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書き出し

水圏生物の脂肪酸代謝に関する研究

丹生谷, 颯人 NYUNOYA, Hayato ニュウノヤ, ハヤト 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

水圏生物の脂肪酸代謝に関する研究
丹生谷, 颯人

https://hdl.handle.net/2324/6787677
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(農学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)







丹生谷

論文題名



水圏生物の脂肪酸代謝に関する研究









颯人















ドコサヘキサエン酸 (DHA, 22:6n-3) やエイコサペンタエン酸 (EPA, 20:5n-3) をはじめとする
n-3 系高度不飽和脂肪酸 (n-3 PUFA) は主として海産魚の魚油から精製されているが、海産魚の正
常な発達には n-3 PUFA の供給が不可欠である。これは、海洋には EPA 生産菌や DHA を生産する
ラビリンチュラ類等の n-3 PUFA 生産者が豊富であり、海産魚が生合成する必要がないためだと考
えられている。脊椎動物はαリノレン酸 (ALA, 18:3n-3) から脂肪酸不飽和化酵素 Fads と鎖長伸
長酵素 Elovl により EPA や DHA を生合成する。哺乳類では Fads1 と Fads2 がそれぞれ∆5 不飽和
化と∆6 不飽和化を担っているが、多くの真骨魚類は進化の過程で Fads1 を失っている。現在まで
に出芽酵母を用いた異種発現実験により、∆5 あるいは∆4 不飽和化能を獲得した Fads2 が草食性魚
類を中心に報告されている。本研究では、魚類細胞株が持つ n-3 PUFA 生合成能力と n-3 PUFA が
魚類細胞の生理機能において担う役割を、細胞レベルで明らかにすることを目的とした。
まず、海産魚であるマダイが∆5 不飽和化能を持たないために DHA や EPA を生合成できないこ
とを検証するために、マダイの fads2 をクローニングし、不飽和化活性を同定した。マダイ Fads2
のアミノ酸配列は∆6 不飽和化酵素であることが報告されている既知のタイ科 Fads2 と近い配列を
有していた。出芽酵母を用いた異種発現実験により不飽和化活性を解析した結果、マダイ Fads2 は
∆6/∆8 不飽和化酵素であり、∆5 不飽和化能を持たないことが分かった。
次に、海産魚の DHA 生合成能を細胞レベルで明らかにするために、マダイとヒラメ、トラフグ、
淡水魚としてゼブラフィッシュとギンブナ由来の細胞株を使用した。重水素標識されたαリノレン
酸 (ALA, 18:3n-3) から代謝された n-3 PUFA を液体クロマトグラフィー質量分析計 (LC-ESI
MS/MS) を用いて解析した結果、淡水魚であるゼブラフィッシュ細胞とギンブナ細胞は前駆脂肪酸
から DHA を生合成した。一方、海水魚であるマダイ細胞とヒラメ細胞ではエイコサテトラエン酸
(ETA, 20:4n-3) まで生合成したものの、DHA と EPA は検出されなかった。また、トラフグ細胞で
は ALA は全く変換されなかった。既知の遺伝子情報と照らし合わせると、これらの海水魚は∆5 不
飽和化あるいは∆6/∆5 不飽和化の両活性を失ったために DHA や EPA を ALA から生合成できない
ことが示唆された。
高等動物において PUFA は細胞膜リン脂質を構成する重要な物質である。変温動物である魚類に
おいて n-3 PUFA が担う生理機能を明らかにするために、魚類細胞を低温環境で培養し、リゾホス
ファチジルコリン (LPC) とホスファジルコリン (PC) 、ホスファチジルエタノールアミン (PE)
を LC-MS/MS により解析した。興味深いことに、いずれの魚類細胞でも不飽和度の高い PC や PE
の分子種の存在比が低温条件で増加しており、リン脂質への PUFA の挿入が促進されていた。トラ
フグ細胞の RNA-seq の結果、魚類細胞は培地中の PUFA を積極的に取り込んで脂質生合成に利用
することでリン脂質中の脂肪酸不飽和度を高めていることが示唆された。
最後に、海洋における DHA 生産者であり、水産業における PUFA の供給源として期待されてい
る海洋性真核単細胞生物ラビリンチュラ類 Aurantiochytrium limacnum の脂質代謝に関わる新規
遺伝子を探索した。薬剤耐性遺伝子を用いたランダム遺伝子スクリーニング法を開発し、ミトコン

ドリアの脂肪酸β酸化と分岐鎖アミノ酸分解に不可欠な電子伝達フラボタンパク質ユビキノン酸化
還元酵素 (ETFQO) を欠損した A. limacinum M17 株を取得した。M17 株は細胞内に蓄積した脂

肪酸をエネルギー源として利用できず、正常な脂肪酸資化機構が A. limacinum の糖飢餓環境下の
生存に重要であることが示された。
本研究で開発した n-3 PUFA 生合成能解析手法により魚種が持つ PUFA 生合成能を簡便に定量す
ることが可能となった。細胞膜リン脂質中の PUFA は魚類細胞の低温環境適応に重要であり、細胞
外 PUFA の積極的な取り込みが迅速な低温環境適応に貢献していることが示唆された。PUFA 生産
者である A.limacinum では正常な脂肪酸資化機構が脂質源の利用と生存に重要であり、本研究によ
り海洋生態系における PUFA の生産者と消費者が持つ脂質代謝の健全性が海洋 PUFA の循環に重
要であることが示された。

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