リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Discovery of bacteria producing a novel cycloisomaltotetraose and identification of novel enzymes involved in cycloisomaltotetraose prodciton and metabolism pathway [an abstract of entire text]」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Discovery of bacteria producing a novel cycloisomaltotetraose and identification of novel enzymes involved in cycloisomaltotetraose prodciton and metabolism pathway [an abstract of entire text]

藤田, 章弘 北海道大学

2022.09.26

概要

第1章 序論
澱粉は,多数のD-グルコース(Glc)がα-(1→4)-グルコシド結合で重合したアミロースと,複数のアミロースがα-(1→6)-グルコシド結合による分岐で結合したアミロペクチンの混合物である.澱粉に作用する酵素を用いて,各種のオリゴ糖が工業生産されている.α-amylase(EC3.2.1.1)は,澱粉中のα-(1→4)-グルコシド結合をendo型に加水分解し,マルトオリゴ糖を生成する.β-amylase(EC3.2.1.2)とglucoamylase(EC3.2.1.3)は,澱粉をexo型に加水分解し,それぞれマルトースとβ-D-グルコースを生成する.α-glucosidase(EC3.2.1.20)は,加水分解反応ではα-D-グルコースを生成し,分子間糖転移反応ではイソマルトオリゴ糖やニゲロオリゴ糖を生成する.分子間糖転移反応は高重合度の糖質の生成にも利用され,GluconobacteroxydansATCC11894由来dextr and extrinase(EC2.4.1.2)は,デキストリン中の非還元末端グルコシル残基のα-(1→4)-グルコシド結合を切断,他のデキストリン分子中の非還元末端グルコシル残基に対してα-(1→6)-転移を触媒する.本反応は連続的に触媒され,α-(1→6)-グルカンであるデキストランがデキストリンから合成される.Paenibacillusalginolyticus由来の2種の酵素,6-α-glucosyltransferase(EC2.4.1.24,6GT)とα-amylase,は液化澱粉に作用し,α-(1→3)-,α-(1→4)-およびα-(1→6)-グルコシド結合と分岐構造を有するイソマルトデキストリンを生成する.

分子内糖転移反応により環状糖を生成する酵素も知られる.cyclomaltodextring lucano transferase (EC2.4.1.19)は,澱粉からシクロデキストリン(CDs,重合度=6,7または8)を生成する.CDsは疎水性低分子を包接し,難水溶性分子の可溶化や揮発性分子の揮発抑制に利用される.2種の環状四糖,cyclobis-(1→6)-nigerosylとcyclobis-(1→6)-maltosyl,も澱粉を原料として酵素的に生成される.これらの環状糖の分解酵素も報告があり,澱粉関連酵素について学術面・産業面で多くの知見がある.

澱粉のほか,デキストランからオリゴ糖を生成する酵素も知られる.glucodextranase(EC3.2.1.70),isomaltodextranase(EC3.2.1.94),dextran1,6-α-isomaltotriosidase(EC3.2.1.95)は,デキストランに対して非還元末端から作用し,それぞれGlc,イソマルトース(IG2)およびイソマルトトリオース(IG3)を生成する.cycloisomaltooligosaccharideglucanotransferase(EC2.4.1.248,CITase)は,デキストランから重合度7から20の環状イソマルトオリゴ糖(CIs)を生成する.これまでに3種のCITase,BacilluscirculansT-3040由来CITase-T-3040,B.circulansU-155由来CITase-U-155およびPaenibacillussp.598K由来CITase-598K,が報告されており,それぞれの主生成物はシクロイソマルトオクタオース(CI8),CI8およびシクロイソマルトヘプタオース(CI7)である.CIsには高い水溶性や包接能等の有用な性質があり,包接能を活用して色素の安定化に用いられている.また,Streptococcusmutansによるバイオフィルム形成を抑制することで,抗齲蝕効果を示す.

澱粉に作用する酵素と比べ,デキストランに作用する酵素は種類が限られ,産業利用も限定的である.新規デキストラン関連酵素の取得は,オリゴ糖生産技術を拡大する.そこで本研究では,デキストランに作用し,新規糖質を生成する新規酵素を土壌細菌より探索した.

