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Direct reprogramming of adult adipose-derived regenerative cells toward cardiomyocytes using six transcriptional factors

成田, 伸伍 名古屋大学

2023.05.30

概要

主論文の要旨

Direct reprogramming of adult adipose-derived
regenerative cells toward cardiomyocytes using six
transcriptional factors
6つの転写因子を用いた成体脂肪組織由来間葉系前駆細胞の
心筋細胞へのダイレクトリプログラミング法

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

循環器内科学分野

(指導:室原 豊明
成田 伸伍

教授)

【緒言】
脂肪組織由来間葉系前駆細胞(Adipose-derived regenerative cells; ADRCs)は、骨髄由
来の幹細胞と同様の特徴を持つ、皮下脂肪組織内に存在する幹細胞であり、虚血性心
疾患をはじめとした心血管病に対する再生細胞治療の供給源として有望視されている。
ADRCs を心筋細胞へと分化させる試みは多く報告されているが、目的の遺伝子を導入
し直接細胞の性質を変えるダイレクトリプログラミングを用いた分化誘導法について
は今まで検討はされていない。今回我々は、このダイレクトリプログラミング法を用
いて、ADRCs を心筋細胞へと分化誘導が可能であるか、また、その誘導細胞が心臓再
生治療として有用であるかを検証した。
【方法】
成体の alpha-myosin heavy chain promoter - enhanced green fluorescent protein(αMHCEGFP)トランスジェニックマウスより抽出した ADRCs に対して、レンチウイルスベ
クターを用いて遺伝子導入を行い、心筋細胞への分化誘導の検証を行った。候補因子
については、次世代シーケンサー(Next generation sequencer; NGS)を用いたトランスク
リプトーム解析を行い、胎生 11.5 日のマウスの心臓組織から抽出した mRNA と 8 週
の成体マウス由来 ADRCs から抽出した mRNA とを比較検討した。ダイレクトリプロ
グラミングによる分化誘導を行った ADRCs の特徴を、定量 PCR、細胞免疫染色、RNA
シークエンス解析にて評価した。
続いて、心筋様細胞へと誘導に成功した ADRCs の心臓再生効果について、急性心
筋梗塞モデルマウスを用いて検証を行った。ダイレクトリプログラミングを行い 1 週
間培養後の ADRCs を、作成した急性心筋梗塞モデルマウスの梗塞エリアに細胞移植
し、心臓超音波による心機能評価および、組織学的評価によって検証した。
【結果】
NGS 解析により、ADRCs と比べて胎生期の心臓組織で豊富に発現している遺伝子
の中で、心筋細胞への分化に関わると考えられる転写因子をリプログラミングの候補
因子として 15 個を同定した(Figure 1A)。その中から、発現量の多い上位 10 の転写因
子(10 因子)を ADRCs へと遺伝子導入することで、1、2 週間前後より αMHC-EGFP 陽
性細胞を観察するに至った(Figure 1B)。さらに 10 因子から 6 因子(Gata6、Gata4、
Mef2a、Baf60c、Klf15、Myocd)へと導入因子を絞り込むことで、心筋細胞への分化誘
導を示す GFP 陽性細胞の発現がより効率的であり、フローサイトメトリーにて約 5%
の陽性細胞が得られることが明らかとなった(Figure 1C)。定量 PCR にて、この 6 因
子誘導 ADRCs(6F-ADRC)は、Myh6 を始め、Actc1、Tnnt2 といった心筋特有の遺伝子
発現が有意に上昇していることが示された(Figure 1D)。α-サルコメリックアクチンに
よ る 細 胞 免 疫 染 色 に お い て 、 ア ク チ ン 繊 維 骨 格 を 有 す る GFP 陽 性 細 胞 を 観 察 し た
(Figure 1E)。
6 因子誘導により得られた αMHC-EGFP 陽性細胞(GFP+6F-ADRC)をソーティングし、

