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書き出し

光誘起電子移動による芳香族アミンの炭素−窒素結合の切断を伴うボリル化反応の開発

塩塚, 朗 SHIOZUKA, Akira シオヅカ, アキラ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

光誘起電子移動による芳香族アミンの炭素−窒素結合
の切断を伴うボリル化反応の開発
塩塚, 朗

https://hdl.handle.net/2324/6787650
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(理学), 課程博士
バージョン:
権利関係:

(様式3) Form 3





:塩塚



Name

論 文 名

:光誘起電子移動による芳香族アミンの炭素−窒素結合の切断を伴う
ボリル化反応の開発

Title





:甲

Category















Thesis Summary
芳香族アミン類は豊富に存在し、用途が多岐に渡る化合物であるため、芳香族アミン類を対象と
した変換反応の合成的利用価値は高い。これまでに、芳香族アミン類の官能基化反応が数多く開発
されてきたが、その中で有力な手法の 1 つとして、芳香族アミン類の一電子移動を伴う官能基化が
挙げられる。その理由として、芳香族アミン類の一電子酸化が容易に進行することや、一電子移動
後に生じる化学種の高い反応性が挙げられる。一電子移動で生じるアニリノラジカルカチオン、お
よびそこから生じるアニリノラジカルおよびα-アニリノアルキルラジカルは、いずれも高い反応性
を有しており、これらの活性種を経由した芳香族アミン類の種々の変換法が見出されている。一方
で、一電子移動を伴う芳香族アミン類の反応では、その炭素‒窒素結合の切断を伴う官能基化反応は
ほとんど報告されていない。炭素‒窒素結合切断を伴う官能基化反応も有用な合成手法の 1 つであ
る。なぜなら、このような反応は、芳香族化合物の炭素‒窒素結合を結合変換の起点とした反応と見
なすことができ、従来の芳香族化合物の変換反応で起点となっていた炭素‒ハロゲン結合あるいは
炭素‒金属結合に代わる新規合成手段として利用できるためである。炭素‒窒素結合の切断手法とし
て、芳香族アミンの炭素‒窒素結合が高い結合解離エネルギーをもつため、ジアゾニウム塩やアンモ
ニウム塩等に誘導体化し炭素‒窒素結合を活性化する手法、遷移金属と配向基を組み合わせた手法、
あるいは金属還元剤を用いる手法がそれぞれ開発されてきた。しかし、これらの変換手法では、過
剰な活性化剤や特定の官能基をもつ芳香族アミン類の利用が必要である。以上のように、芳香族ア
ミン類の炭素‒窒素結合の切断を伴う反応は進行させることが困難な変換反応であり、一電子移動
を伴う芳香族アミン類の炭素‒窒素結合の切断を伴う反応はほとんど報告されていない。このよう
な背景のもと、本研究では、反応の有用性および芳香族アミン類の一電子移動を伴う新たな反応性
の発現を期待し、光誘起電子移動による芳香族アミン類の炭素‒窒素結合の切断を伴う反応の開発
に取り組んだ。
第 2 章では、光誘起電子移動による芳香族第三級および第二級アミンの炭素‒窒素結合の切断
を伴うボリル化反応の開発について述べる。 芳香族第三級アミンと一電子移動が進行するピレ
ンを光増感剤として用いて種々検討を行った結果、ピレン触媒存在下、シクロメチルペンチルエ
ーテル溶媒中、N,N-ジメチル- 4-アミノビフェニルおよびビスピナコラートジボロン(B2pin2)の混

射することで、炭素‒窒素結合の切

hv (365 nm)



