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大学・研究所にある論文を検索できる 「筋分化過程における糖脂質構造変化の発見とその分子機構の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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筋分化過程における糖脂質構造変化の発見とその分子機構の解明

郷, 詩織 Go, Shiori 名古屋大学

2020.04.02

概要

スフィンゴ糖脂質(以下、糖脂質)は糖鎖を持つ細胞膜構成脂質であり、脊椎動物の細胞膜外表面に糖鎖を突き出す形で存在している。この特徴によって、糖脂質は膜流動性を変化させるだけでなく、様々な受容体との相互作用を介して種々の細胞機能の制御を可能にしている。特に酸性糖のシアル酸を末端に持つ糖脂質、ガングリオシドは細胞膜上で集積してラフトと呼ばれる膜ドメインを形成することが知られており、現在までに脂肪細胞上に過剰に発現したガングリオシド GM3 がインスリン抵抗性を惹起することや、ガングリオシド GM1 が脳神経細胞上でアミロイドβタンパク質を集積してアルツハイマー病の発症を誘発することが示されている。このように糖脂質は、単なる膜の成分であるだけでなく、単純な遺伝子やタンパク質の発現による機能制御とは異なり、緻密かつ多様な相互作用に依拠する制御を可能にしている。これまで糖脂質の機能解析においては、専ら糖鎖部分の構造の違いが注目されてきた。しかし近年、同じ糖配列をもつ糖脂質であっても、疎水性部分であるセラミドの構造の違い( セラミド分子種) により、その役割が大きく異なることに注目が集まってきている。 一方で、糖鎖部分の微細構造の違いとしてシアル酸残基の分子種の違いに着目した研究は殆どなされていない。ガングリオシドの糖鎖末端に存在するシアル酸は、哺乳類では大きく分けて N-acetylneuraminic acid (Neu5Ac) と N-glycolylneuraminic acid (Neu5Gc)が存在する。どちらの分子種もほぼ全ての脊椎動物細胞で発現しているが、ヒトを含む数少ない動物種では Neu5Gc を合成する酵素、CMP-Neu5Ac hydroxylase (CMAH) がその遺伝子変異のために欠失しており、 Neu5Gc は殆ど検出されない。 Neu5Gc の欠損によっても、生命維持には何ら問題ないことから、正常細胞における Neu5Gc の存在意義はほとんど解明されておらず、とりわけ、糖脂質上の Neu5Gc の役割については、現在まで解析すら行われていなかった。しかし、ごく最近の研究において、私はこのような状況を一変させる現象を発見するに至った。すなわち、マウスサテライト由来筋芽細胞モデルの C2C12 細胞を用いた実験で、筋分化に伴い主要な GM3 上のシアル酸分子種が、Neu5Ac から Neu5Gc へと変化し、更にセラミドアシル鎖分子種が C24 から C16 へと変化することを発見した。そこで本研究では、筋分化過程における糖脂質の役割をシアル酸部分とセラミドのアシル鎖部分の構造に着目して解明することを目的として、筋芽細胞 C2C12 を用いて、(1)糖脂質の微細構造を制御機構の解明、(2)糖脂質の微細構造による細胞分子メカニズムの変動を明らかにすることを主要な目的とし、[セラミド分子種]と[シアル酸分子種]の二つの分子に分けて解析を行ってきた。

セラミドは ER に局在するセラミド合成酵素 ( 以下 CerS) によって dihydrosphingoshin と Acyl-CoA と基質として生合成される事が明らかにされており、現在哺乳動物において6 つのサブタイプが特定されている。これらのサブタイプはそれぞれ異なる長さの Acyl-CoA を優先的に利用する事が知られており、C24 は主に CerS2 が、C16 や C18 は CerS5 や CerS6 が生合成する事が明らかにされている。筋分化における C24 の減少は、CerS2 は分化と共に急激に減少し、その結果 C24 の発現割合が低下することが示された。またその過程で、CerS6-var1 の発見に至った。 CerS は ER に存在する7回膜貫通型酵素と予測されており、この CerS6-var1 は CerS6-wt の C 末端側細胞質側に8アミノ酸挿入された構造をしている。CerS6-var1の発現特異性についてマウスの臓器から得た cDNA を用いて解析を行った結果、脳と心臓、そして発達・分化過程での骨格筋細胞のみで発現が認められた。またそれらの遺伝子を導入した c2c12 細胞を用いて解析を行ったところ、CerS6-wt と同程度の細胞増殖抑制作用を持ち、一方で CerS6-wt が細胞遊走性を抑制するのに対し、CerS6- var1 は細胞遊走性を促進させる作用を持つ事が明らかになった。

筋分化に伴う Neu5Gc 発現は CMAH による de novo 経路で合成されている事を明らかにした。Neu5Gc-GM3 は、細胞染色の結果から、形成された Myotube 上ではなく、その周囲に取り巻く単核の細胞でのみ観察された。更に CMAH を強制発現させた C2C12 細胞を用いた解析から、CMAH を発現させた細胞は接着、伸展が非常に速やかに行われるという結果から、Neu5Gc の発現が Myoblast の接着に非常に重要な役割を担っていることも示された。細胞の接着はα -ジストログリカンの異常から筋ジストロフィーが引き起こされることからも知られるとおり、筋の再生にとって非常に重要な機能である。更に筋ジストロフィーモデルマウスであるサルコグリカン欠損マウスは、通常ヒトの病態よりも軽度の症状である事が示されているが、ヒトと同様に CMAH を変異させ、Neu5Gc を合成できない sgca-/-/cmah-/-マウスでは、ヒトと同様に重症になることが明らかにされており、これらの結果も Neu5Gc が筋の分化・再生に重要である事を支持している。

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