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What is the role of measuring shear wave dispersion using shear wave elastography in pancreatic parenchyma?

鈴木, 博貴 名古屋大学

2021.06.29

概要

【緒言】
 経腹壁超音波検査(US)を用いた超音波 shear wave elastography(SWE)は、非侵襲的に組織弾性を定量化することができ、肝臓や腎臓、甲状腺、乳腺など幅広い分野で臨床応用されている。当院では SWE を用いた膵の線維化診断や臨床応用を試みており、その研究成果を報告している。しかし、生体組織は粘弾性を有しており、shear wave speed は弾性と粘性の両方によって決定される。最近、shear wave の周波数の分散性を評価することで超音波診断装置を用いて粘性を評価することが可能となった。本研究では、膵における超音波 shear wave dispersion(SWD)の信頼性と臨床的意義を検討することを目的とした。

【対象及び方法】
 2017 年 11 月から 2018 年 11 月までにUS の膵スクリーニング時に膵に対してSWE、 SWD 測定をした症例で、造影 CT や超音波内視鏡(EUS)にて膵に腫瘍性病変や嚢胞性病変を認めず、膵疾患の既往歴がない症例を対象とした。US 所見より、肝臓より膵実質エコー輝度が高いもの、脂肪肝の場合は、脾臓や腎臓よりエコー輝度が高いものを高輝度膵と定義した。それ以外の症例は正常膵と定義した。脂肪肝は、肝実質エコー輝度が腎臓よりも高いものとした。本研究(UMIN000016497)は、名古屋大学医学部附属病院倫理審査委員会の承認を得て実施した。被験者からは、本研究について十分な説明を行った上で、書面による同意を得た。
 超音波診断装置はキヤノンメディカルシステムズ社 Aplio i900 を用いて SWE および SWD 測定に使用した。B モードにて膵体部を描出し、最小測定 ROI(縦約 1.7cm×横約 2.0cm)を、血管と主膵管を避けるように設定した。SWE と SWD の測定は少なくとも 5 回行った。ROI 内の SWE と SWD の表示には、それぞれ propagation 表示と color mapping 表示を用いた。propagation 表示で,ROI 内に等高線の幅が一定で、等高線と等高線が平行に表示されている部分があれば評価可能とした。計測 ROI は等高線の幅が一定で平衡に表示されている部分が最大限になるように設定した(Fig.1)。SWE、 SWD を 5 回計測し、各症例の SWE の中央値を pancreatic elastic modulus(PEM)、SWDの中央値を dispersion slope とした。PEM、dispersion slope の再現性は、級内相関係数(ICC)を用いて評価した。データの信頼性を評価するために、PEM、dispersion slopeの四分位範囲(IQR)/中央値を算出した。
 年齢、性別、BMI、併存疾患(高血圧、脂質異常症、糖尿病)、飲酒、脂肪肝、膵実質エコー輝度と PEM および dispersion slope の関連性を検討した。
 膵の脂肪化と相関があると考えられている pancreas-to-spleen attenuation ratio(P/S)を単純 CT で測定した。膵体部に直径 1cm の円形 ROI を 3 カ所設定し計測し、中央値を膵 CT 値として算出した。同様に脾臓に直径 1cm の円形 ROI を設定し、3 箇所で測定、中央値を脾 CT 値として算出した。その後、P/S を算出し、PEM、dispersion slopeとの関連性を評価した。
 この研究の主要評価項目は、膵における SWE を用いた SWD の信頼性評価とした。副次評価項目は、PEM および dispersion slope と患者背景、膵実質エコー輝度、およびP/S との関連の解析とした。
 統計解析には SPSS(ver.25, SPSS Inc)を使用した。ICC の基準は、0.0-0.20, slight; 0.21-0.40, fair; 0.41-0.60, moderate; 0.61-0.80, substantial; 0.81-1.00, almost perfect とした。連続変数の比較には Mann-Whitney U test を使用し、2 群間の分析には Fisher exact testを用いた。P <0.05 を統計学的有意差ありとした。相関係数には Spearman rank correlation coefficients を使用し、weak(<0.2), mild(0.2 to <0.4), moderate(0.4 to >0.7), strong(≧0.7)と評価した。

