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大学・研究所にある論文を検索できる 「Adiponectin Stimulates Exosome Release to Enhance Mesenchymal Stem-Cell-Driven Therapy of Heart Failure in Mice」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Adiponectin Stimulates Exosome Release to Enhance Mesenchymal Stem-Cell-Driven Therapy of Heart Failure in Mice

中村, 勇斗 大阪大学

2021.04.30

概要

〔目的(Purpose)〕
 エクソソーム(Exo)は直径30–100nmの細胞分泌小胞であり、産生細胞の不要物排出を通じて細胞の機能維持に働くのみならず、様々な生理活性タンパクや核酸の細胞間伝達を媒介することで、細胞・組織・個体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。近年急速に臨床開発が進められている間葉系幹細胞(MSCs)移植療法の治療効果は、MSCs自体の多分化能や産生するサイトカインのみならず、Exo分泌を媒介とした作用が示唆され、心不全や糖尿病など多様な疾患に対して臨床的治療効果が示されている。
 アディポネクチン(APN)は3量体、6量体、及び18量体以上の多量体を形成して脂肪細胞から特異的かつ多量に分泌される善玉アディポサイトカインとして知られる。様々な臨床研究より活性分子種とされる多量体アディポネクチンは、GPIアンカー型膜蛋白T-カドヘリン(T-cad)に高親和性に結合することで心血管・骨格筋組織に集積し、心血管保護、骨格筋再生促進作用を発揮する。最近、多量体APNは細胞膜上のT-cadと共に細胞内に集積し、Exo産生を促進し、血中Exoレベルをも規定することを報告した。本研究では、APNによるExo産生制御がMSCsを用いた細胞治療に果たす役割を、圧負荷心不全モデルを用いて検討した。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
 本研究で使用したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(hMSCs)はT-cadを発現し、多量体APNにより培養上清中Exo画分の複数のExo特異的マーカータンパクが濃度依存的に増加すること、さらにはそのExo産生増加作用はT-cadに依存することを見出した。そこで本細胞を用い、大動脈縮窄(TAC)処置によるマウス圧負荷心不全モデルでの治療効果を検討した。野生型(WT)マウスではTAC処置2週間後に心機能が低下し、2週間に計6回のhMSCs尾静脈投与により心機能が有意に改善した。尾静脈投与したhMSCsは主に肺に集積することに加え、投与細胞由来Exoが血中に産生されていることを確認した。投与したhMSCsと生体のAPNとの関連を検討するため、APN欠損マウスを用いて検討を行った。APN欠損マウスへの投与ではWTに比して血中へのExo産生が有意に減弱することを見出した。そこで、APN欠損マウスにTACを処置し、MSCsを投与したところ、血中Exoの有意な増加を認めず、また心機能の有意な改善を認めなかった。一方で、WTマウスにおいてPPARγ作動薬投与により血中APN量を増加させたところ、MSCs投与による血中Exo量がさらに有意に増加し、心機能改善効果も有意に増強したが、これらの効果はAPN欠損マウスでは認められなかった。また、hMSCsに発現しているT-cadをノックダウンした細胞(siTcad-MSCs)では、WTマウスへの投与でも血中Exoの増加が認められず、心機能の改善効果も有意に減弱した。最後に、hMSCs投与による治療効果がExoを介するかを検討した。本細胞においてExo生合成複合体構成蛋白の一種であるAlixをノックダウンすることで、hMSCsの多分化能やサイトカイン産生に影響せず、Exo産生を顕著に抑制できた。このようなExo産生能欠損hMSCs(siAlix-MSCs)を投与したところ、血中Exoの増加が認められず、心機能も有意な改善を示さなかった。これらの心組織及びhMSCs産生Exoについて、RNA-seqによる網羅的な解析を実施した。心組織の変動遺伝子を抽出しPathway解析を実施したところ、hMSCs由来Exoに含まれる複数の主要なmiRNAsに関連する遺伝子発現変動が見いだされた。さらにmiRNAデータベースを用いた解析から、変動遺伝子群にはhMSCs由来ExoのmiRNAが直接的に影響を及ぼす遺伝子が複数含まれていた。これらの事から、本モデルにおいてhMSCs由来Exoが直接的に心機能の改善に寄与していることが示唆された。

〔総 括(Conclusion)〕
 本検討により、hMSCsの全身投与が圧負荷心不全モデルの心機能を改善すること、hMSCsの産生するExoが本治療効果発現に重要であること、多量体APNはhMSCsのT-cadを介してExo産生を促進すること、血中APN濃度を増加させることで治療効果を促進できることを明らかにした。
 以上の結果は、肥満・内臓脂肪蓄積に伴う低APN血症が、幹細胞医療の治療効果に影響し得ること示唆しており、血中APNを増加させることで臨床的治療効果を促進できる可能性がある。また、全身の組織常在性MSCsの産生するExoがAPNに知られる多様な臓器保護作用の一端を担っている可能性をも示すものである。

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