第2章
デキストランを唯一の炭素源とする固体培地に土壌懸濁液を塗布,2,000コロニーの微生物を土壌から単離した.デキストランを炭素源とする液体培地で単離菌株を培養後,菌体破砕,培養上清と菌体破砕液からなる粗酵素液を調製した.粗酵素液をデキストランに作用させ,生成オリゴ糖を薄層クロマトグラフィー分析に供した.D1110株とD2006株由来の粗酵素液において,IG3(Rf値=0.75)とイソマルトテトラオース(IG4)(Rf値=0.67)とは異なるRf値=0.70の未知糖質Aを生成する活性が得られた.16SrDNA解析により,D1110株とD2006株はそれぞれAgreiasp.およびMicrobacteriumtrichothecenolyticumと同定された.両株はともに,Micro bacteriaceae科に属する.未知糖質Aの生成活性は両株の培養上清に認められた.Agreiasp.D1110の培養上清をデキストランに作用させ,未知糖質Aを生成後,エタノール沈殿と10kDaカットオフ膜により未反応デキストランを除去,α-glucosidase/glucoamylaseによる消化とアルカリ処理により還元糖を分解後,イオン交換樹脂による脱塩,活性炭による脱色を行い,未知糖質AをHPLC上の純度99.1%に精製した.HPLCの検出には,示差屈折率検出器を用いた.精製糖質Aを1H-NMR,13C-NMR,DEPT135°,1H1HCOSY,HSQC,HMBC,LC-MSにより解析した結果,未知糖質Aはcyclo-[-6Glcα1-]4であると決定され,cycloisomaltotetraose(CI4)と命名した.CI4は既知CIsの中で最小である.

M.trichothecenolyticumD2006の培養上清をデキストランに作用させ,CI4溶液を調製後,dextranase消化,アルカリ処理,イオン交換樹脂による脱塩を行い,CI4を純度96.0%に精製した.60℃の湯浴中でロータリーエバポレーターを用いてBrix53%に濃縮後,室温で静置,CI4結晶を取得した.取得した結晶を再溶解,60℃の湯浴とロータリーエバポレーターでBrix48%に濃縮後,3日間室温に静置,CI4単結晶を取得した.CI4単結晶の単結晶X線構造解析では,非対称単位内に2つのCI4分子,CI4分子1とCI4分子2,6つの水分子および4分子相当の非化学両論数的な水分子が存在し,取得されたCI4単結晶は5含水結晶であると決定された.CI4分子内に分子内水素結合が認められ,CI4分子1とCI4分子2の間の分子間水素結合および各CI4分子と水分子間の分子間水素結合が認められた.CI4・5含水結晶は,CIsでは初の結晶である.各水素結合がCI4のコンフォメーションを固定化することで,CI4の結晶化を促進したと考えられた.invitro消化性試験では,CI4が難消化性であることが示された.

第3章
Agreiasp.D1110とM.trichothecenolyticumD2006の培養上清よりCI4生成酵素を硫酸アンモニウム沈殿,透析,2種のカラムクロマトグラフィーにより電気泳動的に単一に精製した.CI4生産菌2株の培養上清に認められたCI4生成活性は,単一酵素による活性であることが示され,CI4生成酵素をcycloisomaltotetraoseglucanotransferase(CI4Tase),Agreiasp.D1110由来CI4TaseをAgCI4Tase,M.trichothecenolyticumD2006由来CI4TaseをMtCI4Taseと命名した.両酵素の分子量はSDS-PAGE上で86,000であった.酵素量の定義は,10mg/mLのデキストランT70から1分間に1μmolのCI4を生成する酵素量を1Uとした.Agreiasp.D1110の培養上清1.8Lから2.5mg,20UのAgCI4Taseが精製倍率18倍,収率10%で精製された.AgCI4Taseの比活性は,8.1U/mgであり,N末端アミノ酸配列を解析したところ,ATVGDAWTDが得られた.M.trichothecenolyticumD2006の培養上清1.4Lから3.0mg,11UのMtCI4Taseが精製倍率14倍,収率11%で精製された.MtCI4Taseの比活性は,3.6U/mgであり,N末端アミノ酸配列解析ではADLGDAWTDが得られた.

AgCI4TaseはpH5.2-6.2の範囲,MtCI4TaseはpH5.7で最も高い相対活性が得られた.4℃,18時間の条件下で,AgCI4TaseはpH4.6-9.9で静置した際,MtCI4TaseはpH5.0-6.9で静置した際に残存活性80%以上が得られた.両CI4Taseは,40℃で最も高い相対活性が得られた.温度安定性については,AgCI4Taseは40℃以下,MtCI4Taseは35℃以下で30分間静置した際に,80%以上の残存活性が得られた.両CI4Taseは,重合度5以上のイソマルトオリゴ糖を基質とした環化反応と不均化反応を触媒し,CI4を基質として加水分解反応とカップリング反応を触媒した.CITaseも環化,不均化,加水分解,カップリングの4反応を触媒し,CI4TaseとCITaseは類似した反応特異性を示す.一方,CITaseは重合度7から20のCIsを生成し,CI4Taseは環状糖としてはCI4を特異的に生成した.この生成物特異性が,CI4TaseとCITaseの差異であると考えられた.

液化澱粉に対してP.alginolyticus由来6GTを作用させ,液化澱粉の非還元末端側にα-(1→6)-グルカンを生成し,6GTを熱失活後,MtCI4Taseを24および72時間作用させた.作用後の酵素反応生成物をα-glucosidaseとglucoamylaseで消化したところ,糖組成で6.2%(24時間作用)と4.8%(72時間作用)のCI4が生成したことが示された.澱粉を出発原料としてCI4を生成可能であることが示唆された.

