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大学・研究所にある論文を検索できる 「ラビリンチュラ類におけるステロール糖脂質の代謝と生理機能に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ラビリンチュラ類におけるステロール糖脂質の代謝と生理機能に関する研究

遠藤, 郁実 ENDO, Ikumi エンドウ, イクミ 九州大学

2021.09.24

概要

ラビリンチュラ類は海洋性の真核単細胞微生物で、グルコースなどの炭素源を高度不飽和脂肪酸 (PUFA) や PUFA 含有グリセロ脂質に効率よく変換し、細胞内に高度に蓄積するので、PUFA などの有用脂質の生産源として産業的な利用価値が見出されている。ラビリンチュラ類のグリセロ脂質代謝に関する知見は蓄積されてきたが、非グリセロ型脂質であるステロールやそれを含有するステロール糖脂質に関する知見はほとんどない。本研究では、ラビリンチュラ類の一種である Aurantiochytrium limacinum mh0186 のステロール糖脂質の構造、代謝およびその生理機能の解明を目指した。

まず、mh0186 株に見出した主要な二種類の糖脂質 (GL-A, GL-B) を精製し、薄層クロマトグラ フィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析、核磁気共鳴等を用いて構造解析した結果、GL-A 及 び GL-B はともに、 ステリル-β- グルコシド (β-SG) であり、 その精密構造はそれぞれ 3-O-β-D-glucopyranosyl-stigmasta-5,7,22-trine (GL-A)、3-O-β-D-glucopyranosyl-4α-methyl-stigmasta-7,22-diene (GL-B) であることを明らかにした。また、 GL-B はアグリコン部位としてステロール合成の中間体と考えられている C4 メチルステロール (C4MS) を持つ、新奇構造を示した。

次に、mh0186 株における β-SG の代謝経路を解析した。β-SG の合成酵素としては、UDP-glucose: sterol glucosyltransferase (SGT) が幅広い生物で知られている。そこで、A. limacinum のゲノムデータベースから SGT のホモログを探索し、複数の候補配列を得たので出芽酵母を用いて発現解析したところ、2 つの配列 (AlSGT-1, AlSGT-2) に SGT 活性を見出した。分子系統樹解析の結果、両酵素は既存の UDP-glycosyltransferase (UGT) グループには属さないことが判明し、UGT 命名委員会から UGT64A1 (AlSGT-1) および UGT65A1 (AlSGT-2) という登録番号が与えられた。興味深いことに、AlSGT-2 は、C4MS に対する高いグルコース転移活性を示したことから、GL-B 生合成の責任酵素である可能性が示唆された。一方、β-SG 分解酵素として真菌類に幅広く存在するEndoglycoceramidase-related Protein 2/Sterylglucosidase 1 (EGCrP2/SGH1) のホモログを A. limacinum のゲノムデータベース上で検索したところ、候補配列として、AlSGH1 を見出した。そこで、AlSGH1 を出芽酵母により発現させ、活性を測定したところ、β-SG の分解活性を検出した。以上の結果は、A. limacinum が他生物と同様の SG 代謝経路を有することを示している。

続いて、alsgt-1 及び alsgt-2 遺伝子の欠損株及び変異復帰株の作製により、mh0186 株におけるこれら遺伝子の機能を解析した。まず、alsgt-1 及び alsgt-2 遺伝子の単独或いは二重欠損株 (Δalsgt-1, Δalsgt-2, Δalsgt-1/Δalsgt-2 ; DKO) の脂質組成を解析した。その結果、Δalsgt-1 株のβ-SG量は変化しなかったが、Δalsgt-2 株と DKO 株においては GL-B の消失およびそれに伴う C4MS の増加が観察された。また、Δalsgt-2 株において alsgt-2 を発現させた変異復帰株では、GL-B の回復と C4MS の低下が観察された。これらの結果は、AlSGT-2 が GL-B 合成の責任酵素であることを示している。

最後に、本酵素の生理機能を解析した。ステロール生合成関連酵素は活性発現に分子状酸素を要求するものが多いので、異なる通気条件下で培養した mh0186 株の SG を分析した結果、酸素濃度が低下すると GL-B 量が増加することが分かった。この結果は、低酸素条件下ではステロール生合成系の停滞によって増加した C4MS が AlSGT-2 によって GL-B に変換されることを示している。つまり、C4MS の蓄積が細胞に負荷を与えることは十分推測されるので、AlSGT-2 は細胞内のステロール量と共にその合成中間体の量も適切に調節する生理機能を有することが示唆された。

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