術前化学療法が著効した卵巣小細胞癌の1例
概要
【緒言】卵巣小細胞癌は卵巣癌の全組織型中0.1%と非常に稀な組織型であり、進行が早く予後不良である。術前化学療法としてイリノテカン・シスプラチン(CPT-P)療法が著効した卵巣小細胞癌の稀な症例を経験したので報告する。
【症例】68歳女性、2妊2産。腹部膨満感を主訴に前医を受診した。腹水細胞診で悪性細胞を認め、CTで卵巣癌、腹膜播種が疑われたため当科へ紹介受診された。左卵巣に6cm大の充実性腫瘤、腹膜播種、肝転移および多量の腹水貯留を認めた。腫瘍マーカーはCEA1.59ng/ml、CA19-9 5.5U/ml、CA125 144.0U/ml、NSE20.9ng/ml、ProGRP159.2U/mlであった。確定診断目的に試験開腹術を施行し、腫瘍生検から肺型の卵巣小細胞癌と診断した。術前化学療法としてCPT-P療法を3コース施行した。化学療法が奏効したためインターバル腫瘍減量術を施行した。子宮と卵巣に肉眼的病変は認めず、直腸左側と鎌状間膜左側に粟粒大の播種結節を認めた。腹式単純子宮全摘術、両側付属器摘出術、大網切除術および直腸左側播種病変摘出術を施行し、手術完遂度はoptimal surgery(最大残存病変1cm未満)であった。術後補助療法としてCPT-P療法を3コース施行後の治療評価CTでは、肝転移巣が消失した。治療開始から11か月で腹膜播種の増大、腹水貯留を認めたため再発と診断し、再度CPT-P療法を行っている。
【結語】肺型の進行卵巣小細胞癌に対して、初回手術で残存腫瘍径1cm未満とすることが困難と考えられる症例には、術前化学療法としてCPT-P療法が有用である可能性が示された。