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大学・研究所にある論文を検索できる 「Treatment with adipose-derived regenerative cells enhances ischemia-induced angiogenesis via exosomal microRNA delivery in mice」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Treatment with adipose-derived regenerative cells enhances ischemia-induced angiogenesis via exosomal microRNA delivery in mice

加藤, 友大 名古屋大学

2021.07.20

概要

【緒言】
 重症虚血肢(critical limb ischemia: CLI)は、虚血が原因で四肢の安静時疼痛や皮膚潰瘍、壊疽を発症する病態である。外科治療、血管内治療の進歩にもかかわらず、虚血が進行し治療不可能な病態へと進展し下肢切断が免れない患者が未だに多い。遺伝子導入やタンパク、もしくは幹細胞・前駆細胞などを用いて虚血組織での血管の再生を促し、血流の回復を意図する血管新生療法は、CLI において有望な治療法として期待されている。脂肪組織中の間葉系幹細胞・前駆細胞として知られている脂肪組織由来間葉系前駆細胞(adipose-derived regenerative cells: ADRCs)は、Zuk らによって 2001 年に報告され、虚血肢へ移植することで血流を大きく改善することが示されている。今までに、成長因子を含む ADRCs の傍分泌作用が血管新生効果の主要な機序と考えられていたが、近年、マイクロ RNA(miRNA)が傍分泌における重要な因子として急速に注目されてきている。しかしながら、ADRCs が虚血肢において血管新生効果を示す際に、それらが果たす役割に関しては未解明な点が多い。
 本研究では、ADRCs のエクソソーム分泌を薬物的に阻害することで、マウス下肢虚血モデルにおける ADRCs の血管新生効果が阻害されることを示した。さらに、エクソソームに含まれる特定の miRNA の血管内皮細胞への移行が ADRCs のもつ血管新生効果に関与していることが示唆された。

【方法・結果】
 マウス下肢虚血モデルにおいて、GW4869 は ADRCs の血管新生作用を抑制する。 (Fig.1.)
 ADRCs の血管新生作用と ADRCs から分泌されたエクソソームの関係を評価するため、マウスの大腿動脈を結紮して下肢虚血モデルを作成し、エクソソーム阻害剤で処理した ADRCs を虚血肢に移植した。既知のエクソソーム阻害剤のうち、GW4869 と manumycin A の 2 つを選択した。GW4869 は中性スフィンゴミエリナーゼを阻害することでセラミド合成を阻害し、また、manumycin A はファルネシストランスフェラーゼを阻害することで Ras 活性を阻害する。下肢虚血モデルを作成した翌日に ADRCsを虚血肢に移植し、7 日後、14 日後の下肢血流をレーザードップラー法にて評価した。 ADRCs を移植した群ではコントロール群と比較してより血流の回復を認めた。また、 ADRCs を移植した群と比較し、GW4869 で処理した ADRCs を移植した群では血流の回復は低下したが、manumycin A で処理した ADRCs を移植した群では有意な差をみとめなかった。ADRCs の分泌するエクソソームの特定の亜集団が血管新生作用に影響していることが示唆された。
 ADRCs の培養上清液は血管内皮細胞の遊走を促進する。(Fig.2.)ADRCs から分泌されたエクソソームが血管内皮細胞に与える影響を調べるため、創傷治癒モデル系を用いて細胞遊走能の評価および細胞増殖能の評価を行った。マウスの血管内皮細胞(MS1)に GW4869 で処理した ADRCs の上清を投与すると、コントロール群と比較し MS1 細胞の遊走能は低下した。一方で、増殖能に違いはみられなかった。
 GW4869 は miRNA の分泌を抑制することで ADRCs の血管新生作用を抑制する。 (Fig.3.)
 最近の報告ではエクソソーム中の miRNA が標的細胞に取り込まれることで miRNAが細胞に作用を及ぼすことが示されている。ADRCs が分泌するエクソソームによる血管新生作用の分子メカニズムを調べるため、miRNA に着目した。既知の血管新生作用をもつ 10 個の miRNA の発現を、ADRCs から分泌されるエクソソームにおいて定量的 PCR 法で定量すると、GW4869 で処理した ADRCs の群ではコントロール群と比較し miRNA-21(miR-21)、 miR-27、 miR-322 および let-7i の発現が低下していた。一方で、これらの miRNA の発現は ADRCs 中では有意な低下をみとめなかった。また、エクソソームのマーカーである ALIX のタンパク質の発現量を免疫ブロット法で確認したが、GW4869 で処理した群とコントロール群で発現量に有意な差をみとめなかった。エクソソーム中の miRNA が MS1 細胞におよぼす作用を確かめるため、miRNA の標的 mRNA の定量評価を行った。GW4869 で処理した ADRCs の培養上清液から分離したエクソソームを MS1 細胞に投与し、MS1 細胞中の mRNA の発現量を確認すると、コントロール群と比較して、miR-21 の標的遺伝子である Smad7 および Pten、miR-322の標的遺伝子である Cul2 の発現量が上昇していた。
 以上から、ADRCs のもつ血管新生作用は ADRCs が分泌するエクソソームに含まれる miRNA の特定の亜集団が関与していると考えられた。(Fig.4.)

【考察】
 本研究より、ADRCs の分泌するエクソソームの亜集団が虚血肢における血管新生を促進し、この作用には、血管内皮細胞において血管新生促進的に作用する miRNA が関与していることが明らかとなった。
 近年、細胞から分泌される細胞外小胞は重要な細胞間情報伝達因子として注目されている。細胞外小胞はエクソソソームと微小小胞体からなり、異なる組成と機能を持つ様々な集団から構成されていることが知られている。エクソソームの生合成に関しては 2 つの経路が知られており、本研究では、異なる経路を阻害するエクソソームの阻害剤である manumycin A、あるいは GW4869 で処理した ADRCs を移植すると虚血肢の血流回復に違いが見られた。このことから、ADRCs の血管新生作用においてエクソソームの亜集団は異なった役割をもつことが示唆された。
 本研究では、GW4869 で処理した ADRCs の分泌するエクソソームにおいて、miR-21、 miR-27、miR-322、let-7i の発現量が減少していた。また、MS1 細胞における Smad7、 Pten、Cul2 の発現量は、GW4869 で処理した ADRCs より分泌されるエクソソームによって増加した。TGF-β ファミリー、PI3K シグナル伝達経路はそれぞれ血管新生において重要な役割を果たすが、miR-21 の直接の標的遺伝子である SMAD7 は TGF-β ファミリー、PTEN は PI3K シグナル伝達をそれぞれ阻害することが示されている。また、 miR-424 およびそのマウスオルソログ miR-322 は、CUL2 の発現量を低下させ、血管新生に重要な因子である HIF の安定化をもたらすことが示されている。
 本研究において、エクソソームに含まれる成長因子やサイトカインが血管新生に寄与している可能性は残るが、ADRCs より分泌されるエクソソームに含まれる miRNAが内皮細胞において主要なシグナル伝達経路を調節し、虚血肢における血管新生を促進することが示唆された。今後 ADRCs 由来のエクソソームを用いた血管新生療法への応用に寄与すると考えられる。

【結論】
 虚血肢において ADRCs のもつ血管新生作用は、ADRCs が分泌するエクソソームに含まれる特定の miRNA が関与していることが示唆された。

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