リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「2型糖尿病患者における左室長軸方向心筋障害に対する心拍数の影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

2型糖尿病患者における左室長軸方向心筋障害に対する心拍数の影響

山内, 由貴 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Effect of heart rate on left ventricular
longitudinal myocardial function in type 2
diabetes mellitus

山内, 由貴
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8499号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482247
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Effect of heart rate on left ventricular longitudinal myocardial function
in type 2 diabetes mellitus

2 型糖尿病患者における左室長軸方向心筋障害に対する心拍数の影響

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
循環器内科学
(指導教員:平田

健一 教授)

山内 由貴

【背景】
左室駆出率(LVEF)が保持された心不全(HFpEF)は、全心不全患者の約半
数を占めており、さらに年々増加の一途を辿っている。心不全をステージ分類し
た際のステージ A 心不全は HFpEF の発症に非常に重要であり、長期的に心不全
の発症を予防するための管理が必要である。2 型糖尿病(T2DM)は心不全の危
険因子として知られており、高血圧と同様にステージ A 心不全の併存疾患とし
て重要である。GLS(global longitudinal strain)で示される左室長軸方向心筋障害
は左室心筋機能の早期のわずかな異常を見つけることできるマーカーであり、
様々な心疾患の転帰予測に有用である。LVEF、僧帽弁口血流速波形の拡張早期
波高(E)と僧帽弁輪運動速波形の拡張早期波(e')の比(E/e’)などの従来の
心エコー指標よりも優れていることが報告されている。ステージ A の心不全患
者は左室長軸方向の心筋機能が早期より低下しており、左室心筋障害の早期の
マーカーとなるため、心血管系の疾患の罹患率や死亡率に関連がする可能性が
ある。したがって左室長軸方向の心筋機能障害は、T2DM 患者や明らかな心不全
症状を伴わず LVEF が保持されている患者において、左室心筋障害の感度の高
いマーカーであり、糖尿病性心筋症のマーカーと考えられる。
安静時心拍数が高いことはさまざまなタイプの心不全患者、特に左室収縮能
の低下した心不全(HFrEF)患者の心血管系疾患に関連があることが知られてお
り、心拍数を低下させることは HFrEF 患者に良い転帰を与えるとされる。しか
し安静時心拍数が T2DM 患者の左室長軸方向の心筋機能に及ぼす影響について
は不明な点が多い。そこで本研究の目的は、冠動脈疾患を伴わず、左室駆出率が
保持されている無症候性 T2DM 患者における安静時心拍数と左室長軸方向の心
筋機能との関係を検討することである。
【方法】
2013 年 6 月から 2020 年 3 月までに神戸大学医学部附属病院に入院した、LVEF
が保持された無症候性 T2DM 患者 192 例を対象とした。冠動脈疾患の既往歴、
LVEF < 50%、開心手術または先天性心疾患の既往歴、重度の腎機能障害(GFR
< 30mL/min/1.73m²)、180/100 mmHg を超えるコントロール不良な高血圧、中等
度以上の心臓弁膜症、心房細動を有する症例は除外した。すべての患者は入院中
にトレッドミル運動や薬剤負荷心筋シンチグラフィなどのスクリーニング検査
を受け、虚血反応を示した患者は除外された。T2DM の診断は世界保健機構の基
準に基づいて行った。比較のために、年齢、性別、LVEF をマッチさせた、糖尿
病歴及び心血管疾患の既往のない 81 人を正常対照群とした。すべての T2DM 群
と正常対象群は経胸腔心エコー図検査を受け、全ての心エコー図指標は、米国心
エコー図学会のガイドラインに従った。GLS は二次元スペックルトラッキング

