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大学・研究所にある論文を検索できる 「肺動脈性肺高血圧およびそれに伴う右心不全に対する新規肺血管リモデリング治療薬としてのビタミンAおよびその誘導体の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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肺動脈性肺高血圧およびそれに伴う右心不全に対する新規肺血管リモデリング治療薬としてのビタミンAおよびその誘導体の検討

沼田, 玄理 東京大学 DOI:10.15083/0002005441

2022.07.13

概要

心血管疾患は世界的にも患者数が多く近年の治療の進歩にもかかわらず、依然死因の上位を占めている。とりわけ右心不全は現在有効な治療法がなく、その分子生物学的メカニズムに関しても不明な点が多い。肺高血圧症(PH)は右心不全の原因疾患の一つであり、肺血管内皮細胞や平滑筋、弾性組織増殖による肺血管リモデリングの為,肺血管抵抗上昇を来す難病である。 PH の進行には血管内皮障害、持続性血管収縮や凝固障害、アポトーシス抵抗性などが関与するものの、現在使用可能である治療薬は主に肺血管拡張を主たる作用としたものであり、これらの肺血管リモデリングを直接抑制することを目的としたものはない。さらにPH の中には肺血管拡張薬が効果不十分な症例や、血管拡張薬の使用に伴い重症肺水腫といった致死的な副作用を呈する症例が存在する。これらの治療抵抗性を示す症例のために、PH の予後は依然不良である。この状況を打開するためには血管拡張作用を有さず肺血管リモデリングを抑制する薬剤開発が必要である。

一方、PH の肺血管リモデリングは悪性腫と類似する点が多く、抗腫薬が注目されている。腫瘍増殖様式と PH リモデリングは類似しており、いずれも核内受容体の関与が示唆されている。核内受容体はヘテロダイマー及びホモダイマーを形成し下流遺伝子を調節するが、物質 X受は様々な核内受容体とヘテロダイマーを形成し、それら受容体機能を調節するモデュレーターである。物質X 受容体のアゴニストである物質X は遺伝的経路(genomic pathway)、非遺伝的経路(non-genomic pathway)を介して増殖抑制作用を示すことが様々な悪性腫瘍及び増殖性疾患で示されているが、PH と物質 X の関係性は明らかではない。今回著者は物質 X およびその誘導体に着目し、肺高血圧治療薬になり得るか否か、マウスモデルを用いて解析することとした。

本論文では、近年注目されている低酸素環境下及び vascular endothelial growth factor(VEGF)受容体拮抗薬による肺動脈性肺高血圧モデルマウス(HySU モデル)に対して物質 X-A 受容体アゴニストである薬剤 A、物質 X-B 受容体アゴニストである薬剤 B を投与し、PH に対する物質 X の効果を解析した。解析においては、肺血管リモデリングの進行抑制、及び肺血管リモデリングの改善(reverse remodeling)効果を、圧容積曲線(PV loop)による生理学的解析、肺動脈中膜肥厚及び外膜弾性組織の変化を確認するための組織学的解析、肺血管リモデリング関連遺伝子及びタンパク質の変化を確認するための分子生物学的解析を行った。

HySU モデルにおいて薬剤 A は生理学的解析において肺血管抵抗、右室収縮期圧の低下、心拍出量の改善を、組織学的解析において中膜平滑筋層及び外膜弾性板の増殖抑制、分子生物学的解析において endothelin-1、transforming growth factor β、interleukin 6、insulin-like growth factor 1 receptor を始めとした増殖及び炎症関連遺伝子の低下を認めた。また PH において活性化されるタンパク X のリン酸化を抑制した。薬剤 B においてはこれらの効果は認められなかった。また薬剤 A は急性投与において既存 PH 治療薬と異なり肺血管拡張作用を示さなかった。

本研究により物質X の一種である薬剤A はPH の肺血管リモデリングを改善させ、新規 PH 治療薬となり得る可能性が示唆された。さらに、従来の PH 治療薬とは異なり薬 剤 A は急性の肺血管拡張作用を示さず、従来の PH 治療薬の血管拡張作用のために重篤な肺水腫といった合併症が生じる患者群にも適応となる可能性が示唆された。薬剤 A の物質 X-A 受容体を介した genomic pathway 及びタンパク X のリン酸化抑制を介したnon-genomic pathway が PH の形成及び PH 治療に関与しているものと思われる。

また、薬剤 A は一部の癌腫での臨床試験において、ヒトへの副作用が少ないことが確認されており、今後ヒトへの臨床応用も可能と思われる。

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