-1-

RNA シークエンス解析を行うと、Myh6、Actc1、Tnnt2 を含む複数の心筋関連遺伝子の
発現が示され、この発現分布は成体マウスの心室心筋細胞と類似していることが明ら
かとなった(Figure 2A)。gene ontology 解析では、GFP +6F-ADRC にて有意に発現が多
い遺伝子群の特徴をみると、心筋細胞としての性質を示した遺伝子群であることが明
らかとなった(Figure 2B)。シングルセル RNA シークエンスにおいては、EGFP を発現
する ADRCs のクラスターと分布を同じくして複数の心筋遺伝子が細胞単位において
同時に発現していることが示された(Figure 2C)。
続いて、6F-ADRC を、作成した急性心筋梗塞モデルマウスの梗塞部位に細胞移植し、
1ヶ月の経過を評価した(Figure 3A)。遺伝子の誘導を行っていない ADRCs(Control
ADRC)群 と 比 較 し て 、 6F-ADRC 移 植 群 で は 生 存 率 が 有 意 に 改 善 す る 結 果 と な っ た
(Figure 3B)。心臓超音波検査では、6F-ADRC 移植群と Control ADRC 移植群の左室内
径短縮率(LVFS)の差が経時的に明確になり、21、28 日目においては、6F-ADRC 移植
群で心機能が有意に改善する結果となった(Figure 3C)。組織学的評価では、梗塞面積
および全左室面積は、6F-ADRC 群で有意に減少し(Figure 3D)、梗塞巣内に生着した
ADRC の数は、6F-ADRC 群で有意に多いことが明らかとなった(Figure 3E)。定量 PCR
の結果から、6F-ADRC は、誘導していない ADRCs と比較して、血管新生因子である
VEGF-A、VEGF-B が同程度の発現であることが示されている(Figure 3F)。免疫組織染
色では、移植された 6F-ADRC が梗塞境界領域で観察され、cardiac troponin T(cTnT)と
VEGF-B の発現が認められた(Figure 3G)。CD31 免疫染色では、梗塞内における血管新
生が 6F-ADRC 群において有意に促進していることが示された(Figure 3H)。
【考察】
本研究により、6 因子を用いたダイレクトリプログラミングによって、ADRCs を心
筋様細胞へと分化誘導する新たな方法が示された。誘導された ADRCs は、約 5%の
αMHC-EGFP 陽性細胞を認め、陽性細胞からは複数の心筋遺伝子が発現し、心筋細胞
としての特徴を有していることが遺伝子解析の結果から明らかとなった。さらに、6 因
子導入 ADRCs を急性心筋梗塞の病巣に移植した場合、心筋様細胞としての性質を維
持したまま、より親和性を持って梗塞境界部に長期間生着することが示された。iPS 細
胞より誘導された心筋細胞は、移植モデルにおいて高い生着率を得るための最適な分
化段階が存在することが報告されており、同様に 6 因子導入 ADRCs の心筋様細胞へ
の分化過程が生着率の向上に寄与したと推察される。加えて、6F-ADRC は、VEGF-A、
VEGF-B といった血管新生因子を誘導前 ADRCs と同様に分泌することにより、パラク
ライン作用を介した血管新生を促すことで生存率の向上、心機能の改善、左室リモデ
リングの抑制効果を示す結果に繋がったと考えられる。
現在の心臓移植は効果的な治療法であるが、ドナー不足から移植待機者、待機期間
は増加の傾向を示しており、新しい心臓再生治療の実用化が強く望まれている。心臓
再生治療の最新の研究としては、iPS 細胞から再生心室筋細胞を精製し、心筋球とし
て移植する方法や、シート状に加工して移植する方法の開発が進められている。iPS 細

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胞由来心室筋細胞は、移植により心室筋としての性質を発揮することで心不全を根本
から治療することができるものと考えられている。一方で、臨床実用化への課題とし
ては、腫瘍形成、不整脈誘発などの副次的作用の懸念があり、また大量培養に対して
大きなコストが発生すること、他家移植における免疫反応といった点が残されている。
これに対し、ADRCs を用いた再生治療の利点として、①脂肪組織という豊富な供給源
と ADRCs が大量培養可能という性質から、自家移植が可能であり、コストや宿主免
疫反応の問題は解決できること、②すでに ADRCs 自体は臨床研究として移植が実施
されており、安全性については一定の成績を得ていること、③同時に心機能改善効果
も示唆されていること、が挙げられる。
本研究の結果から、6 因子で誘導された ADRCs は、心室筋として病的組織を完全な
心筋組織へと再生する効果までは至っていないが、これまでの未誘導の ADRCs 移植
と比較してより親和性を持って組織に生着し、血管新生を介した心臓再生効果を示し
ている点で、再生治療の選択肢として進歩した方法であると考える。ADRCs を心臓再
生治療へ用いることは、先行の臨床研究から安全性が確認されており、実用的な手段
であると考えられる。そして、このダイレクトリプログラミング法をより改良し、
ADRCs を心筋細胞へと近づけることができれば、さらなる発展が生まれるものと期待
できる。
【結語】
我々は、新しいダイレクトリプログラミング法を開発するに至った。独自に特定し
た 6 つの転写因子を、成体マウス由来の ADRC に遺伝子導入することにより、ADRCs
が心筋細胞と類似した遺伝子発現パターンを示すことを明らかとした。さらに、6 因
子誘導 ADRCs を虚血性心疾患モデルマウスに細胞移植することで、心臓の再生治療
効果を示す結果を得た。今後、さらに誘導方法を改良し、またヒト ADRCs にも同様の
誘導方法を適用することで、心臓再生治療に向けた発展が期待される。

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