法を用いて算出し、左室心筋機能障害のカットオフ値は GLS < 18%とした。安
静時心拍数の計測は心エコー検査時の平均心拍数とし、過去の心不全に関する
研究に基づき安静時の心拍数 70 bpm 以上を心拍数高値と定義した。
【結果】
T2DM 患者 192 人の平均年齢は 61 ± 13 歳、92 例(48%)が女性、LVEF は 66
± 5%(全例 ≥ 55%)であった。ベースラインデータでは、T2DM 患者は体重、
収縮期血圧、心拍数が高く、高血圧と脂質異常症の有病率が有意に高いことが示
された。心エコー図データからは、左房容積係数(LAVI)、左室心筋重量(LVMI)、
E/e'が有意に高値であり、GLS が有意に低値であった。T2DM 患者では 101 例で
安静時心拍数が 70 bpm 以上であったのに対し、正常対照群では 33 例であった。
一方、安静時心拍数 70 bpm 以上の T2DM 患者の GLS は、安静時心拍数 70 bpm
未満の T2DM 患者よりも有意に低値であった(16.3 ± 4.2%、17.8 ± 2.8%、P=0.03)。
T2DM 患者の左室心筋障害を同定するための単変量および多変量解析を行う
と、単変量解析では、年齢、心拍数 70 bpm 以上、HbA1c、LVEF、LVMI が左室
長軸方向心筋機能障害と有意に関連していた。多変量解析では、心拍数 70 bpm
以上(オッズ比:1.042、95%CI:1.012 - 1.074、P=0.006)は、HbA1c、LVEF、
LVMI と同様に、T2DM 患者の左室長軸方向心筋障害と独立した関連因子であっ
た。しかし正常対象群では T2DM 患者とは異なり、心拍数 70 bpm 以上を含む全
ての指標がいずれも左室長軸方向心筋障害と関連していなかった。
GLS < 18%を規定する逐次投入法による多変量ロジスティック回帰解析では、
年齢・性別・高血圧・HbA1c を含むモデル(χ2=10.6)に LVEF と E/e’を追加する
とその精度が高まり(χ2 = 33.4、p<0.001)、さらに心拍数 70 bpm 以上を加えると
より精度が高まることが示された(χ2 = 44.6、p<0.001)。
【考察】
本研究の結果から,T2DM 患者では安静時心拍数の増加は左室長軸方向心筋
障害と有意に関連していることが示唆されたが、年齢,性別,LVEF をマッチさ
せた正常対照群ではそのような結果は認められなかった。
T2DM は心不全の危険因子としてよく知られており、高血圧と同様にステー
ジ A 心不全の併存疾患として重要である。LVEF が保持された T2DM 患者では、
冠動脈疾患や心不全症状を伴わない左室長軸方向心筋障害の存在が確認されて
おり、T2DM の早期の心筋障害と考えられている。さらに前述の如く、T2DM は
高血圧と同様に左室拡張機能障害を主体とした HFpEF の主な原因疾患である。
T2DM の心筋病変の進行は、左室拡張機能障害に先行して左室長軸方向心筋障
害が発生すると言われている。したがって、糖尿病性心筋症として知られる

T2DM による左室の心筋障害を検出するためには、左室長軸方向の心筋機能を
評価することが将来の HFpEF の予防のためにも有望であると考えられる。
安静時心拍数の増加はさまざまなタイプの心不全患者に悪影響を与えるが、
T2DM 患者における心拍数と左室機能に与える影響についての過去の研究は極
めて少ない。心拍数と左室拡張機能との関連を評価した研究では、左室拡張機能
障害のある T2DM 患者は、左室拡張機能障害のない T2DM と比較し有意に心拍
数が高いことが示され、心拍変動パラメータが有意に低いことが示された。本研
究では、心拍数 70 bpm 以上の T2DM 患者では、心拍数 70 bpm 未満の T2DM 患
者に比べて左室長軸方向心筋機能が有意に低下することが示されたが、正常対
照群ではそのような所見は認められなかった。さらに、多変量ロジスティック回
帰分析では、心拍数 70 bpm 以上は T2DM 患者の左室長軸方向心筋機能障害と独
立して関連していた。これらの結果は、2 型糖尿病患者では心拍数高値による左
室の早期の障害を示している可能性があると考えられた。
新規の心拍数低下薬(HCN チャネル遮断薬)であるイバブラジンは、洞調律
で安静時心拍数 70 bpm 以上の HFrEF 患者に対して、プラセボ投与群と比較し
て、心血管死や心不全悪化による入院などの主要エンドポイントの発生リスク
が 18%減少することが示されている。HFpEF 患者においても、心拍数の上昇は
全死因死亡や心血管系入院のリスクが有意に高いことと関連があるが、ステー
ジ A を含む HFpEF 患者への徐拍化の有益性はまだ明らかではない。以上の結果
から、LVEF が保持された、安静時心拍数 70 bpm 以上の無症候性 T2DM 患者に
おいて、ステージ B 心不全への進展を抑制するために、イブラジンなどによる
薬剤での徐伯化を行うことが重要であると考えられた。
【結語】
T2DM 患者では、心拍数と左室長軸方向の心筋機能は密接に関連していた。安
静時心拍数 70 bpm 以上かつ左室駆出率が保持された T2DM 患者においては、心
拍数の管理が心不全の進展予防につながる可能性が示唆された。

