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大学・研究所にある論文を検索できる 「Factors associated with facilitating advance care planning based on the theory of planned behaviour」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Factors associated with facilitating advance care planning based on the theory of planned behaviour

竹下 八重 広島大学

2021.05.27

概要

終末期の医療における患者の権利を考えていく中で、Advance Care Planning(以下 ACP)という考え方が徐々に広まり、それを推進する取り組みが増加してきた。ACP とは、将来の医療について個人の価値観や人生の目標、好みを理解し共有することであらゆる年齢・健康状態の人を支援するプロセスである。ACP のゴールは病状が深刻になった時に人々が価値観や目標、好みに合った医療を受けることを可能にすることである(Sudore RL, Lum HD, You JJ, et al. 2017)。ACP プログラムにより、医療ケアの向上や(Silveira MJ, Kim SYH, Langa KM, 2010 ; Hammes BJ, Rooney BL, Gundrum JD, 2010)、患者と家族の満足度が向上し、遺族の不安や抑うつが減少すること(Detering KM, Hancock AD, Reade MC, Silvester W, 2010)が示されている。しかし、2017 年に厚労省が実施した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」では、国民の 75.5%が ACP を知らないと回答し、さらに人生の最終段階における医療・療養について、これまでに考えたことがない国民が 37.8%、家族等や医療介護関係者と話し合ったことがない国民が 55.1%、事前指示書を作成している国民が 8.1%であったことから、日本の国民において ACP という概念は浸透しておらず、その実施も少ないことがわかる。本研究では、日本における ACP 実施の影響要因を明らかにし、国民に対する効果的な教育方法の示唆を得ることを目的とした。

今回、ACP の実施に対して周囲の人の価値観が影響することが示唆されている(Del Pozo Puente K, Hidalgo JLT, Herráez MJS, et al. 2014 ; Boucher NA, 2017)ことから、ACP 実施という行動を理解し影響要因を明らかにする枠組みとして計画的行動理論(Ajzen I, 1991)を用いた。計画的行動理論では、直接的、かつ重要な行動の予測因子として、行動の実施に対する「意図」を挙げており、意図を強化する因子として、態度、主観的規範、行動コントロール感を仮定している。

20 歳以上の日本在住の国民 446 人を対象に、インターネットでの全国アンケート調査を実施した。ACP を実施することとは「あなたの死が近い場合に、医療や療養生活について、してほしいことやしてほしくないことを考える」「あなたが意思決定できなくなったときに備えて、あなたの代わりに医療や療養生活に関する方針を決めてほしい人(代理人)を選定する」「あなたが考えた医療や療養生活についての希望や代理人を文書に記す」「あなたの希望について医療者に相談する」「これらの情報を医療者や代理人と共有し、定期的に見直す」の 5 項目とし、このうち 1 項目でも実施した人を ACP 実施群、それ以外を ACP 未実施群とした。この 2 群において、ACP の実施意思、ACP 実施に対する態度、主観的規範、ACP 実施のコントロール感の他、年齢、性別、世帯構成、主観的健康観、経済状況、教育歴、かかりつけ医の有無、過去の人工呼吸器に関する経験、かかりつけ医との相談のしやすさ、医療に対する自律性尺度の意思決定(Autonomy Preference Index:以下 API)についての比較を行った(単変量解析)。次に単変量解析にて有意差のあった項目を独立変数、ACP の実施の有無を従属変数とし、ロジスティック回帰分析を行った。抽出された項目について、ACP の 5 つの項目における関連を相関分析により検討した。

その結果、ACP 実施群は 106 人(23.8%)、ACP 未実施群は 340 人(76.2%)となった。年齢、API 得点、ACP への態度、主観的規範、行動コントロール感、意思、過去の人工呼吸器に関する経験、かかりつけ医の有無、かかりつけ医との相談のしやすさは、ACP 実施群の方が有意に高得点で、肯定的であった。世帯構成、主観的健康観、経済状況、教育歴は 2 群間で有意な差を認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果、年齢(OR:1.020)、主観的規範(OR:3.276)、人工呼吸器の経験(OR:1.997)が ACP 実施に関連する有意な因子として抽出された。年齢においては、ACP5 項目のうち 3 項目で有意な関連が見られ、主観的規範・人工呼吸器の経験ではそれぞれ4項目で有意な関連が見られたが、強い関連を示す項目はなかった。

今回の結果より、ACP 実施という行動に直接影響する要因として、年齢、主観的規範、人工呼吸器の経験が示され、中でも主観的規範が最も大きく影響を与えることが示されたことは新たな知見であった。この結果から、日本では本人がより高齢であれば ACP の実施が受け入れられる可能性が示されたとともに、本人だけでなく家族も ACP に前向きになるような支援や、人工呼吸器装着を具体的にイメージできるような支援を行うことで、ACP が促進される可能性が示唆された。