合 物 に 対 し て 紫 外 光 (365 nm)を 照

NR2

CO2
+

Ar

B2pin2

Bpin

cat.
pyrene

Ar

断を伴うボリル化反応が進行する
-e

ことを見出した。副生成物として生
成するアミノボラン(pinB-NR2) が
ボリル化反応を阻害していること
突き止め、二酸化炭素雰囲気下で反

NR2

B2pin2
Ar

Ar

Bpin
Bpin
N
R2
concerted

アニリノ

ラジカルカチオン

pinB–NR2

応を行うことでその阻害効果が抑制され、高収率でボリル化生成物が得られることを見出した。
本反応系は、様々な芳香族アミン類に対して適用可能であり、アミノ基に関する置換基の検討で
は、芳香族第三級アミンに加え、芳香族第二級アミンでもボリル化反応が進行することがわかっ
た。本反応機構は、実験的手法および量子化学計算を用いて明らかにした。その結果、一電子移
動は、芳香族第三級アミンとピレンの励起種間で進行していることが示唆された。また、炭素‒窒
素結合の切断および炭素‒ホウ素結合の形成過程は、協奏機構で進行していることが示唆された。
第 3 章では、芳香族第一級アミン類の炭素‒窒素結合切断を伴うボリル化反応の開発について述
べる。芳香族第一級アミン類は入手容易な芳香族アミンであるため、その炭素‒窒素結合切断を伴う
反応は合成的利用価値が高い。しかし、アミノ基 (-NH2)の高い反応性ゆえに副反応が進行しやすい
ため、反応設計がより困難になる。そのため、芳香族第一級アミン類をジアゾニウム塩等に変換す
ることで炭素‒窒素結合を活性化する手法に限られていた。第 2 章で述べる反応系を芳香族第一級
アミン類に適用したところ、目的の生成物は低収率で得られるのみであった。そこで、芳香族第一
級アミン類に対しても炭素‒窒素結合切断を伴うボリル化反応が効率良く進行する反応系の構築を
目指した。第 2 章で最適化した反応条件を 4-アミノビフェニルに対して適用すると、ボリル化反応
は進行するものの、脱アミノ化反応が主に進行していることがわかった。反応条件の最適化を行っ
たところ、4 当量の B2pin2 存在下、炭酸ジメチル溶媒中、空気雰囲気下、4-アミノビフェニルに対
して可視光(427 nm)を照射させると、脱アミノ化はほとんど進行せず、目的のボリル化反応が高効
率かつ高選択的に進行することを見出した。この反応系は、アニリン誘導体を含む種々の芳香族第
一級アミン類に対して適用可能であることがわかった。分光測定、対照実験および量子化学計算を
用いて反応機構を明らかにした。一電子移動に関して、芳香族第一級アミンの励起種と、一重項酸
素あるいは三重項酸素間で一電子移動が進行していることが示唆された。炭素‒窒素結合の切断お
よび炭素‒ホウ素結合の形成過程は、B2pin2 のアニリノラジカルとの反応で生じるホウ素ラジカル

より炭素‒ホウ素結合が形成さ



の芳香環上へのラジカル付加に
R

+

れ、ヒドロペルオキシラジカルと

-e
-H+

の相互作用により炭素‒窒素結合
の切断が促進されることが示唆
された。

Blue LED (427 nm)
NH2
B2pin2

B2pin2

NH
Ar
アニリノラジカル

air

Bpin
NHBpin

Bpin
R

Bpin
HOO•
NHBpin

pinB–NH2 + O2

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参考文献

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247

第 4 章 総括

本論⽂では、光誘起電⼦移動を伴う芳⾹族アミン類の炭素‒窒素結合の切断を

伴うボリル化反応について述べた。炭素‒窒素結合切断を伴う官能基化反応は、

有⽤な合成⼿法の1つである。しかし、芳⾹族アミン類の炭素‒窒素結合の切断

を伴う反応は、炭素‒窒素結合が強固であるため困難な変換反応であり、⼀電⼦

移動を伴う芳⾹族アミン類の反応はほとんど報告されていなかった。本背景の

もと、筆者は、芳⾹族アミン類の⼀電⼦移動を伴う新たな反応性の発現および反

応の有⽤性を期待し、光誘起電⼦移動による芳⾹族アミン類の炭素‒窒素結合の

切断を伴う反応の開発に取り組んだ。

第2章では、光誘起電⼦移動による芳⾹族第三級および第⼆級アミン類の炭

素‒窒素結合の切断を伴うボリル化反応の開発について述べた。⼀電⼦移動が進

⾏するピレンを光増感剤として⽤いて種々検討を⾏った結果、⼆酸化炭素雰囲

気下、芳⾹族アミンと N,N-ジメチル-4-アミノビフェニルとビスピナコラートジ

ボロン(B2pin2)のシクロメチルペンチルエーテル溶液に対して紫外光(365 nm)