神戸 大 学 大 学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 霊 査 の 結 果 の 霙 芦
第 3243号





受付番号



山 内 由貴

E
f
f
e
c
to
fh
e
a
r
tr
a
t
eonl
e
f
tv
e
n
t
r
i
c
u
l
a
rl
o
n
g
i
t
u
d
i
n
a
lmyocardial
f
u
n
c
t
i
o
ni
nt
y
p
e2d
i
a
b
e
t
e
sme
l
l
i
t
us
2型糖尿病患者における左室長軸方 向心筋 障害に対する 心拍数 の 影

論文題目



T
i
t
leo
f
Dis
s
e
r
t
a
t
i
o
n

主 査

ChiefExamin
e
r
審査委員

Examiner

副 査

V
i
1
ce
exam1n
e
r
副 査

V
i
1
c
eexam1n
e
r

喜D 三

\\}✓¥'Iiくなニ

託[野賓月

(要旨は 1
, 000字∼ 2
, 000字程度)


背景 】左室駆出率 (
LV
EF)が保持された 心不全 (
HFpEF
) は、全心不全患者の約半数を
占めており、さらに年々増加 の一途を 辿 っている。 心不全をステージ分類した際のステー
ジ A 心不全は HFpEFの発症に非常に重要であり、長期的に 心不全の発症を予防するため
の管理が必要である。 2型糖尿病 (T2DM) は心不全の危険 因子として 知 られており、高
g
l
o
b
a
ll
o
n
g
i
t
u
d
i
n
a
l
血圧と同様にステージ A 心不全の併存疾患として重要である。 GLS (
s
t
r
a
i
n
)で示される左室長軸方向心筋障害は左室心筋機能の早期 のわずかな異常を見つける

こと で きるマー カーであり 、様々な心疾患の転帰予測 に有用である。 LVEF、僧帽弁 口血流
E) と僧帽弁輪運動速波形の拡張早期波 (
eI )の比 (
E
/
e
')など
速波形の拡張早期波高 (

の従来の心エコ ー指標よ りも優れているこ とが報告されている。ステージ A の心不全患者
は左室長軸方 向の心筋機能が早期 より 低下しており、左室心筋障害の早期のマーカーとな
るため 、心血管系の疾患の罹患率や死亡率に関連がする可能性がある 。 したがって左室長
軸方向の心筋機能障害は 、T2D M患者や明らかな心不全症状を 伴わず LVEFが保持されて
いる 患者において、 左室心筋障害の感度の高いマーカーであり 、糖尿病性心筋症のマーカ
ーと考えられる。

方法 】2013年 6月から 2020年 3月までに 神戸大学医学部附属病院に入院し た、LVEF
が保たれた無症候性 T2DM 患者 192例 を対象とした。冠動脈疾患の既往歴、 LVEF<50%、
GF
R<30m
L/
m
i
1
1
/l
.73m


開心手術 または先天性心疾患の既往歴、重度の腎機能障害 (
1
80
/
100mmH
gを超える コントロール不良な高 血圧、中等度以上の 心臓弁膜症、 心房細動

