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Artificial intelligence‑based diagnosis of upper gastrointestinal subepithelial lesions on endoscopic ultrasonography images

平井, 恵子 名古屋大学

2023.05.30

概要

主論文の要旨

Artificial intelligence‑based diagnosis of
upper gastrointestinal subepithelial lesions
on endoscopic ultrasonography images
超音波内視鏡における人工知能を用いた上部消化管上皮下腫瘍の
診断能の検討

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

消化器内科学分野

(指導:川嶋 啓揮
平井 恵子

教授)

【緒言】
超 音 波 内 視 鏡 (endoscopic ultrasonography; EUS) は 上 皮 下 腫 瘍 (subepithelial lesion;
SEL)の鑑別診断に有用だが、すべての病変に対して正確に鑑別を行うことは容易では
ない。gastrointestinal stromal tumor(GIST)は消化管 SEL の中で最多であり、malignant
potential を有するため、GIST と他の良性の SEL との鑑別は特に重要である。
EUS による SEL の鑑別診断の正診率は 45.5 – 66.7%と高くないため、EUS-guided fineneedle aspiration biopsy(EUS-FNAB)や粘膜切開生検などの組織採取法が推奨される。
既報では、EUS-FNAB の正診率は 62.0 – 93.4%と幅広く、2cm 未満の小病変では低い傾
向であり、粘膜切開生検の正診率は 85.2 – 94.3%であった。しかし、いずれの方法も侵
襲的で術者の技量を要するため、高精度で非侵襲的な診断法が望まれる。
一方、近年 deep learning を用いた人工知能(artificial intelligence; AI)は医療分野にお
いて目覚ましく発展している。EUS における AI を用いた SEL 診断の正診率は 79.2 –
90.0%と報告されている。しかし、既報では全 dataset の症例数は 300 例未満、参加施
設は単施設または 4 施設未満、鑑別は GIST と非 GIST の 2 分類のみと限られていた。
本研究は多施設の EUS 画像を用いて SEL を多クラスに分類する AI を構築し、その有
用性を検討することを目的とした。
【対象及び方法】
2005 年 1 月から 2020 年 12 月までに、当院および 11 参加施設で病理学的に診断さ
れた上部消化管 SEL(GIST、平滑筋腫、神経鞘腫、神経内分泌腫瘍、異所性膵)、およ
び病理学的診断はないが臨床・画像所見に基づいて異所性膵と診断された病変のうち、
EUS 画像が収集可能であった症例を対象とした。病理学的に診断された SEL の EUS
画像は症例数に基づきランダムに training、validation、test dataset に分割した。deep
learning の ア ル ゴ リ ズ ム は PyTorch を 用 い て EfficientNetV2-L を 元 に 構 築 し 、
ImageNet21k で学習済みのモデルの重みを用いて convolutional neural network 全層の
fine-tuning を行った。EUS 画像は病理結果に基づいてラベリングを行い、deep learning
アルゴリズムの入力サイズに合わせて 224×224 pixel の正方形にトリミングした。作
成した dataset は deep learning のアルゴリズムに学習させた。他の SEL よりデータの
少ない神経鞘腫と異所性膵の画像の学習過程にはそれぞれ deep convolutional generative
adversarial network(DCGAN)と非ラベル化データを利用した半教師あり学習を用いた。
training の効率化のため、Distributed-Data-Parallel、multi-node、multi-process、スーパー
コンピュータ「不老」を用いた。過学習防止のため、data augmentation として回転、水
平・垂直反転、random erasing、RandAugment を用いた。最適化アルゴリズムには SGD
with momentum を用い、学習パラメータはバッチサイズ 288、2,000 エポック、学習率
0.004 とし、cosine annealing により減衰した。training 後の AI は各 SEL の probability
score の合計が 1 となるように score を出力した。画像毎の診断は最高の probability
score を示す SEL、症例毎の診断は各症例における全画像の予測値の最頻値とした。ま
た、expert、non-expert の各 2 名が test dataset に含まれた各症例の全画像に基づいて症

