN,Μ
第2章 F1,μから導かれるパフ系
第3章 F1,M-1に関するモノドロミー保存変形Ρ1,Μ

第2部は津田の結果にあたる方程式系の構成について述べる。章立ては以下の通りである。
第4章 モノドロミー保存変形PN,(M_,M+)
第5章から導かれるパフ系
第6章(Ν+1)Χ(Ν+1)への簡約化

イントロダクションでは、背景および関連する結果の概要と本論文の目的について述べる。第1部はq-Garnier系にあたる方程式系の構成を述べる。第2部はΜ,Νが一般の場合を考える。

第1部の内容はK. Park(2018)の論文に基づいている。
第1章では、q-超幾何関数の拡張としてJh,Μを定義し、の持つ双対性と ル,μが満たす線形q-差分方程式について示している。定義した 仰,μは(Μ,ΝΗΐ,ΐ)のときHeineの級数であり、(M,N)=(1,N)、(Μ,Ν)=(Μ,1)のときそれぞれ一般q-超幾何級数ν+ιΦν.q-Appell-Lauricella関数Φ dである。Μί,μの持つ双対性から、Fn,mのジャクソン積分表示が与えられる。

第3 章では、あるパラメーターを特殊化して、第2 章で得られたパフ系の基底を読みかえて書き直す。書き直した方程式系の階数は2になる。その係数行列もまた、因子化されて表されることを示す。書き直した方程式系を、あるモノドロミー保存変形のラックス形式を特殊化したものとみなして、目的の方程式系を得る。得られた方程式系がq-Garnier系と等価であることも示す。

第2部の内容は一般のΝ,Μにおける結果である。
第4 章では、モノドロミー保存変形PN,(M_,M+)を定義する。PN,(M_,M+)の特殊な場合とq-Garnier系とq・鈴木系との関係を示す。

第5 章では、第2 章で述べた手順と同様に、超幾何関数の拡張外, μの積分が満たすパフ系を構成する。このとき、得られるパフ系の階数は(ΜΝ+1)である。

第 6 章では、 超幾何関数 FN,M-1 で表される特殊解を持つモノドロミー保存変形を得る。第5章で得たパフ系に対して、あるパラメーターを特殊化し、サイズ(MN+1)のパフ系をN+1の系に書き直す。そのように簡約化した系の係数もまた因子化される。その簡約化した方程式系をモノドロミー保存変形のラックス形式PN+1,(M,M)を特殊化したものと解釈する。最後に、モノドロミー保存変形が関数 汎,μで表される特殊解を持つことを示す。

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