Wnt経路を標的とした悪性骨腫瘍の病態解析とスクレロスチンによる治療の臨床応用
概要
研究成果の概要(和文):
原発性悪性骨腫瘍の中で最も頻度の高い骨肉腫に対して、骨形成阻害因子であるスクレロスチンがその増殖能と遊走能を抑制した。さらに動物実験において腫瘍体積の増大を抑制し、生存期間を延長させる効果を持つことが明らかになった。30年以上同じ抗がん剤が標準治療として用いられている骨肉腫に対して、新たな治療の選択肢を提示できる可能性が示唆された。スクレロスチンは殺細胞性の薬剤ではないため、ドキソルビシンのような既存の抗がん剤との併用効果の解析が今後の課題である。
研究成果の学術的意義や社会的意義
悪性骨腫瘍の中で最も頻度の高い骨肉腫は、組織学的に腫瘍性の類骨・骨を形成する悪性腫瘍と定義される。腫瘍の多様性、不均一性が高く、原因遺伝子変異は特定されていない。また骨肉腫に対して有効な治療薬は30年以上新規開発がなされておらず、新規抗がん剤の開発が切望されている。
骨形成は全ての骨肉腫に唯一共通する現象であり、スクレロスチンはその骨形成を抑制する。本研究の成果により、スクレロスチンが骨肉腫に対して抗腫瘍効果を持つことが明らかになった。
スクレロスチンの性質・骨組織特異性を逆手に取り、骨肉腫に対する創薬研究にブレークスルーを起こし、骨肉腫に対しての新規治療薬の開発を目指す。
研究成果の概要(英文):
Sclerostin suppressed the proliferative capacity and migratory ability of osteosarcoma cells. The osteosarcoma model mice showed inhibited tumor growth and prolonged survival periods. Because sclerostin is not a cytocidal agent, the effect of its combined use with existing anticancer drugs such as doxorubicin should be investigated for future clinical applications.
キーワード: 骨肉腫 悪性骨腫瘍 抗がん剤 Wnt経路 スクレロスチン