プロテアーゼ活性検出赤色蛍光プローブによる肺癌迅速イメージング
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名川島
峻
本研究は外科手術における微小病変の術中同定という課題に対して、肺癌を迅速に認識出
来る新たな補助診断の方法を試みたものであり、下記の結果を得ている。
1.
肺癌手術摘出検体を用いて、400 種類の赤色蛍光プローブライブラリーから、適切な
選抜方法を用いて、肺癌を最も高率に同定する Glutamine-Alanine-2 Methyl Silicon
Rhodamine (QA-2MeSiR) を選出した。QA-2MeSiR を滴下して 10 分経過後の肺癌組
織の同定は感度 96.3%、特異度 85.2%であり、高い標識率を確認した。
2.
光誘起電子移動を蛍光制御原理に組み込む事で蛍光が消光した Glutamine-Alanine-2
Methoxy Silicon Rhodamine (QA-2OMeSiR)を導入し、QA-2MeSiR との比較により、改
良点を評価した。
3.
QA-2OMeSiR の反応に携わる標的酵素として、Dipeptidyl peptidase (DPP4) と
Puromycin sensitive aminopeptidase (PSA) を同定した。肺癌細胞株の Live cell
imaging や、肺癌手術摘出検体における DPP4 及び PSA の発現を確認した。
以上、本研究は肺癌を同定する初めての蛍光プローブを報告しており、肺癌迅速イメージ
ングにおける赤色蛍光プローブの有用性を示した。また、この蛍光プローブが 2 種類の酵
素による相補的な役割により高い感度及び特異度を認めることを明らかにした。この研究
成果は赤色蛍光プローブの有効性を証明しただけでなく、蛍光プローブの側鎖構造として
新たな配列を見出しており、今後の蛍光プローブに関連する研究に重要な貢献をなすと考
えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。