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大学・研究所にある論文を検索できる 「Parameter Estimation of Random Matrix Models via Free Probability Theory」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Parameter Estimation of Random Matrix Models via Free Probability Theory

早瀬, 友裕 東京大学

2022.04.20

概要

本論文において論文提出者は,作用素環論における自由確率論の手法を応用し,ランダム行列統計モデルのパラメータ推定を行う新しい方法を導入した.

ランダム行列とは,確率変数が成分の行列である.各成分を例えば独立同分布としたときに,固有値の分布を調べることなどが広く研究されている.本論文ではランダム行列と,ランダムではないある行列の多項式(標本行列)を考え,その固有値の分布が与えられたときにランダムではない方の行列を推定するという問題を考えた.ある種のランダム行列の,行列のサイズが大きくなった時の漸近的な固有値の分布は,作用素環論におけるVoiculescu の自由確率論で記述できることが知られている.そこで本論文では自由確率論の手法を用いて,この行列の推定問題を考えた.実用的な応用ではランダムではない方の行列は問題に特有のパラメータと考えられるので,これを合理的に推定することが重要な問題となる.この手法は例えば機械学習などの具体的な問題に適用できるものである.

ランダム行列の成分が独立同分布Gaussian 確率変数である場合(Ginibre型) 及びGinibre 型の転置とそれ自身の積(Wishart 型) の場合が重要でありよく研究されている.本論文では標本行列が一つしかない場合についての推定を研究した.

本論文の前半ではまず,Cauchy Noise Loss という目的関数を導入し, その確率的最急勾配法による最小化を研究した.行列サイズが大きいとして,標本行列の固有値の分布(経験固有値分布) を近似する確率速度が既に知られているが,実用的な計算に用いるにはいくつかの難点がある.本論文では代わりに,その確率分布とCauchy 分布の畳み込みを統計モデルとして用いるという手法を導入した.元の確率速度は陽的に計算することが困難であるが,そのCauchy 変換を与える方程式が書き下せるため,それにより畳み込みを計算することができる.この計算のため,free deterministic equivalent と呼ばれる道具を用いる.これはGinibre 行列の成分を無限次元空間上の作用素に置き換えたものである.経験固有値分布にCauchy ノイズを加え,上に導入した統計モデルとのKL-divergence を用いてCauchy Noise Loss が定義される.これをオンライン型確率的最急勾配法で最小化し, パラメータ推定を行った.この方法の数学的な研究に加え,典型的なランダム行列モデルについて,実際のパラメータ推定の数値実験も行い,既存手法との比較によって,本手法の優れた点を実証した.

また後半では,経験固有値分布を近似する本論文の統計モデルについて,パラメータ識別可能性を研究した.ここで統計モデルが識別可能とは,パラメータから確率分布への写像が単射であることである.この問題はFisher 情報行列の退化性に関係しており,応用上重要な意義を持っている.本論文では,compound Wishart 型とSignal-plus-Noise 型の経験固有値分布を近似する統計モデルが, パラメータ行列の固有値分布, もしくは特異値分布を一つのパラメータ点とみなした場合に,識別可能性を持つことを示している.この証明にはfree multiplicative deconvolution の手法を用いた.

これらはいずれも数学的に興味があり,また実用的な有用性も大きく期待できる成果である.よって,論文提出者早瀬友裕は,博士(数理科学) の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める.

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