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大学・研究所にある論文を検索できる 「東シナ海および日本沿岸におけるアナゴ科魚類3種の資源生態に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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東シナ海および日本沿岸におけるアナゴ科魚類3種の資源生態に関する研究

河津, 優紀 KAWAZU, Masanori カワヅ, マサノリ 九州大学

2020.03.23

概要

我が国沿岸海域において水産利用されているウナギ目アナゴ科魚類の内、最も代表的な種としてマアナゴ Conger myriaster が挙げられる。近年、本種の漁獲量は減少傾向にあり、各地で成長管理を柱とする資源管理が実施されているが、資源回復の兆しはみられておらず、適切な資源管理策立案が急務となっている。資源管理策を講じるためには、再生産に関する情報が必要であるが、十分に把握されていない。そこで本研究は東シナ海陸棚域で採捕された成熟進行中のマアナゴの年齢、成熟、生息環境などの資源特性を明らかにし、再生産に関する知見を集積、整理するとともに、他のアナゴ科魚類 2 種、オオシロアナゴ Ariosoma majus、ゴテンアナゴ A. meeki の再生産に関する知見を集積し、比較することによってマアナゴの資源生態の特性を明らかにすることを目的とした。

1. マアナゴの資源生態
マアナゴの繁殖生態の解明に際し、日本沿岸(内湾から沖合)及び東シナ海から 811 個体を収集し、研究に供した。これにより、本種は成長に伴い内湾といった浅海域から沖合の大陸棚上へと移動することが明らかとなった。それら沖合へ移動する個体には成熟進行中の個体が含まれており、最大体サイズ、移動時期には雌雄差が認められ、雌が大型である傾向が示された。最も進んだ生殖腺発達段階は、雌は第二次卵黄球期、雄は減数分裂後期であり、産卵可能な段階に至っていなかった。これらは夏季の東シナ海大陸棚上から縁辺斜面域にかけて出現し、一部の個体には体色の黒化が見られた。加えてこれらの肝臓組織は生殖腺発達に伴って機能が変化し、消化管組織は成熟進行に伴って不可逆的に退縮していた。従って本種は産卵に特化するために内部組織も変化させ、また産卵後死亡する可能性を示した。

2. オオシロアナゴの資源生態
オオシロアナゴの繁殖生態の解明に際し、日本沿岸(沖合)及び東シナ海から560 個体を収集し、研究に供した。これにより、本種は水深 100~200 m 程の大陸棚上から縁辺斜面域に生息することが明らかとなった。本種の最大体サイズは雌雄で同程度であった。最も進んだ生殖腺発達段階は雌雄共に休止期であり、産卵後に復調している段階であった。本種は通年同所に生息しており、また同所で産卵していることが明らかとなった。本種には成熟進行に伴う外部形態変化は認められなかった。加えてこれらの肝臓、消化管といった内部組織は成熟段階に関わらず一定の機能を維持しており、本種は産卵に関して体勢を変化させることなく、また産卵後も生残していることが明らかとなった。

3. ゴテンアナゴの資源生態
ゴテンアナゴの繁殖生態の解明に際し、日本沿岸(沖合)及び東シナ海から 150個体を収集し、研究に供した。これにより、本種は水深 200 m までの沿岸浅海域から大陸棚上、縁辺斜面域にかけて生息することが明らかとなった。本種の最大体サイズは雌が大型である傾向が示された。最も進んだ生殖腺発達段階は雌雄共に休止期であり、産卵後に復調している段階であった。本種は非産卵期には沿岸浅海域に生息し、産卵期に沖合域や東シナ海大陸棚上、縁辺斜面域に移動、そして産卵後に再び沿岸浅海域に戻るといった往復回遊をすると考えられた。往復回遊に際して、産卵期に体色が黒化し、非産卵期には退色し再び非産卵期の体色に近づくことが明らかとなった。加えてこれらの肝臓組織は生殖腺発達に伴って機能が変化する一方で、消化管組織は成熟進行に伴い機能が退縮するものの、非産卵期に復調していた。従って本種は産卵に特化するために内部組織も変化させ、かつ復調することにより産卵後に生残することが明らかとなった。

4. 3 タイプの産卵回遊様式
マアナゴ、オオシロアナゴ及びゴテンアナゴの比較により、3 タイプの繁殖様式が見出された。第 1 の様式はマアナゴから示された。成熟に伴い内部、外部形態が変化し、中でも消化管の不可逆的機能退縮により、産卵後死亡すると考えられた。体色の黒化は外洋の産卵場での環境適応と考えられ、生息環境と産卵環境が異なるために起きたと考えられた。従って第 1 の繁殖様式は、生息域と産卵域が異なり、かつ産卵後死亡するため片道産卵回遊となること、産卵に特化するための体勢変化を示すこと、であった。第 2 の様式はオオシロアナゴから示された。成熟状態に関わらず内部、外部形態は変化せず、機能を維持していることから産卵後生残すると考えられた。これは生息環境と産卵環境が一致していることからも支持された。従って第 2 の繁殖様式は、生息域と産卵域が同所であるため産卵回遊が見られず、産卵に特化した体勢変化を示さないこと、であった。第 3 の様式はゴテンアナゴから示された。成熟に伴い内部、外部形態が変化するものの、消化管機能は可逆的な退縮、復調を示し、産卵後生残すると考えられた。この様式においても、体色の黒化は産卵場での環境適応と考えられ、生息環境と産卵環境が異なるために起きたと考えられた。従って第 3 の繁殖様式は、生息域と産卵域が異なり、かつ産卵後生残し生息域に戻るために往復産卵回遊となること、産卵に特化するための体勢変化を示すこと、であった。

本研究の結果、マアナゴを始めとしてこれらアナゴ科魚類 3 種の資源生態に関する数多くの新知見が得られた。アナゴ科魚類の産卵回遊様式は多様であり、資源管理にはそれぞれの様式に応じて成長管理や加入管理を講じる必要があることが明らかにされた。また、本研究で得られた知見は、水産重要種マアナゴの資源評価、管理策の提言のみならず、ウナギ目魚類の繁殖戦略、環境適応、系統進化を理解する上で重要な生物学的基礎情報となる。

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