第4章
CI4生産菌2株の全ゲノム配列を次世代シーケンサーMiSeqで解析し,ドラフトゲノムを得た.精製酵素から得たN末端アミノ酸配列に基づき,CI4Taseをコードする遺伝子を全推定オープンリーディングフレーム(ORF)から検索し,Agreiasp.D1110のORF9038をAgCI4Tase,M.trichothecenolyticumD2006のORF5328をMtCI4Taseの遺伝子候補として見出した.2遺伝子をそれぞれ発現させた大腸菌無細胞抽出液は,デキストランからCI4を生成し,2遺伝子がCI4Taseをコードすることが示された.2種CI4Tase間のアミノ酸配列の一致率は71%,CITase-T-3040,CITase-U-155およびCITase-598Kとの一致率は35%以下であった.Pfamを用いたドメイン検索では,AgCI4TaseとMtCI4Taseは,Glyco_hydro_66ドメイン(GH66ドメイン),GH66ドメインに挿入されたCarbohydrateBindingModuleFamily35ドメイン(CBM35)とC末端にCBM13ドメインを有することが示された.本ドメイン構成はCITaseと類似するが,CITaseではC末端ドメインもCBM35であり,C末端領域が異なる.CI4Taseのアミノ酸配列には次の特徴が見られた.1)CITaseの一般酸/塩基触媒残基と求核性触媒残基が両CI4Taseで保存されていた.AgCI4Taseの二つの推定触媒残基をAla置換したところ,一重・二重変異酵素いずれもCI4生成活性を消失し,両残基は活性に必須であった.2)CITase-T-3040において環化反応に重要なMetが両CI4TaseではLeuに置換されていた.当該Leu残基をMetに置換したAgCI4Tase(L291M)は,CI4生成活性を保持し,他の環状糖を生成しなかった.当該Leu残基はCI4Taseの環化反応と生成物の重合度に単独では影響しないことが示された.3)CITaseと比較し,CI4Taseに特徴的な挿入配列・欠損配列が見られた.4)CITase-T-3040のサブサイト形成に関与する残基について,サブサイト−1から−4までは概ね両CI4Taseにおいても保存されていたが,サブサイト−5から−8は保存されていなかった.これらのアミノ残基・配列がCI4特異的な生成に関与することが示唆された.

CI4生産菌2株のci4tase遺伝子は,菌体内oligo-1,6-glucosidase,菌体内GH66様タンパク質,ABCtransporter,菌体外solute-bindingproteinをコードすると推定される遺伝子と遺伝子クラスターを形成し,遺伝子クラスターの上流にプロモーター,下流にターミネーターが存在した.ci4tase遺伝子と本遺伝子クラスター内の遺伝子はポリシストロニックに転写され,CI4生成と分解に関与すると考えられた.組換え発現したGH66様タンパク質はCI4を加水分解しイソマルトテトラオースを生成した.本酵素をcycloisomaltotetraosehydrolase(CI4Hase)と命名した.組換え発現したoligo-1,6-glucosidaseは,イソマルトテトラオースからグルコースを生成した.以上から,CI4生産菌2株におけるデキストラン代謝機構モデルを提案した.すなわち,1)菌体外でCI4TaseによりデキストランからCI4を生成,2)solute-bindingproteinでCI4を捕捉,ABCtransporterを介し菌体内にCI4を取り込み,3)菌体内でCI4HaseがCI4を加水分解,4)生成したイソマルトテトラオースをoligo-1,6-glucosidaseがグルコースにまで加水分解,5)生成したグルコースを資化する.両株は,炭素源を独占するために本代謝系を保有していると考えられる.

AgCI4Tase,MtCI4Tase,Agreiasp.D1110由来CI4Hase,M.trichothecenolyticumD2006由来推定CI4Haseのアミノ酸配列をクエリ配列としてBLASTP検索したところ,Microbacteriaceae科の微生物がこれらのホモログを有することが示された.Microbacteriumsp.YMB-B2,Leifsoniasp.ZF2019においては,CI4Tase,CI4Hase,oligo-1,6-glucosidaseのホモログと推定される酵素の遺伝子と,ABCtransporterとsolute-bindingproteinとアノテーションされるタンパク質の遺伝子が,遺伝子クラスターを形成していた.Microbacteriaceae科の他の微生物もCI4生成-代謝系を有している可能性が示唆された.

第5章総括
本論文ではデキストランに作用する新規酵素CI4Taseを発見し,CI4Taseにより生成される新規環状四糖CI4を得た.CI4Tase生産菌のドラフトゲノム解析により,CI4中のα-(1→6)-結合を加水分解する新規酵素CI4Haseを見出した.両酵素の発見は,澱粉関連酵素のように多様なデキストラン関連酵素が自然界にまだ存在することを示唆している.本成果は,デキストランを原料とした糖質生産技術の拡大に繋がると考えられる.

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る