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書き出し

M理論の非摂動効果とフェルミ気体

奥山, 和美 信州大学

2021.03.01

概要

4版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 14 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 基盤研究(C)(一般)
研究期間: 2016 ∼ 2018
課題番号: 16K05316
研究課題名(和文)M理論の非摂動効果とフェルミ気体

研究課題名(英文)Nonperturbative effects in M-theory and Fermi gas

研究代表者
奥山 和美(Okuyama, Kazumi)
信州大学・学術研究院理学系・准教授

研究者番号:70447720
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

2,700,000 円

研究成果の概要(和文):M理論および超弦理論の非摂動効果について主にフェルミ気体の手法を用いて解析し
た。M理論に現れるM2ブレーンと呼ばれる膜状の物体を記述する3次元チャーンサイモンズ理論(ABJM理論)の分
配関数の解析で開発されたフェルミ気体の手法を超対称性が低い3次元理論の場合にも適用し非摂動効果を調べ
行列模型の1/N展開との比較を行った。
また、4次元N=4超対称ゲージ理論の反対称表現のウィルソンループに対してもフェルミ気体の手法を適用し強
結合での展開を系統的に計算した。
更に、2次元ゲージ理論の1/N展開を高次まで計算し、先行研究で予想されていたベビー宇宙の生成が起こらな
いという結果を得た。
研究成果の学術的意義や社会的意義
M理論は素粒子間の相互作用と重力を量子論的に矛盾なく統合する現在知られている唯一の枠組みであり、その
物理的および数理的な構造を明らかにすることはこの宇宙の成り立ちや宇宙の進化の歴史を理解する上で極めて
重要な問題である。特に半古典的な重力理論や摂動的な計算を超えた強結合領域での非摂動的な計算手法の開発
は、宇宙初期や強い重力場での量子的な時空構造を解明するために不可欠である。本研究では、非摂動効果の解
析におけるフェルミ気体の手法の汎用性に注目していくつかの具体例について計算を実行し、量子的な時空描像
の一端を明らかにすることができた。
研究成果の概要(英文):I analyzed non-perturbative effects in M-theory and string theory using
mainly the Fermi gas approach. I have applied the Fermi gas method, developed originally for the 3d
Chern-Simons theory (ABJM theory) describing M2-branes, to 3d theories with lower supersymmetries
and compared with the results of 1/N expansion of matrix models.
I have also computed the strong coupling expansion of anti-symmetric Wilson loops in 4d N=4 gauge
theory using the Fermi gas approach.
Then I computed the genus expansion of 2d Yang-Mills theory up to very high order and obtained the
evidence that the creation of baby universes advocated in the literature does not occur.

研究分野: 素粒子理論
キーワード: フェルミ気体 M理論 非摂動 1/N展開 リサージェンス 行列模型



式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)

