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大学・研究所にある論文を検索できる 「X連鎖性好中球減少症(XLN)の病態に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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X連鎖性好中球減少症(XLN)の病態に関する研究

池田, 昌弘 東京大学 DOI:10.15083/0002006992

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名池田

昌弘

本研究では、X 連鎖性好中球減少症(XLN)における機能獲得型変異 WASp の病態形成
の機序を明らかにすることを目的とした。当研究室で新規に発見された WASp 変異
(WASp-I290T)を基にした、in vitro および in vivo のモデルを用いることで、XLN の
病態解析を試みたものであり、下記の結果を得ている。

In vitro モデルを用いた解析結果を以下に記す。
1.

HEK293 細胞に 2 つの異なる色素分子(SECFP、mVenus)を両端に持つ、SECFPWASp-mVenus 融合タンパク発現プラスミドを導入することで、蛍光共鳴エネルギー
移動(FRET)現象を用いた WASp の構造解析を行った。WASp-I290T を導入した
HEK293 細胞では FRET 現象を介した mVenus の発現が低下しており、WASpI290T は開いた構造にある(活性化している)ことが示された。

2.

内在性 WASp をノックアウトした NB4 細胞にレンチウイルスを用いて WASp-WT も
しくは WASp-I290T を導入し、レチノイン酸処理を行うことで好中球へ分化誘導した
際の増殖能の比較を行った。WASp-I290T を導入した NB4 細胞において、分化誘導
前は WT と同等の増殖を示したが、分化誘導後は有意に増殖が低下したことから、
WASp-I290T は好中球分化後の増殖を阻害することが示唆された。

In vivo モデルを用いた解析結果を以下に記す。
1.

ヒト WASp-I290T に相当する変異であるマウス WASp-I292T を CRISPR/Cas9 法を
用いてマウス胚性幹細胞に導入し、ノックインマウスを作成した。WASp-I292T マウ
スでは末梢血好中球減少は認めなかったが、骨髄や脾臓で好中球造血が亢進していた
ことから、好中球分化における異常や末梢への遊走能異常が示唆された。

2.

各種走化性因子を用いた好中球のトランスウェルアッセイでは、WASp-I292T マウス
において、有意な遊走能の低下を認めた。同様に、マウスに G-CSF を皮下注射する
ことで好中球の末梢への動員能を比較した検討においても、WASp-I292T マウスで有
意な好中球動員不全を認めた。以上から骨髄や脾臓で好中球造血が亢進しているにも
かかわらず末梢で好中球増加を認めない一因として遊走能障害が示唆された。

3.

前駆細胞分画、好中球に関して遺伝子発現解析を行った。顆粒球・マクロファージ前
駆細胞(GMP:granulocyte-macrophage progenitor)に対して RNA シークエンス
を行った結果、WASp-I292T マウスではパスウェイ解析で NF-κB 経路や TP53 経路
の発現低下を認めた。一方、NF-kB1/RelA や TP53 自身の発現量は低下しておらず、

NF-κB や TP53 の核内移行が低下している可能性が考えられた。定量 RT-PCR では
WASp-I292T マウスの骨髄好中球で NF-κB の標的遺伝子である抗アポトーシスタン
パクの A20/TNFAIP3 の発現低下を認めた。以上から成熟好中球では NF-κB の機能
低下によってアポトーシスが亢進している可能性が考えられた。
以上、本論文は WASp-I290T が機能獲得型変異を有していることを明らかにした。また
WASp-I292T ノックインマウスにおいて、骨髄や脾臓での好中球造血亢進・好中球遊走能
障害・NF-κB 経路や TP53 経路への変異 WASp の関与を明らかにした。以上の内容に関
する過去の報告はなく、これまで未知に等しかった機能獲得型変異 WASp が XLN の病態
を形成する機序の解明に重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士( 医

学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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