【結果】
 76 人の患者で測定を実施し、全患者で PEM と dispersion slope を評価することができた。ICC は PEM(ICC(1,1)ρ=0.685、ICC(1,5)ρ=0.869)、dispersion slope(ICC(1,1) ρ=0.631、ICC(1,5)ρ=0.867)(Table 1)であり、再現性の高い結果であった。
 患者背景を Table 2 に示す。年齢中央値は 63 歳、患者 42 人(55%)は男性であった。BMI 中央値は 21.3 kg/m2 で、5 人の患者(6.6%)が大酒家であった。患者のうち、高血圧は 34.2%、脂質異常症は 19.7%、糖尿病は 14.4%に合併し、脂肪肝は 12 人に認められた。76 例の PEM 中央値は 7.4 kPa、dispersion slope 中央値は 15.7(m/sec)/kHz であった(Table 3)。PEM の IQR/中央値は 0.36、dispersion slope は 0.28 であった(Table 3)。年齢は PEM(rs=0.348、P =0.002)、dispersion slope(rs=0.278、P =0.016)と正の相関 があり、BMI は dispersion slope と正の相関があった(rs=0.397、P <0.001)。また、脂肪肝患者では dispersion slope が有意に高かった(P =0.003)。性別,高血圧,脂質異常症,糖尿病,飲酒は,PEM および dispersion slope と有意な関連はなかった.高輝度膵では、正常膵に比べて PEM(6.6 vs. 7.8 kPa、P =0.037)(Fig.2a)および dispersion slope(13.2 vs. 16.3 (m/sec)/kHz、P <0.001)が有意に高かった(Fig.2b)。
 単純 CT は 76 例中 50 例で施行していた。P/S の中央値は 0.85 であった。P/S は PEMと相関がなかったが(rs=0.180、P =0.221)(Fig.3a)、dispersion slope と負の相関を示した(rs=0.338、P =0.019)(Fig.3b)。

【考察】
 従来は、粘性がないと仮定して、shear wave speed から弾性を求めていた。今までの粘性の測定は、ファントムを用いて計算しており、超音波診断装置を用いて直接測定することはできなかった。これに対し、本研究で使用した Aplio i900 は、超音波観測装置で弾性と粘性に関係する分散勾配を同時に測定することが可能となった。
 PEM と dispersion slope は高い再現性を示していた。また、一般的に 0.30 以下で許容されると報告されている PEM の IQR/中央値と dispersion slope の IQR/中央値の結果は、膵における測定が許容できることを示唆している。
 膵疾患における SWE の有用性は報告されているが、本研究は、再現性の検討を含め、SWD を用いて膵実質を評価した初めての報告である。
 我々の研究では、dispersion slope は高血圧、脂質異常症、糖尿病の併存疾患とは関連していなかったが、BMI と正の相関があり、脂肪肝患者で有意に高かった。また、 dispersion slope は高輝度膵では有意に高値であった。
 CT における P/S は膵臓の脂肪組織の病理組織学的比率と相関している。今回の研究では、P/S は PEM とは相関がみられなかったが、dispersion slope とは負の相関があった。このことから、dispersion slope は膵の脂肪化を反映していると考えられる。さらに、膵実質の高輝度化は線維化と脂肪化が原因と考えられているが、dispersion slope と膵実質エコー輝度の関連が PEM よりも強いという結果であり、膵実質エコー輝度が高いのは線維化が主な原因ではない可能性が示唆された。また、US 上は同じように高輝度を示す膵実質でも、組織学的に線維化や脂肪化の割合に違いがある可能性も示唆された。非侵襲的、客観的な SWE、SWD 測定は、線維化や脂肪化の割合を評価するのに有用であり、膵機能や癌化などの予測ができる可能性がある。
 この研究にはいくつかの limitation がある。単一施設のデザインであること、 dispersion slope と病理組織学的な関連性を検討できていないことなどが挙げられる。これは、膵スクリーニングのために US で検査を受けた患者を選択したため、手術検体が得られなかったためである。今後さらに自己免疫性膵炎や早期慢性膵炎などの膵疾患における SWD 測定の臨床的意義を評価していく必要性がある。

【結語】
 膵実質の dispersion slope の中央値は 15.7(m/sec)/kHz であり、ICC が高かった。高輝度膵では dispersion slope が有意に高く、P/S は dispersion slope と逆相関していた。膵スクリーニングの一環としての SWD の測定は再現性が高く、膵の脂肪化を客観的に評価できる可能性がある。

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