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Endocytoscopy is useful for the diagnosis of superficial non-ampullary duodenal epithelial tumors

廣瀨, 崇 名古屋大学

2021.10.25

概要

【緒言】
 十二指腸癌は非常に稀な腫瘍だが、内視鏡技術の発展と内視鏡検査の普及により近年発見が増加している。十二指腸癌患者の予後改善には早期発見と治療が必要不可欠である。表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial nonampullary duodenal epithelial tumor, SNADET)は十二指腸腺腫または粘膜下層までに浸潤がとどまる十二指腸癌を含むが、生検診断の正診率は高くない。また、内視鏡による白色光診断や画像強調内視鏡(image enhanced endoscopy, IEE)診断の有用性が報告されているが、確立された診断基準はまだない。さらに、十二指腸病変に対する生検診断は粘膜下組織の線維化を引き起こし内視鏡治療を困難にする場合があるため、生検診断に頼らない診断法の確立が望まれている。
 超拡大内視鏡(endocytoscopy, ECS)は、その拡大能により生体内で生きた細胞を診断することが可能であり、内視鏡先端を対象粘膜に接触させることで病理組織像 (Figure.1)に類似した高倍率画像が得られる。拡大倍率は 520 倍まで可能で、さらに電子拡大機能を加える事で 936 倍まで拡大が可能である。消化管管腔内で染色が必要でるが、再現性のある高解像度の画像が得られる。ECS の有用性は 1980 年代に産婦人科領域で初めて報告され、喉頭、食道、胃、大腸領域でも報告されている。十二指腸領域では症例報告はあるものの、その有用性はあきらかでない。今研究の目的は十二指腸における ECS の有用性を検討し、SNADET に対する ECS の診断基準の作および正診率向上に寄与する因子の検討である。

【対象および方法】
対象
 2019 年 12 月から 2020 年 4 月に SNADETs に対して ECS による観察を行い、その後内視鏡的切除を行った連続 20 例について、画像所見および組織像の解析を行った。

ECS 観察
 鎮痙剤、鎮静剤を経静脈的に投与後に、GIF-H290EC(Olympus medical systems, Japan)を用い、同一の内視鏡医が全例の観察を行った。白色光と IEE 観察を施行した後に、 1% メチレンブルー(MB)溶液を数滴滴下し、30-60 秒後に ECS 観察を行った。さらにその後 1% MV 溶液と 0.05% クリスタルバイオレット(CV)溶液の混合液を同様に数滴滴下することで二重染色を行い、同様に ECS 観察を行った。

ECS 分類の作成
 大腸腫瘍の ECS 分類を基に、EC A/B/C の 3 分類を作成した。(Table.1)
 -EC A: 小型類円形の核が淡染され、均一に存在する。構造的には規則的な絨毛構造を呈する。(Figure.2a,2b)
 -EC B: 細長い紡錘形の核が濃染され、配向性が比較的保たれる。絨毛構造は不明瞭になる。(Figure.2c,2d)
 -EC C: 大型の不整核が淡染/濃染が混在して存在する。絨毛構造はなく、陰窩の周囲に細胞数が増加した開口部を認める。(Figure.2e,2f)
 EC A はウィーン分類でカテゴリー1(C1)に。EC B はカテゴリー3(C3)に。EC C はカテゴリー4/5(C4/5)に相当するとした。病理組織学的評価は複数の病理医が判定を行い、病変に組織学的不均一性がある場合は内視鏡画像と対応する切除標本のマッピングを行った。

ECS 画像の解釈
 3 つの step により、SNADET の ECS 分類を作成した。
 Step 1:1 人の内視鏡医が患者情報や内視鏡画像を伏せた状態で ECS 画像のみを評価した。腫瘍/非腫瘍の診断及び、ウィーン分類 C3、C4/5 の診断における正診率、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を計算した。
 Step 2:Step 1 と異なる 10 名の内視鏡専門医が同様のECS 画像を上記分類に基づいて評価し、診断の一致率と診断性能を評価した。
 Step 3:結果を統計学的に評価し、正診率向上に寄与する因子を検討した。統計学的解析10 名の診断一致率の評価には Kendall’s coefficient of concordance を使用した。分析には線形混合効果モデルを使用し、P 値は<0.05 を統計学的に有意とした。統計分析は R 3.6.1 及び SPSS 26.0.0 を用いて解析を行った。

【結果】
20 例(男性 14 例、女性 6 例)に対して ECS を行い、全例で内視鏡的一括切除と病理学的評価が得られた。(Table.2)MB を用いて染色した画像 77 枚(520 倍画像 26 枚と 936 倍画像 51 枚)と、二重染色を行った画像 58 枚(520 倍画像 24 枚と 936 倍画像 34枚)を抽出した。画像はそれぞれの症例から 1 枚の正常粘膜画像と 1-2 枚の 520 倍画像、1-2 枚の 936 倍画像を選択した。検査時間はいずれも 6 分(中央値)、通常観察も含めた内視鏡検査の全時間は 30 分(中央値)であり、全例で明瞭な ECS 画像を得た。観察に伴う偶発症は認めなかった。