を照射することで、炭素‒窒素結合の切断を伴うボリル化反応が進⾏することを

⾒出した。副⽣成物として⽣成するアミノボラン(pinB-NR2)がボリル化反応を

阻害していることを突き⽌め、⼆酸化炭素雰囲気下で反応を⾏うことでその阻

害効果が抑制され、ボリル化⽣成物が⾼収率で得られることを⾒出した。本反応

系は、様々な芳⾹族アミン誘導体に対して適⽤可能であり、アミノ基に関する置

換基の検討では、芳⾹族第三級アミンに加え、芳⾹族第⼆級および第⼀級アミン

でも本反応が進⾏することがわかった。実験的⼿法および量⼦化学計算により

反応機構解析を⾏い、⼀電⼦移動、炭素‒窒素結合の切断および炭素‒ホウ素結合

の形成過程、pinB-NR2 の阻害効果および⼆酸化炭素の促進効果について検討し

た。その結果、芳⾹族アミンとピレンの励起種との間で⼀電⼦移動が進⾏してい

ることが⽰唆された。また、炭素‒窒素結合の切断および炭素‒ホウ素結合の形成

過程は、協奏機構で進⾏していることが⽰唆された。本反応で副⽣する pinBNR2 は、⼀電⼦移動後に⽣じるアリニノラジカルカチオンと B2pin2 との間での

248

窒素‒ホウ素結合形成段階を阻害していることが⽰唆され、⼆酸化炭素は、pinBNR2 による阻害を抑制していることを明らかにした。

hv (365 nm)

NR2

CO2

Ar

Bpin

cat.

pyrene

B2pin2

Ar

-e

NR2

Ar

アニリノ

ラジカルカチオン

B2pin2

Ar

Bpin

R2

Bpin

pinB–NR2

concerted

第3章では、芳⾹族第⼀級アミン類の炭素‒窒素結合切断を伴うボリル化反応

の開発を⾏った。芳⾹族第⼀級アミン類は⼊⼿容易な芳⾹族アミンであるため、

その炭素‒窒素結合切断を伴う反応は合成的利⽤価値が⾼い。しかし、芳⾹族第

⼀級アミンのアミノ基(-NH2)の⾼い反応性ゆえに副反応が進⾏しやすいため、

芳⾹族第三級アミンに⽐べて反応設計がより困難になる。そのため、従来は、芳

⾹族第⼀級アミンをジアゾニウム塩やピリジニウム塩に変換し、それらの活性

な炭素‒窒素結合に対して切断する⼿法に限られていた。第2章で⾒出した反応

系を芳⾹族第⼀級アミン類に適⽤したところ、⽬的の⽣成物は低収率で得られ

るのみであった。そこで、芳⾹族第⼀級アミン類でも、炭素‒窒素結合切断を伴

うボリル化反応が効率良く進⾏する反応系の構築を⽬指した。第2章で最適化

した反応条件を 4-アミノビフェニルに対して適⽤すると、ボリル化⽣成物は得

られるものの、脱アミノ化反応によるビフェニルの⽣成が主に進⾏しているこ

とがわかった。反応条件の最適化を⾏ったところ、空気雰囲気下、4-アミノビフ

ェニルと 4 当量の B2pin2 の炭酸ジメチル溶液に対して可視光(427 nm)を照射

すると、脱アミノ化はほとんど進⾏せず、⽬的のボリル化反応が⾼効率かつ⾼選

択的に進⾏することを⾒出した。この反応系は、種々の芳⾹族第⼀級アミン、特

249

にアニリン誘導体に対しても適⽤可能であることがわかった。反応機構解析で

は、分光測定、対照実験および量⼦化学計算を⽤いて反応機構を明らかにした。

まず、芳⾹族第⼀級アミンの励起種と⼀重項酸素との間で⼀電⼦移動が進⾏し

ていることが⽰唆された。また、種々の副⽣成物を同定することにより、アミノ

ボラン pinB-NH2 が副⽣していること、B2pin2 の分解が反応系中で進⾏している

ことが⽰唆された。炭素‒窒素結合の切断および炭素‒ホウ素結合の形成過程は、

フリーアリールラジカル中間体を経由していないことが⽰唆され、芳⾹環上へ

のホウ素ラジカルの付加により炭素‒ホウ素結合が形成し、⽣じる中間体とヒド

ロペルオキシラジカルとの反応により炭素‒窒素結合の切断が促進され、本結合

組み換えが進⾏していることが⽰唆された。

Blue LED (427 nm)

