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Roles of the synchronized adult-born neuron activity to hippocampal theta oscillation and establishment of an automatic REM sleep intervention system in mice aiming the elucidation of the memory consolidation mechanisms during REM sleep

小柳, 伊代 筑波大学

2023.09.04

概要

〔博士論文概要〕

Roles of the synchronized adult-born neuron
activity to hippocampal theta oscillation and
establishment of an automatic REM sleep
intervention system in mice aiming the
elucidation of the memory consolidation
mechanisms during REM sleep
(レム睡眠中の記憶固定化メカニズムの解明を目的とした、海馬シータ波と新生ニュ

ーロンの同期活動の意義の探索とマウスのレム睡眠自動介入システムの開発)

令和 4 年度

筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群
ニューロサイエンス学位プログラム 博士後期課程






-1-



Background
哺乳類の睡眠は脳波(Electroencephalogram, EEG)の波形からノンレム睡眠とレム睡眠とい
う2つのステージに大別される。いずれも無意識下ではあるものの、睡眠の機能と生物学的
基盤は全く異なると考えられている。睡眠の機能のひとつとして、記憶の固定化が挙げられ
る。神経細胞が情報を伝達する場であるシナプス結合の強さは、記憶の実体であり、睡眠中
には、(1) 恒常性としてのシナプス結合のグローバルなダウンスケーリングと、(2) 選択的
なシナプス結合の増強あるいは減弱が、記憶処理の重要なプロセスとして考えられている。
断眠実験などから、ノンレム睡眠・レム睡眠のどちらも記憶固定化に重要であることが報告
されてきた。近年では、ノンレム睡眠中の記憶固定化のメカニズムとして、ノンレム睡眠中
に特徴的な脳波である、紡錘波や鋭波リップルによるシナプス可塑性の制御機構などが明
らかになりつつある。一方で、レム睡眠中の記憶固定化のメカニズムは不明な点が多く残さ
れている。
筆者らは、レム睡眠中の海馬歯状回の幼若な新生ニューロン(Adult-born neurons)の活動が、
記憶の固定化に必要であることを既に報告している。幼若な新生ニューロンは他の神経細
胞に比べて高いシナプス可塑性を示すことが知られているが、睡眠依存的な記憶固定化の
メカニズムは不明である。レム睡眠中には 6 - 9Hz のシータ波が特徴的であり、海馬の神経
細胞はシータ波と同期した位相特異的な活動を示すほか、海馬のシータ波自体も記憶固定
化に重要であることが知られている。本研究では、レム睡眠中のシータ波に同期した新生ニ
ューロンの神経活動が記憶固定化に必須であると仮定する。Chapter1 では、光遺伝学的手法
によりシータ波位相特異的な新生ニューロンの活動を抑制し、レム睡眠中のタイミング依
存的な神経活動が記憶固定化にもたらす役割を検討する。
Chapter1 のような睡眠ステージ特異的な介入操作は、睡眠の機能とその生物学的基盤を理解
し、睡眠障害のより効果的な治療法を開発するために重要である。しかしながら、通常、マ
ウスまたはヒトを対象とした睡眠ステージ特異的介入操作は手動で行うため、実験遂行者
への負担が大きいほか、ばらつきも生じやすい。
睡眠ステージ特異的な記憶固定化機構をより効率的に探索するためには、人工知能(AI)を
用いたマウスの全自動リアルタイム睡眠判定システムが将来的には必要不可欠である。現
在、マウスにおいてレム睡眠を特異的に標的とすることは技術的に困難である。これまでの
レム睡眠介入実験の多くは手動で行われてきた。REM 睡眠は、EEG を視覚モニタリングす
ることで正確に検出することができるが、コンピューターで正確に自動検出できれば、労力
を軽減するほか実験条件の拡張が可能になる。既存の手法として、EEG のパワー密度に依
存したルールベースのアルゴリズムが挙げられるが、この方法では被験体ごとに閾値を調
整する必要がある。これらの問題を解決するため、本研究の Chapter2 では、AI を用いてマ
ウスの EEG から睡眠ステージを自動判定し、より簡便にレム睡眠特異的な介入実験が行え
るシステムを実装することを目的とする。
-2-

