Factorial structure of nursing practices related to support for decision-making regarding consent for surgery in elderly patients with dementia
概要
令和 4年 3月
松井幸子
主
学位論文審査要旨
査
松
浦
治 代
副主査
谷
村
千 華
同
片
岡
英 幸
主論文
Factorial structure of nursing practices related to support for decision-making
regarding consent for surgery in elderly patients with dementia
(認知症高齢者の手術同意への意思決定支援に関わる看護実践の因子構造)
(著者:松井幸子、山本美輪)
令和4年
Yonago Acta Medica
65巻 70~81頁
参考論文
1. Nursing support for decision-making about surgery as currently offered to
elderly patients with dementia
(認知症高齢者の手術同意への意思決定に関わる看護援助の在り方)
(著者:松井幸子、山本美輪、三好陽子)
平成29年
International journal of Japanese nursing care practice and study
6巻 7頁~23頁
学
位
論
文
要
旨
Factorial structure of nursing practices related to support for decision-making
regarding consent for surgery in elderly patients with dementia
(認知症高齢者の手術同意への意思決定支援に関わる看護実践の因子構造)
目
的
本研究の目的は、認知症高齢者の手術同意への意思決定支援における看護実践の因子構
造を明らかにすることである。
方
法
近畿地域の2次救急病院整形外科病棟に勤務する経験年数3年以上の看護師を対象に無記
名自記式質問紙調査を行った。 松井ら(2017)の先行研究である「認知症高齢者の手術同
意への意思決定支援に関わる看護援助の在り方」の内容分析の結果を基に、看護実践の質
問30項目を作成して内容妥当性を検討した。意思決定支援の看護実践における項目分析で
は、単純統計量を算出し、フロア効果、天井効果を確認し、I-T(Item-Total)相関を算出
した。相関の無い項目を除いた意思決定支援看護実践29項目を観測変数として探索的因子
分析(プロマックス回転)を行い、構成概念妥当性および内的一貫性を検討した。妥当性
の検証は、Kaiser-Meyer-Olkin(KMO)を用いた。信頼性の検証はCronbach’s α係数お
よびI-R(Item-Remainder)相関を算出して検討した。
結
果
対象看護師は112名、性別は女性108名(96.4%)、男性4名(3.6%)、年齢は38.3±9.8歳
(Mean±SD)、経験年数は10年以上が67名(59.8%)であった。 看護実践の因子構造の妥当
性を確認するとフロア効果は1変数、天井効果は2変数で確認されたが、その程度はわずか
であり、また、該当する項目の得点分布を確認したところ偏りが見られるが、今回は尺度
構成ではなく因子構造を明らかにするため分析に加えた。
各因子構造を確認するために、I-T相関を確認したところ0.301~0.783の範囲であっ
た。有意な相関の無い1変数を除外して、29項目の探索的因子分析を行った。因子数を固
有値が1以上と定義して、スクリープロットを確認すると、9.148、3.015、1.574、
1.212、1.087、0.842であり、24項目5因子構造が確認できた。意思決定支援看護実践24項
目の因子分析の結果は、KMO値0.858、Bartlettの球面性検定においては有意差が有り
(P < 0.001) 観測変数の妥当性が示された。また固有値1以上の因子5つ(【医療者協働
による認知症高齢患者のアドボカシーの実現】【患者・家族の生活・価値観を考慮した助
言】【認知症高齢患者の理解を深める支援】【認知症高齢患者の意思表出支援】【認知症
高齢患者のICへの立ち会い】)が抽出された。意思決定支援看護実践24項目のCronbach’s
α係数を求めたところ0.926と高値を示した。下位因子のCronbach’s α係数は、0.773から
0.906だった。
考
察
認知症高齢患者の手術同意における意思決定支援の看護実践項目について、KMO値
0.858、Bartlett球面性検定では有意 (P < 0.001)であったことより、24観測変数の妥当
性が示され分析が妥当であったと考えられる。また、固有値1以上の5因子が抽出され、累
積寄与率は66.821%、第1因子から第5因子のCronbach’s α係数は0.773から0.906であり、
高い整合性を示していた。意思決定支援看護実践24項目のCronbach’s α係数は0.926であ
ったことから抽出された因子は、意思決定支援看護実践因子として妥当であると判断し
た。
次に抽出された5因子の解釈をして内容の妥当性を確認した。がん患者の意思決定支援
および急性期病棟の看護実践力の因子について比較すると、他のこれらの看護領域にはみ
られなかった因子として、【認知症高齢患者の理解を深める支援】【認知症高齢患者の意
思表出支援】が挙げられる。認知症高齢患者の対象理解がいかに難しいか、それ故、患者
の意思を確認し患者を知ろうとする姿勢や理解を深めることの重要性を示しているといえ
る。看護師は、認知症疾患別の症状やその対応を理解した上で、患者・家族との意図的な
コミュニケーションを通して、患者の主観的体験や意思を知ることが重要である。
結
論
近畿地域の2次救急病院整形外科病棟に勤務する経験年数3年以上の看護師に、認知症高
齢患者の手術同意における意思決定支援に関わる看護実践について自記式質問紙調査を行
った。意思決定支援看護実践項目を用いて探索的因子分析(プロマックス回転)を行っ
た。認知症高齢者の手術同意のための意思決定支援に関する看護実践の因子構造として、
5因子24項目が示され、また、その因子構造の信頼性と構成概念妥当性が示された。