Step 1 :ECS 分類の診断能に関する評価
 MB 染色と二重染色それぞれの ECS 画像を用いて新しい分類の診断能を評価した。 (Table.3)MB 染色では EC A と B,C の比較で腫瘍・非腫瘍の鑑別を行うと、90% 以上と非常に良好な正診率、感度、特異度、陽性的中率が得られた。EC B と EC C の比較でウィーン分類 C3 と C4/5 の鑑別を行うと、正診率、感度、陽性的中率、陰性的中率で 90% 以上と良好な結果が得られた。二重染色を行った画像でも類似した結果が得られたが、腫瘍・非腫瘍の診断でやや低い結果であった。(Table.4)

Step 2 :ECS 分類の読影者間一致率の評価
 10 名の内視鏡専門医による診断結果は MB 染色群では電子拡大ありの画像の正診率が 82.4%、電子拡大なしの画像の正診率が 63.5% であった。診断一致率は 0.803 と0.730 であった。(Table.5)EC A の正診率は 89.3%(76.8-92.9)、EC B は 75%(66.7-91.7)、EC C は 82%(78.0-94.0)で、3 群間に有意差を認めなかった。(p=0.165)
 二重染色群では電子拡大ありの画像の正診率が 72.1%、電子拡大なしの画像の正診率が 66.7% であった。診断一致率は 0.739 と 0.661 でした。(Table.5)EC A の正診率は 88.9%(63.9-88.9)、EC B は 62.5%(62.5-75.0)、EC C は 79.4%(58.8-88.2)で、3 群間に有意差を認めなかった。(p=0.082)

Step 3 :ECS 分類の正診率向上に寄与する因子の検討
 MB 染色が ECS の正診率に及ぼす影響では、統計学的に有意な差は得られなかった。 (オッズ比 1.27(0.99-1.63): p=0.063)しかし、このモデルに染色の違いと電子拡大の交互作用を追加すると、統計学的に有意な交互作用を認めた。(オッズ比 1.76(1.06-2.92): p=0.0297)次に、電子拡大あり群となし群でサブグループ解析を行った。電子拡大あり群では MB 染色は二重染色群と比較して正診率が有意に向上した。( オッズ比 1.55(1.11-2.18: p=0.011))一方で電子拡大なし群では染色法の違いで正診率に有意差を認めなかった。(オッズ比 0.89(0.61-1.29: p=0.531))

【考察】
 今回作成した十二指腸 ECS 分類は腫瘍・非腫瘍の診断及びウィーン分類 C3 と C4/5の診断いずれにも有用であった。MB 染色と二重染色のいずれも良好な診断能を示したが、ウィーン分類 C3 病変と C4/5 病変の診断は MB 染色がより良好な結果であった。
 10 名の内視鏡医の正診率は電子拡大を加える事で 63.5% から 82.4% に上昇した。理由として、低倍では画像の注目部位が定まりにくい事などが考えられた。診断一致率は 0.803 と良好な結果であった。既報の白色光や IEE 観察の正診率と同様に良好な結果であり、生検による診断と比較しても優れた結果であった。
 電子拡大観察を行う事で MB 染色の正診率は向上した。(オッズ比 1.76(1.06-2.92): p=0.0297)これは食道などの他臓器でも報告されており、細胞核の不整や染色性の濃淡がより明瞭になるためと考えられた。
 今回の研究では CV の上乗せ効果を認めなかった。理由として MB に染色された核と CV に染色された細胞質の判別が難しい事が考えられた。CV はラットにおいて発がん性の報告もあり、本邦でも有用性がリスクを上回る場合のみ使用するべきとされる。今回の研究結果からは SNADETs の診断では CV の使用は推奨されないと考えられた。
 今回の研究にはいくつかの限界がある。まず、限られた症例数の単一施設での研究である事があげられるが、連続症例は集積しており、SNADET の希少性を考慮すると十分な画像数と考えられた。第二に MB 染色を行った後に二重染色を行った事である。前後関係から画質に影響が出た可能性は否定できない。第三に白色光と IEE 観察後に ECS 画像を撮影しているため、ECS 撮像に影響を及ぼした可能性がある。ただし、検査時は最終病理組織像を知らずに撮影しており、高い診断一致率からも有用性を否定するものではないと考えられた。第四に今回の研究は白色光や IEE 観察による診断との比較ではない事があげられる。通常の内視鏡診断ではまず白色光や IEE 観察によって病変が検出されるので、今後、白色光や IEE 観察に ECS 観察を追加した場合の上乗せ効果を検討する必要がある。最後にこの研究では SNADET の粘液形質を考慮しておらず、その影響については更なる研究が必要である。

【結語】
 MB 染色を用いた ECS 診断は十二指腸の腫瘍・非腫瘍の診断及び SNADETs のウィーン分類 C3 と C4/5 の鑑別に良好な診断能と高い観察者間一致率を示した。

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