Methods
Chapter1:
遺伝子組換えマウスを用いて、光操作により神経活動を抑制する Halo ロドプシンを幼若な
新生ニューロンのみ発現させた。海馬依存的な学習課題である Trace fear conditioning を行
い、記憶固定化に重要な学習直後から 6 時間以内のレム睡眠をターゲットとして、新生ニュ
ーロンの活動操作を行った。レム睡眠中のシータ波位相特異的に活動抑制を行うため、閉ル
ープ回路装置を用いて、シータ波のピーク位置を予測し、目的の位相で光操作を行った。学
習から 24 時間後に記憶想起テストを行い、恐怖記憶の指標としてフリージング反応の強さ
を解析した。
Chapter2:
筆者らは以前、A I モデルである UTSN-L を開発し、リアルタイムの仮想条件下で 97.6%の
REM 睡眠の判定精度を達成した。本研究では、UTSN-L 由来の AI モデルである UTSN-L2
を既存の睡眠記録装置に組み込み、教師データとは別に用意したマウスの EEG をリアルタ
イムで計測・睡眠判定を同時に行い、その判定精度を評価した。また、本システムをさまざ
まな実験条件での適応させるため、新たな教師データと異なる睡眠段階判定条件を用いて、
UTSN-L2-DS、 UTSN-L2-4s、UTSN-L2-512、UTSN-L2-HTW を作成・評価した。
睡眠判定はマウスの 1 チャンネルの EEG から行った。精度評価では、確認のために 2 チャ
ンネルの EEG と筋電(electroencephalogram, EMG)を4匹の評価用のマウスから 22 時間 *
3 日分記録した。睡眠記録装置に組み込んだ UTSN-L2 は最大4匹の睡眠判定を同時に処理
するようにした。記録後、UTSN-L2 による睡眠判定と、それをブラインドした専門家によ
る睡眠判定(Ground truth, GT)を比較し、性能を評価した。さらに、実際の光遺伝学実験を
想定し、レム睡眠になると TTL が出るように設定し、レム睡眠特異的介入操作の精度を手
動で行ったものと比較した。
UTSN-L2 は、サンプリング周波数 128 Hz、判定時間枠 10 秒、3 段階の睡眠ステージ(Wake,
NREM, REM)で、生体マウスの EEG から睡眠判定をリアルタイムで行った。UTSN-L2-DS
は、UTSN-L2 に EEG 信号をダウンサンプリングする処理を加え、異なるサンプリング周波
数を用いても UTSN-L2 と同様の判定精度になるかを検証した。UTSN-L2-4s では、より高
い時間解像度で睡眠介入を行うために、4 秒ごとに睡眠判定を行った新たな教師データを使
用した。UTSN-L2-HTW では、レム睡眠と類似する波形を持つ高シータ期の覚醒段階を、そ
れ以外の覚醒段階の低シータ期と区別した新たな教師データを使用した。本研究では、
UTSN-L2-DS を UTSN-L2 と同様に生体マウスを用いて精度を検証し、UTSN-L2-4s および
UTSN-L2-HTW は UTSN-L の 5-fold cross validation test を行い、その精度を検証した。

