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日本の営農型太陽光発電と中国の光伏農業の比較研究

劉, 健 東京農工大学

2021.12.13

概要

自然と人間の共生を目指す共生社会では、そのエネルギー基盤は再生可能エネルギーが中心となり、化石燃料の枯渇化やエネルギー・資源の消費に伴う環境汚染は極力抑えられた社会システムとなるであろう。昨今の地球温暖化に代表される地球環境問題の深刻化を直視する時、社会システムの再生可能エネルギー依存率の引き上げは喫緊の課題である。

 広大な大地に降り注ぐ太陽光を利用して生産活動を営む農業には、本来再生可能エネルギー生産の側面が有る。光合成による作物生産は、太陽光エネルギーの農産物への固定化過程である。この従来の食物生産に加えて、最近では農地での太陽光エネルギーの電力への転換、太陽光発電が注目を集めるようになってきた。日中両国においても、農地では食料生産を継続し、その地上部で太陽光発電を行い、食料問題と環境問題を同時に解決し得る太陽光発電を用いた農業への関心が高まっている。日中両国の農業は、本質的には小規模、零細、分散経営の集合体であることは共通しているので、両国間の太陽光エネルギーの農業での利用におけるこれまでの経験や蓄積した技術は相互に学び合えるものである。

 日本では営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)と呼ばれ、2012年のFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の発足を契機に普及が始まっている。中国では光伏農業と呼ばれ、2011年のFIT制度発足を契機に普及が始まっている。しかし、これからの共生時代を担うこの新しい農業システムの両国における普及は、それ程順調には進んでいない。本研究では、日中両国での太陽光発電を用いた農業のこれまでの展開過程を分析し、比較研究を通じて、両国の展開過程の特徴を整理し、その課題を析出して、今後この新しい農業システムがさらに普及するための条件と政策支援の在り方を検討した。

 日本での営農型太陽光発電については、千葉県の匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所と茨城県の水杜の郷農業法人を採り上げ、事例研究を行った。匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所は、3.2haの農地、遮光率34%、発電出力1MW、太陽光パネル下では麦、大豆の生産を行っている事業体である。水杜の郷農業法人は、54haの農地、遮光率57%、発電出力35MW、太陽光パネル下ではオタネニンジン(高麗人参)やアメリカニンジン(西洋人参)等の薬草類の生産を行っている事業体である。

 これらの事例研究を通じて、日本で大規模な営農型太陽光発電を普及させるための課題として、次のような諸点が明らかになった。第一に、大規模な事業を行うためには、農地集積が前提となる。このためには多くの地権者の合意形成が条件となり、地区の常会のような地権者の意見集約の場が必要である。第二に、大規模になればなるほど初期投資が巨額となり、この初期投資資金をどの様に調達するかが課題となる。第三に、事業開始までには、地権者の合意形成、資金調達、農業委員会からの農地一時転用許可取得、電力会社との売電契約等、かなり煩雑な手続きが有る。これらの諸事情に精通した有能なリーダーの存在が必要である。第四に、太陽光パネル下での陰性作物の栽培技術体系の確立が必要である。第五に、営農型太陽光発電事業は政府の再生可能エネルギー政策に大きく依存している。政府は再生可能エネルギー政策の長期ビジョンを公表し、事業リスクを減らす支援政策や制度設計の工夫が必要である。

 中国の光伏農業については、中国初の光伏農業事業である即墨光伏農業事業と農村の救貧対策の中で実施されている光伏農業を採り上げ、その事例研究を行った。中国では、農民が主体となって成立した光伏農業はほとんど無い。初期投資が巨額であるため、政策支援制度を利用した太陽光電池・モジュール製作企業主導の光伏農業の展開が主流である。

 中国では従来の農業温室に太陽光パネルを取り付けたものがほとんどで、発電事業と営農事業はそれぞれ独立採算制をとっており、両事業の連携が弱く、新しい営農体系を確立するための試みも少ない。農業実証公園での事業や救貧政策の中での事業がほとんどで、農民の参加も受動的である。FIT制度も救貧政策の一環としてのみ継続されることが決まっている。

 日中両国とも以上の様な諸課題を抱えている。FIT制度を契機に始まった太陽光発電を用いた農業の普及であるが、FIT制度での電力買取価格は一貫して引き下げられており、そのFIT制度の経済的インセンティブは低下している。しかし、技術進歩によって資材価格も低下しており、最近の発電費用は一般の家庭用電力価格とほぼ等しい水準まで削減されている。今後は売電よりも農業内での消費電力としての利用が進んでいくであろう。日本では農地の一時転用許可も3年から10年に延長され、金融機関からの融資も受け易くなった。農地集積が実現すれは、農民主体による大規模営農型太陽光発電が普及する条件が成立しつつある。中国では、農民主体による光伏農業の普及の趨勢は弱く、救貧対策に組み込まれた形での光伏農業の普及を中心に展開していくであろう。太陽光パネル下に適応した営農システムの確立は、両国にとって喫緊の課題である。この分野の体系的研究の促進と実践から得られる多くの知見の両国間の共有化が望まれる。

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