-1-

例毎に診断した。
【結果】
病理学的に診断された SEL631 例 16,110 枚および病理学的診断のない異所性膵 33
例 3,179 枚の画像を収集した。その中の神経鞘腫 14 例 441 枚の画像からは DCGAN を
用いて 40,000 枚を自動作成し、3,000 枚を手動で抽出し、training data として用いた。
ランダムに抽出した SEL122 例 2,875 枚の画像を test dataset とした(Figure 1)。患者背
景について、training、validation、test dataset の間で年齢、性別、病変部位、病変径、
病理組織型、組織採取方法に有意差はなかった(Table 1)。
AI は出力画像において、病変を緑の四角でマーキングし、画像毎の診断の予測値、
probability score、症例毎の診断の予測値を表示した(Figure 2a、2b)。
AI の SEL の 5 分類( GIST、平滑筋腫、神経鞘腫、神経内分泌腫瘍、異所性膵 )に
おける正診率は 86.1%であり、全内視鏡医よりも有意に高かった(正診率 27.0–68.0%、
P < 0.001)(Table 2)。AI と expert ともにカテゴリー毎の感度は GIST で高く(AI 98.8%、
expert 63.5–77.6%)、神経鞘腫で低かった(AI 45.5%、expert 0%)。AI と expert ともに誤
診例では神経鞘腫を GIST と判断した症例が最も多かった。AI の GIST に対するカテ
ゴリー毎の感度は全内視鏡医より高かった(AI 98.8%、内視鏡医 25.9–77.6%)。
AI の GIST と非 GIST の鑑別における感度、特異度、正診率はそれぞれ 98.8%、67.6%、
89.3%であり、感度と正診率は全内視鏡医よりも有意に高かった(感度 25.9–77.6%、P
< 0.001、正診率 44.3–72.1%、P < 0.001)(Table 3)。AI の特異度は expert と比較して同
等以上であった(AI 67.6%、expert 56.8–67.6%)。Non-expert の特異度(75.7–86.5%)は AI
と expert より高かったが、感度(25.9–54.1%)と正診率(44.3–60.7%)は AI と expert より
低かった。
AI の GIST/神経鞘腫とその他の SEL の鑑別における感度、特異度、正診率はそれぞれ
100.0%、76.9%、95.1%であり、感度と正診率は全内視鏡医よりも有意に高く(感度 35.4–
84.4%、P < 0.001、正診率 42.6–82.8%、expert1 P = 0.003、その他内視鏡医 P < 0.001)、
特異度は expert(76.9%)と同等で non-expert(50.0–69.2%)より高かった(Table 4)。
【考察】
本研究では多施設、多機種の超音波内視鏡スコープ・装置から得られた SEL の EUS
画像を多クラスに分類する AI を構築した。AI の GIST と非 GIST の鑑別における正診
率 89.3%は、既報と比較し同等以上であった。AI の 5 分類における正診率は 86.0%を
示し、臨床応用の可能性が示唆された。
内視鏡医の SEL 鑑別の正診率は 5 分類、GIST と非 GIST の鑑別ともに既報と同等
であった。本研究では SEL の診断能は概して AI、expert、non-expert の順に高い結果
となり、AI は特に non-expert にとって有用と考えられた。
本研究ではいくつかの限界がある。第一に、真の病理診断と外科的または内視鏡的
切除を施行されなかった SEL の生検検体の病理診断、またはラベルなしデータとして

-2-

使用された異所性膵の画像診断は一致しない可能性がある。第二に、後ろ向きに収集
された静止画を対象としたため、選択バイアスの可能性がある。第三に、test dataset に
含まれる非 GIST の症例数は診断能の評価には不十分であった可能性がある。今後は
静止画と動画を用いた大規模多施設前向き研究により、リアルタイムでの AI の診断
能の検証や実臨床で使用可能な graphical user interface の開発が必要である。
【結論】
AI は上部消化管 SEL の EUS 画像診断において expert よりも高い診断能を示した。
AI は内視鏡医による SEL 診断の精度向上に寄与できる可能性がある。

-3-

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