-3-

Results and discussion
1. 海馬新生ニューロンのレム睡眠中のシータ波位相特異的な神経活動が記憶固定化に重
要である。
睡眠依存的な記憶固定化機構を調べるため、Trace fear conditioning の直後から 6 時間以内に
おけるレム睡眠中の新生ニューロンの神経活動に着目した。閉ループ回路を用いて、設定し
たシータ波位相のタイミングで光操作する実験系を立ち上げ、波のピークを 0として 4 区
分の位相区間、-90、0、90、180に分けて新生ニューロンの神経活動を光遺伝学的に抑制
した。学習から 24 時間後に記憶想起テストを行うと特定の位相を操作したグループにおい
て恐怖記憶の減弱がみられ、レム睡眠中の神経活動操作により記憶固定化が阻害されてい
ることが示唆された。新生ニューロンと海馬局所のシータ波との同期活動は、発火タイミン
グ依存性シナプス可塑性(spike-timing dependent plasticity)を誘導することが考えられるが、
睡眠中の記憶固定化とシナプス可塑性の因果関係を明らかにするには、電気生理的な検討
などをする必要がある。
2. UTSN-L2 は生体マウスのリアルタイム睡眠判定でも高い精度を示す。
UTSN-L2 によるリアルタイムの睡眠判定を、GT と比較したところ、明期(ZT 2 - 8)
、暗期
(ZT14 - 20)ともに、UTSN-L2 と GT の睡眠判定はほとんど一致した。特に、UTSN-L2 に
よる REM 睡眠判定は平均で感度 85.1%、正確性 90.7%を示した。
3. ダウンサンプルによる高サンプリング周波数への適応
UTSN-L2 が高サンプリング周波数で使用できるかを調べるために、EEG を 512 Hz で記録
し、128Hz(UTSN-L 2 の教師データのサンプリング周波数)にダウンサンプリングしたも
のを UTSN-L2 に供給した。UTSN-L2 と同様に、睡眠判定は、明期、暗期ともにこの UTSNL2-DS モデルと GT で類似しており、レム睡眠判定は平均で感度 86.9%、正確性 84.9%であ
った。
4. レム睡眠特異的介入への応用
UTSN-L2 のレム睡眠特異的介入操作の性能を検証するために、筆者らは前回の研究と同じ
パラダイムを用いて、レム睡眠中に TTL パルスを生成した。これは光遺伝学実験において
レーザーなどの装置をトリガーするための一般的プロトコルである。筆者らが手動で実験
を行った際の精度と比較して、UTSN-L 2 では高い感度と正確性を示した(Sensitivity, Manual:
82.9%, UTSN-L2:90.8%, Precision, Manual: 82.3%, UTSN-L2: 90.0%)。このような結果から、
UTSN-L2 の睡眠判定を用いることで、実験遂行者の労力を軽減し、高い精度で Chapter1 の
ようなレム睡眠特異的介入実験を自動化できることが分かった。
5. より高い時間分解能への適応
より短い睡眠時間枠での分類は、介入の時間分解能を向上させる。例えば、UTSN-L2 は睡
-4-

眠判定時間枠が 10 秒であるため、TTL パルスの生成と解除には 10 秒の遅延が発生する。
そこで、4 秒の時間枠で睡眠判定を行う UTSN-L2-4s を作成した。4 秒の時間枠で睡眠判定
を行なった教師データを新たに用意し、5-fold cross validation を行ったところ、 UTSN-L24s による分類は UTSN-L2 による分類と類似していた.また、他の研究グループが作成し
た独立したデータセットでも同様の結果が得られた。
6. 高シータ覚醒期の分類
レム睡眠分類の精度を向上させるため、レム睡眠に類似した脳波波形を示す高シータ覚醒
期を識別するモデル、UTSN-L2-HTW を作成した。UTSN-L2-4s と同じ学習データセットを
用いたが、Wake を高シータ期と低シータ期(それぞれ HTW と LTW)に分けた。その結果、
UTSN-L2-HTW による REM 判定の精度は UTSN-L2-4s と同様であることがわかった。筆者
は、HTW を睡眠判定に加えることで REM の判定精度が向上すると予想していたが、これ
は、HTW の感度および正確性が低い(それぞれ 30.4%、70.5%)ためと考えられる。HTW
と LTW の混同(HTW の偽陰性 96.3%、偽陽性 84.4%が LTW)を改善するために、シータ
波形の一貫性を考慮したアテンションメカニズムの実装などが期待される。
Conclusion
本研究の Chapter1 では、レム睡眠中の神経活動操作により、海馬新生ニューロンのレム睡
眠中のシータ波の特定の位相での活動が、記憶固定化に必須であることを明らかにした。こ
の知見は睡眠中の記憶固定化メカニズムをさらに詳細に検討するために重要である。
Chapter2 では、chapter1 のような実験操作を効率化するため、AI モデルである UTSN-L 2 を
用いて高精度でリアルタイムの睡眠判定が可能であることを実証した。UTSN-L 2 を用いる
ことで、実験遂行者の負担を軽減し、複数のマウスを同時に、レム睡眠特異的な介入実験が
可能であることを示した。さらに、判定精度を維持しながら、より高い時間分解能で睡眠段
階を分類する新しいモデルを作成した。これらの技術は、本研究だけでなくさまざまな睡眠
介入実験への応用が可能であり、睡眠の謎を解明する一助になると期待される。 ...

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