1.研究開始当初の背景
M 理論は超弦理論の強結合での振る舞いを記述する理論として導入されたものである。弦の結
合定数が大きくなると非摂動的な効果が重要になってくるが、そのような効果を系統的に計算
する手法はこれまで知られていなかった。しかし、M 理論に現れる M2 ブレーンを記述する
ABJM 理論と呼ばれる3次元チャーンサイモンズ理論に関しては、厳密な分配関数の計算から
双対な時空上の非摂動効果を系統的に計算することが可能になってきた。そこでは、分配関数の
母関数がフェルミ気体の系と見なせるという事実が重要な役割を果たした。このフェルミ気体
の描像を用いて、M2 ブレーンがサイクルに巻き付いたインスタントンに起因する非摂動効果を
比較的容易に計算することが可能となった。更に、このフェルミ気体の構造は ABJM 理論に限
らず広く位相的弦理論の非摂動効果の背後にあることがわかってきた。このような状況を踏ま
えて、より一般にフェルミ気体と M 理論の非摂動効果の関係、超弦理論のほかの非摂動効果に
フェルミ気体の手法を応用する可能性、などを研究することが課題として浮かび上がってきた。
2.研究の目的
本研究の目的は、M 理論および超弦理論の非摂動効果を系統的に計算する手法、特にフェルミ
気体の手法の ABJM 理論以外への適用の可能性を探ることである。このような手法を開発する
ことにより、超弦理論の強結合領域での振る舞いや、重力の量子論にまつわる概念的な問題に対
して、具体的な計算により定量的な議論が可能となる。この研究は位相的弦理論や行列模型のラ
ージ N 展開に対する非摂動効果とも密接に関係しており、AdS/CFT 対応を通じて量子的な時空
の構造を知る手がかりになると期待される。
3.研究の方法
まず、ABJM 理論の分配関数の解析の素朴な拡張として、低い超対称性を持つ3次元理論の分
配関数やウィルソンループをフェルミ気体の手法を用いて解析する。有限の N での厳密値とフ
ェルミ気体のグランドポテンシャルの半古典展開を組み合わせることにより非摂動的なインス
タントン補正をインスタントン数が小さいところから順次決定していく。
次に、ABJM 理論以外にフェルミ気体の手法が適用できる例として、N=4 超対称ゲージ理論の
反対称表現のウィルソンループのラージ N 展開を調べる。AdS/CFT 対応により反対称表現のウ
ィルソンループは4次元球面に巻き付いた D5 ブレーンに対応しており、この解析から強結合領
域での D5 ブレーンの振る舞いを定量的に調べることができる。
更に、ラージ N 展開の漸近的な振る舞いと非摂動的な補正との関係を与えるリサージェンスの
構造を用いることにより、ゲージ理論に双対な時空の量子重力的な効果について解析を行う。
4.研究成果
ABJM 理論で発展してきたフェルミ気体の手法を超対称性が低い状況にも適用することにより、
3次元ゲージ理論のウィルソンループのラージ N 展開に対する非摂動補正を計算した(文献⑧、
⑨)。ABJM 理論の 1/6BPS ウィルソンループについては、先行論文の摂動部分の計算の誤りを指
摘し、非摂動部分に分配関数と同様の NS 極限の自由エネルギーが現れることを発見した。しか
しその起源については明快な理解には至っていない。3 次元 N=4QCD のウィルソンループの期待
値については、フェルミ気体の計算と行列模型の計算を比較し、1/N 展開の最初の数項が一致す
ることを確かめた。
N=4 超対称ゲージ理論の反対称表現のウィルソンループにフェルミ気体の手法を適用し、トフ
ーフト結合定数についての強結合展開を系統的に計算する手法を開発した(文献⑩)
。この方法
で計算した展開が有限の N での厳密値の振る舞いを再現していることを確かめた。また、反対
称表現のウィルソンループの 1/N 展開を位相的漸化式を用いて高次まで計算し、トフーフト結
合定数が大きくなる極限で相転移があることを予想した(文献⑥)
。この相転移は行列模型のカ
ットの数が1から2に変化する転移と考えられ、時空の描像では時空に泡状の穴が生じる転移
であると考えられる。時空の解釈の詳細は今後の課題である。 N=4 超対称ゲージ理論のウィル
ソンループの一般の表現の厳密な表式は明示的に書くことが難しいため、反対称表現以外では
具体的な解析が困難であった。しかし、既約表現ではなくトレースの積の基底で書くと一般的な
ウィルソンループの期待値を具体的に書き下すことができることを発見した(文献③)
。この厳
密な結果は位相的漸化式から求めた 1/N 展開とも整合していることを確かめた。また、N=4 超
対称ゲージ理論の有限温度でのホーキング・ページ転移への応用を期待して、ユニタリ行列模型
のウィルソンループの期待値について厳密値と 1/N 展開の比較を行った(文献⑦)

有限の N で厳密に解けるゲージ理論の例として2次元ゲージ理論に着目し、その 1/N 展開に対
する非摂動的な補正を研究した(文献④、⑤)
。球面上の2次元ゲージ理論では位相的 θ 項がゼ
ロでない場合にインスタントンによって引き起こされる相転移があると予想されていたが、具
体的な計算によって確かめられたことはなかった。そこで分配関数の厳密な式を用いて θ 項が
ゼロでない場合の自由エネルギーの振る舞いを調べ、実際に相転移があることを数値的に確か
めた。また、トーラス上の2次元ゲージ理論の 1/N 展開を60次まで計算し、その漸近的な振
る舞いから非摂動補正をリサージェンスの関係を用いて読み取ったところ、先行研究で主張さ
れていたベビー宇宙の生成という描像とは相容れない結果が得られた。これは、ランダム平均を
取らない通常の場の理論では AdS/CFT 対応により双対な時空にはベビー宇宙の寄与が入らな

