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大学・研究所にある論文を検索できる 「雄マウス生殖細胞発生過程におけるエピゲノムダイナミクス」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

雄マウス生殖細胞発生過程におけるエピゲノムダイナミクス

川瀬, 雅貴 名古屋大学

2023.05.25

概要

報告番号



















雄マウス生殖細胞発生過程における
論文題目




エピゲノムダイナミクス
川瀬 雅貴

論 文 内 容 の 要 旨
哺乳類において,生殖細胞は生命の設計図であるゲノム情報を親から次世代に伝え
ることのできる唯一の細胞である.この点で,一代限りで役目を終える体細胞と異な
り,生殖細胞は生物種の存続と進化において非常に重要な役割を担っている.生殖細
胞はその発生過程で減数分裂や相同染色体組換え,エピゲノムの変遷などを経験する
が,これらのイベントにより細胞形質の変化やゲノム情報の再構成,クロマチン構造
の変化が起きる.これらの生殖細胞の発生に必須なイベントの中で,生殖細胞がどの
ようにゲノムやエピゲノムの情報を管理しているのかは十分に分かっていない.ゲノ
ム情報を変化させる要因として,ゲノム中を転移するレトロトランスポゾンが知られ
て い る . こ の 転 移 は , レ ト ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン か ら 転 写 さ れ た RNA が , レ ト ロ ト ラ ン
スポゾンにコードされている酵素によって逆転写されることで起こる.一方,細胞は
エピジェネティック制御機構を利用して, レトロトランスポゾンの転移を抑制してい
る . こ の 制 御 機 構 に は DNA の メ チ ル 化 や ヒ ス ト ン H3K9 メ チ ル 化 な ど の ク ロ マ チ ン
の 化 学 修 飾 や ,生 殖 細 胞 特 異 的 な small RNA で あ る piRNA が 働 く 機 構 が あ る .体 細
胞 で は ,DNA メ チ ル 化 や H3K9me3 な ど の 安 定 し た エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク 修 飾 に よ っ て
レトロトランスポゾンが転写抑制されている が,生殖細胞においてはゲノム全領域に
わ た っ て DNA が 脱 メ チ ル 化 さ れ る な ど , エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク 修 飾 量 が ダ イ ナ ミ ッ ク
に増減する.生殖細胞の発生過程における抑制性エピジェネティック制御機構の役割
とその特徴の一端を解き明かすために,本研究では哺乳類のモデル生物としてマウス
を 使 い , 第 2 章 で 雄 性 生 殖 細 胞 発 生 過 程 に お け る piRNA ク ラ ス タ ー と レ ト ロ ト ラ ン
ス ポ ゾ ン 由 来 の piRNA の 発 現 の ダ イ ナ ミ ク ス を , 第 3 章 で 精 母 細 胞 に お け る H3K9
メ チ ル 化 酵 素 SETDB1 と H3K9me3 の 転 写 制 御 に お け る 役 割 と ク ロ マ チ ン 構 造 制 御 の
可能性について明らかにした.
第 2 章では生殖細胞の5つの発生ステージ,すなわち,前駆精原細胞,精原細胞,

レプトテン・ザイゴテン期精母細胞,パキテン・ディプロテン期精母細胞,円形精子
細 胞 で 発 現 す る piRNA を 大 規 模 解 析 し た . そ の 結 果 , 各 発 生 ス テ ー ジ に お い て 特 徴
的 な 長 さ を 持 つ piRNA が 現 れ る こ と を 明 ら か に し ,新 た な piRNA 区 分 と し て ,PSG
piRNA, early piRNA, late piRNA の 名 称 を 提 案 し た . ま た piRNA ク ラ ス タ ー ご と
に 解 析 を 行 い , piRNA 長 は 発 現 し て い る PIWI タ ン パ ク 質 と 由 来 と な る piRNA ク ラ
スターによって決まる可能性を示した.さらに同じレプトテン・ザイゴテン期精母細
胞であっても,ファーストウェーブのものとそれ以降のものでは異なる特徴を持つ
piRNA が 産 生 さ れ て い る こ と を 明 ら か に し た . そ し て 前 駆 精 原 細 胞 の piRNA は レ ト
ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン 由 来 , 特 に 若 い レ ト ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン 由 来 の piRNA が 多 く , こ の
時 期 の 大 規 模 な DNA 脱 メ チ ル 化・転 写 脱 抑 制 を 補 完 す る よ う に piRNA が 作 ら れ て い
ることを示した.
第 3 章 で は H3K9 の ト リ メ チ ル 化 酵 素 SETDB1 の 遺 伝 子 を 欠 損 さ せ た 雄 マ ウ ス を
使 い ,レ プ ト テ ン・ザ イ ゴ テ ン 期 精 母 細 胞 に お け る 転 写 量 , H3K9me3 量 ,DNA メ チ
ル 化 率 ,そ し て オ ー プ ン ク ロ マ チ ン 領 域 に 関 し て 解 析 を お こ な っ た .Setdb1 欠 損 で は
性 染 色 体 上 遺 伝 子 が 特 に 発 現 上 昇 し て お り , ま た H3K9me3 量 も 低 下 し て い る こ と が
明 ら か に な っ た .ま た MMERVK10C な ど ERVK フ ァ ミ リ ー に 属 す る い く つ か の レ ト
ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン が H3K9me3 量 の 低 下 と 共 に 転 写 上 昇 し て い る こ と が 分 か っ た .
DNA メ チ ル 化 不 全 と な る Dnmt3l 欠 損 細 胞 と 比 較 し た と こ ろ , 精 母 細 胞 で は , L1 フ
ァ ミ リ ー を 含 む 多 く の レ ト ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン は 主 に DNA メ チ ル 化 に よ る 抑 制 を 受 け
て い る 一 方 ,MMERVK10C や RLTR10C は DNA メ チ ル 化 と H3K9me3 の そ れ ぞ れ の
抑 制 を 受 け て い る こ と を 明 ら か に し た . さ ら に Setdb1 欠 損 に よ っ て 新 た に で き た オ
ー プ ン ク ロ マ チ ン 領 域 に は ,ク ロ マ チ ン 構 造 の 形 成 に 関 わ る CTCF タ ン パ ク 質 の 結 合
配列が多く含まれていることを明らかにした.このことは染色体構造がダイナミック
に 変 化 す る 減 数 分 裂 期 の 細 胞 に お い て ,SETDB1 が 正 し い 染 色 体 構 造 の 形 成 に 関 わ る
可能性を示唆する.
以 上 の よ う に , 2 つ の 研 究 を 通 し て , DNA メ チ ル 化 , H3K9me3, piRNA の 3 つ
のエピジェネティック制御機構が補完し合いながらレトロトランスポゾンの抑制に働
くことが示された.また,これらの制御機構はレトロトランスポゾン抑制だけではな
く,各発生ステージの生殖細胞での特徴的なクロマチン構造の構築に深く関わってお
り,生殖細胞の発生過程に必須であることが明らかとなった。

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