を有する症例 は除外した。すべての患者はト レッドミル運動や薬剤負荷心筋シンチグラフ
ィなどの検査を受け、虚血反応を示した患者は除外された。比較のため、年齢、性別、LVEF
をマッチさせた、糖尿病歴及び心血管疾患の既往のない 81人を正常対照群とした。心エ
コー図指標は、米 国心エコー図学会のガイドラインに従 った。GLSは二次元スペックルト
ラッキング法を用いて算 出し 、左室心筋機能障害のカ ットオフ 値は GLS<18%とした。安
静時心拍数は心エコー検査時の平均心拍数とし、心拍数 70bpm 以上を 心拍数高値と定義
した。
92人の平均年齢は 6
1土 1
3歳
、 92例 (
48%)が女性、 LVEFは 66士 5%

結果 】T2D M患者 1
(全例 ~ 55%) であ った。ベースラインデータでは、 T2DM患者は体重、収縮期 血圧、心

拍数が高く、高 血圧と 脂質異常症の有病率が有意に高か った。心エコ ー図データは、 左房
AVI
)、左室心筋重量 (L
VMI)、E/
e
'が有意に高値で、GLSが有意に低値であ っ
容積係数 (L
0
1例で安静時心拍数が 70bpm以上であ ったのに対し、正常対照群
た。T2D M患者では 1

では 33例 であ った。一方、安静時心拍 数 70bpm以上の T2DM患者の GLSは、70bpm未
満の患者よりも 有意に低値であ った (
16.
3士 4
.2%、 1
7.
8士 2.8%、P=0.
03)。

T2DM患者の左室心筋障害を同定するための単変量および多変量解析を行うと 、単変量

解析では、年齢
、 心拍数 70bpm以上、 HbAlc、LVEF、LVMIが左室長軸方 向心筋機能障
.
0
4
2、9
5% CI
:1
.
0
1
2
害 と有意に関連し、多変量解析では、心拍数 70bpm以上(オッズ比: 1

、 HbAlc、LVEF、LVMIと同様に、左室長軸方 向心筋障害と独立し
-1
.
0
7
4、P=0.006) は
た関連因子であ った。しかし正常対象群では T2DM患者とは異なり、心拍数 70bpm以上
を含む全ての指標がいずれも左室長軸方向心筋障害と関連していなかった。
GLS<1
8%を規定する逐次投入法による多変量ロジスティック回帰解析では、年齢 ・性
別・ 高 血 圧 •HbAlc を含むモデル x,2= 10 .6) に LVEF と E/e' を追加するとその精度が高まり


が= 33.
4、p<0
.
0
0
1)、さらに心拍数 70bpm以上を 加 えるとより精度が高まることが示さ
6、p<0
.
0
0
1
)。
れた(が= 44.


考察 】本研究結果から, T2DM患者では安静時心拍数の増加は左室長軸方向心筋障害と
関連していることが示唆された。
T2DMはステージ A 心不全の併存疾患として重要である。 T2DMの心筋病変の進行は、

左室拡張機能障害に先行して左室長軸方向心筋障害が発生すると言われている。 T2DMに
よる左室の心筋障害を検出するためには、左室長軸方向の心筋機能を評価することが将来
の HFpEFの予防のためにも有望であると考えられる。
T2DM患者における心拍数と左室機能に与える影響についての研究は極めて少ない。心

拍数と左室拡張機能との関連を評価した研究で、左室拡張機能障害のある T2DM患者は、
ない患者と 比較し有意に 心拍 数が高く、 心拍 変動パラメータが有意に低いことが示され
た。本研究では、心拍数 70bpm以上 の T2DM患者では、 70bpm未満の患者に比べ左室長
軸方向心筋機能が有意に低下したが、正常対照群ではそのよ うな所見は認められなかっ
た。さらに、多変量ロジスティック回帰分析では、 心拍 数 70bpm以上 は T2DM患者の左
室長軸方向心筋機能障害と独立して関連していた。これらの結果は、 2 型糖尿病患者では
心拍数高値による左室の早期の障害を 示している 可能性があると 考えられた。

結論 】T2DM患者では、心拍数と左室長軸方向の心筋機能は密接に関連していた。安静
時心拍数 70bpm以上かつ左室駆出率が保持された T2DM患者においては、心拍数の管理
が心不全の進展予防につながる可能性が示唆された。本研究は T2DM患者における心筋障
害の初期の変化と心拍数の影響を明 らかにした点で、重要な知見を得たものとして価値あ
る業績と考える。博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る