いという予想と合致している。この問題は時空のトポロジーの足し上げ規則と深く関係してお
り、さらなる研究が俟たれる。
ランダム平均を取る重力双対の例として SYK 模型が広く調べられているが、そこで現れるスペ
クトル形状因子のランプとプラトーと呼ばれる構造を理解するため、簡単化したガウス型行列
模型のスペクトル形状因子を詳しく調べた(文献 ①、②)
。ランプの傾きが線形ではないこと、
プラトーへの転移が固有値インスタントンによって引き起こされる一種の相転移であることを
示した。

5.主な発表論文等
〔雑誌論文〕
(計 10 件)
① Kazumi Okuyama, Eigenvalue instantons in the spectral form factor of random matrix
model, JHEP 1903, 147 (2019), 査読有
DOI:10.1007/JHEP03(2019)147
② Kazumi Okuyama, Spectral form factor and semi-circle law in the time direction,
JHEP 1902, 161 (2019), 査読有
DOI:10.1007/JHEP02(2019)161
③ Kazumi Okuyama, Connected correlator of 1/2 BPS Wilson loops in N=4 SYM, JHEP 1810,
037 (2018), 査読有
DOI:10.1007/JHEP10(2018)037
④ Kazumi Okuyama, Kazuhiro Sakai, Resurgence analysis of 2d Yang-Mills theory on a
torus, JHEP 1808, 065 (2018), 査読有
DOI:10.1007/JHEP08(2018)065
⑤ Kazumi Okuyama, Phase diagram of q-deformed Yang-Mills theory on S^2 at non-zero
θ-angle, JHEP 1804, 059 (2018), 査読有
DOI:10.1007/JHEP04(2018)059
⑥ Kazumi Okuyama, Phase Transition of Anti-Symmetric Wilson Loops in N=4 SYM, JHEP
1712, 125 (2017), 査読有
DOI:10.1007/JHEP12(2017)125
⑦ Kazumi Okuyama, Wilson loops in unitary matrix models at finite N, JHEP 1707, 030
(2017), 査読有
DOI:10.1007/JHEP07(2017)030
⑧ Kazumi Okuyama, Wilson loops in 3d N = 4 SQCD from Fermi gas, JHEP 1611, 156 (2016),
査読有
DOI:10.1007/JHEP11(2016)156
⑨ Kazumi Okuyama, Instanton Corrections of 1/6 BPS Wilson Loops in ABJM Theory, JHEP
1609, 125 (2016), 査読有
DOI:10.1007/JHEP09(2016)125


Masaatsu Horikoshi, Kazumi Okuyama, α’ correction of anti-symmetric Wilson loops
in N=4 SYM from Fermi gas, JHEP 1609, 125 (2016), 査読有
DOI:10.1007/JHEP09(2016)125
〔学会発表〕
(計 6 件)
① 2018 年 12 月, Kazumi Okuyama, Connected correlator of 1/2 BPS Wilson loops in N=4
SYM, KIAS Physics Seminar (韓国高等科学院)
② 2017 年 10 月, Kazumi Okuyama, Phase Transition of Anti-Symmetric Wilson Loops in
N=4 SYM, Workshop on Supersymmetric Localization and Holography (ミシガン大学)
③ 2017 年 3 月, Kazumi Okuyama, Wilson loops in unitary matrix model at finite N,

Progress in Quantum Field Theory and String Theory II (大阪市立大学)
④ 2017 年 1 月, Kazumi Okuyama, Quantization of local P^2, Frontiers in Mathematical
Physics (立教大学)
⑤ 2016 年 8 月, Kazumi Okuyama, ABJ(M) Wilson loops and open-closed duality, 超対称理
論の数理的理解の進展 (理化学研究所)
⑥ 2016 年 7 月, Kazumi Okuyama, ABJ(M) Wilson loops and open-closed duality, NCTS
Summer workshop on Strings and Quantum Field Theory (台湾清華大学)

〔その他〕
ホームページ等
http://azusa.shinshu-u.ac.jp/~kazumi

6.研究組織
(1)研究分担者
なし

(2)研究協力者
なし
※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等に
ついては、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属されます。 ...

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