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常微分方程式の固有値問題に対する完全WKB解析

紫垣, 孝洋 神戸大学

2022.09.25

概要

本博士論文では、常微分方程式の固有値問題の完全WKB解析について論じている。特に中間子の質量の数理モデルに現れる固有値問題の完全WKB解析と、Bender氏,Fring氏,Komijani氏が提唱した、ある1階常微分方程式に対する非線形固有値問題の完全WKB解析について、それぞれPartIとPartIIIで述べている。PartIIではこれらの研究の位置付けを明確にするため、完全WKB解析と固有値問題に関する概説を述べた。

量子物理学において、Schrodinger方程式のPlanck定数に関する発散級数解(WKB解)を、ある項で打ち切って近似すると物理的に有用な結果が得られることが知られていた(WKB近似)。一方、WKB解にBorel総和法を用いて解析的な意味を与えて解析を行うのが完全WKB解析であり、提唱者のVoros氏や青木貴史氏、河合隆裕氏、竹井義次氏らによって大きな進展を見せた。完全w四3解析において、Stokes曲線はWKB解がBorel総和可能である領域(Stokes領域)の境界となっており、その幾何的な状況を理解することは重要である。また隣接するStokes領域へWKB解のBorel和を解析接続させた時の関係式、つまりWKB解の接続公式についても研究が進められている。

完全WKB解析の固有値問題への応用に関しては、Delabaere氏やDillinger氏、Pham氏がEcalle氏の“resurgenttheo対'を用いた研究を行い、さらに小池達也氏もWKB解の接続公式を用いて固有値問題の研究を行った。彼らの研究により、完全WKB解析は固有値問題を扱う上で有用であることがわかる。Stokes曲線の始点となる点(変わり点)の種類により、数種類のWKB解の接続公式が知られているが、「ghost点」と呼ばれる点の近くでの接続公式を固有値問題へと応用させた例はまだなく、PartIで扱った固有値問題はその一つの例となっている。

PartIでは中間子の質量の数理モデルに現れる固有値問題の完全WKB解析について扱った。名古屋大学の酒井忠勝氏や京都大学の杉本茂樹氏の研究で現れる数理モデルにおいて、陽子と中間子の結合に関わる粒子である中間子の質量は、ある2階常微分方程式の境界条件下での固有値として表される。この固有値問題が複素数平面における接続問題と関係していることが分かり、適切にパラメータを導入するとSch:rodinger方程式の形へと変形され、完全WKB解析の問題として扱うことが可能となる。この際、元の問題と関連があるパラメータの偏角が0の場合は、変わり点どうしが結ばれるStokes曲線が存在するという状況が発生しており、既存の理論をそのまま用いることは難しい。そのため、偏角を動かして退化を解く必要がある。

PartIで得られた主な結果は、(0を含まない)ある領域内の偏角をもつパラメータに対し、固有値の満たす方程式の主要部が、WKB解の接続公式を用いて具体的に得られるというものである。Stokes曲線は偏角が0に近づくにつれ複雑な形状を呈するため、WKB解の接続係数自体は偏角が0に近づくにつれ複雑な形となる。しかしパラメータの偏角がこの領域にあるときは、パラメータの絶対値が大きい場合、特定の項が指数的に最も大きい項となる。この特定の項は、ghost点を始点とするStokes曲線を越えて、WKB解を解析接続させる際に現れる接続係数に由来する項である。このように完全WKB解析の手法によって得られた固有値は、(パラメータの偏角を動かした場合の)固有値の数値計算の結果との比較を行うと、妥当な結果であることも蜆察される。

Schrodinger方程式は線形の常微分方程式である。一方、Schrodinger方程式の解の対数微分が満たす方程式(Riccati方程式)は1階の非線形常微分方程式であるため、Schrodinger方程式の研究を通じてRiccati方程式の完全WKB解析の研究も進んだと考えることもできる。さらに2階の非線形常微分方程式であるPainleve方程式に関しても、Schrodinger方程式のモノドロミー保存変形を記述するという立場から研究が行われ、たとえば青木貴史氏、河合隆裕氏、竹井義次氏のPainleve方程式に関する研究が知られている。PartIIIでは、非線形方程式の完全WKB解析を固有値問題へ応用するための新たな試みとして得られた結果を紹介した。

PartIIIではBender氏,Fring氏,Komijani氏の提唱した、ある1階非線形の固有値問題に対する完全WKB解析を通して得られた結果を紹介した。Bender氏らの研究した問題では、解の無限遠での特定の挙動によって境界条件が定義され、この境界条件のもとで解が一意的に定まることを用いて、解の初期値を固有値として扱った。彼らはこの固有値の漸近的な挙動を求めることに成功した。

もとの方程式を適切に変換して得られた方程式に対して、いわゆるO-parameter解と呼ばれる解が定義され、線形の場合と同じようにStokes曲線が定義される。彼らの結果の別証明を完全WKB解析により与えるという目標のための第一歩として、以下の二つが得られた。

(1)0-parameter解は、ある領域においてBorel総和可能である。
(2)境界条件を満たす解は、完全WKB解析の議論により、0-parameter解のBorel和を用いて表される。

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