NH2

-e

-H+

B2pin2

B2pin2

NH

Bpin

air

Bpin

Bpin

HOO•

NHBpin

NHBpin

Ar

pinB–NH2 + O2

アニリノラジカル

本博⼠論⽂では、光誘起電⼦移動による芳⾹族アミンの炭素‒窒素結合の切断

を伴うボリル化反応について論じた。第2章では芳⾹族第三級および第⼆級ア

ミンを、第3章では芳⾹族第⼀級アミンを基質として⽤い、それぞれについて、

最適な反応条件を⾒出し、基質適⽤範囲を検討し、種々の解析⼿法により反応機

構を明らかにした。それぞれの推定反応機構では、前者はアニリノラジカルカチ

オンを、後者はアニリノラジカルカチオンの脱プロトン化で⽣じるアニリノラ

ジカルをそれぞれ経由して反応が進⾏する。本反応の結合組み換えは、従来のジ

アゾニウムカチオン等に代表される活性な C‒N 結合切断機構である、フリーア

リールラジカルやアリールカチオンの発⽣からの、ラジカルカップリング反応

250

や求核付加反応を経由する脱離→付加機構ではなく、協奏機構あるいは、ラジカ

ル付加→脱離機構で進⾏し、芳⾹族アミンの光誘起電⼦移動による新たな反応

機構に基づく、C‒N 結合切断反応を開発することができた。本切断⼿法は、C‒

N 結合を活性化剤によって活性化する必要がなく、有機合成の観点からも有⽤

な変換⼿法になり得る。本研究の今後の展開として、結合変換の汎⽤性の観点か

ら、上記の新たな切断機構に基いた、C‒B 結合以外の結合形成反応の開発が期

待できる。

251

報文目録

第2章

Photoinduced Deaminative Borylation of Unreactive Aromatic Amines Enhanced by CO2.

Shiozuka, A.; Sekine, K.; Kuninobu, Y.

Org. Lett. 2021, 23, 4774–4778.

第3章

Photoinduced Divergent Deaminative Borylation and Hydrodeamination of Primary Aromatic Amines.

Shiozuka, A.; Sekine, K.; Toki, T.; Kawashima, K; Mori, T.; Kuninobu, Y.

Org. Lett. 2022, 24, 4281−4285.

参考論文

Photoinduced Organic Reactions by Employing Pyrene Catalysts.

Shiozuka, A.; Sekine, K.; Kuninobu, Y.

Synthesis 2022, 54, 2330–2339.

252

謝辞

本研究を遂⾏するにあたり、研究の場を与えてくださり、終始ご鞭撻を賜りま

した、本学教授の國信 洋⼀郎先⽣に⼼から御礼申し上げます。

本博⼠論⽂の副査を担当していただいた本⼤学、先導物質化学研究所物質基

盤化学部⾨⽣命有機化学分野の新藤 充教授および本⼤学、⼯学研究院応⽤化学

部⾨の嶌越 恒教授に深く感謝申し上げます。

本研究の直接のご指導、多⼤な御助⾔及び御激励を頂きました本学助教の関

根 康平先⽣に深く感謝致します。

本研究に関して、多⼤なご配慮及び、討議の場で貴重なご助⾔を頂きました、

現、京都⼯芸繊維⼤学 分⼦化学系 反応・触媒設計学研究室の⿃越 尊助教に深

く感謝致します。

量⼦化学計算でご協⼒を頂きました本⼤学 先導物質化学研究所 分⼦集積化

学部⾨ 理論分⼦科学分野 森 俊⽂ 准教授、川島 恭平 助教 に感謝いたします。

また、研究室での⽣活において、あらゆる機会で助⾔を頂くとともに励まして

下さった國信研究室の皆様に⼼より御礼申し上げます。

最後に、常に温かい⽬で私を⾒守り、何不⾃由なく研究を⾏えるように配慮し

て下さりました⽗、⺟、兄、姉に⼼より感謝致します。

2023 年 1 ⽉ 11 ⽇

253

...

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