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大学・研究所にある論文を検索できる 「炭素―炭素σ結合または炭素―酸素σ結合の切断と炭素―炭素結合および炭素―ヘテロ原子結合同時形成新規反応の開発―アルキルボロン酸エステル・多置換ベンゾフランの合成―」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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炭素―炭素σ結合または炭素―酸素σ結合の切断と炭素―炭素結合および炭素―ヘテロ原子結合同時形成新規反応の開発―アルキルボロン酸エステル・多置換ベンゾフランの合成―

窪木, 勇一 大阪大学

2022.03.24

概要

化合物内の任意のπ結合を切断し、新たな結合を形成する化学変換は古くから知られている反応の一つである。しかし、σ結合を切断し、新たな炭素―炭素σ結合または炭素―ヘテロ原子σ結合を同時に生成する方法は限られている。通常、炭素―炭素σ結合や炭素―酸素σ結合は不活性であり、その結合を活性化するための方法として、(A)隣接位のヘテロ原子が、炭素―炭素σ結合の電子状態を偏らせ活性化する、あるいは(B)小員環化合物の歪みを利用するという2つのアプローチを組み合わせることで、σ結合の切断と続く炭素―炭素σ結合または炭素―ヘテロ原子σ結合を同時に形成する反応が報告されている。しかし、本反応はいまだ未開拓な研究分野であり、基質や生成物、遷移金属触媒が限られていた。このような背景下、著者は(i)「三塩化ホウ素を用いたアリールシクロプロパンの開裂を伴う1,3-アリールホウ素化反応の開発」と(ii)「パラジウム触媒を用いた3-フェノキシアクリル酸誘導体の炭素―酸素結合切断反応/炭素―炭素結合形成反応によるベンゾフラン誘導体の反応性解析」に成功した。(i)シクロプロパンは、高い歪みエネルギー(27.5kcal/mol)を持つ環状化合物であり、1960年代から光や熱を用いた開環反応が研究されている。しかし、シクロプロパンにホウ素官能基を導入する方法はこれまで挑戦的な課題とされてきた。本研究背景下、2010年にStephanらはFrustrated Lewis Pairとアリールシクロプロパンの反応を報告しているが、その反応成績体は反応性の低いアルキルボレニウム塩である。2018年にZhuらは実用的なアリールシクロプロパンのヒドロホウ素化反応を報告した。本ヒドロホウ素化反応におけるアルキルボランの生成機構は段階的に進行すると考えられている。はじめにシクロプロパンが三臭化ホウ素と反応するとシクロプロパン環が開環し、生じたベンジルカチオンにPhSiH3由来のヒドリドが付加し1,3-ヒドロホウ素化が進行する。著者はこの研究に関して、ベンジルカチオンを安定化する条件を見出すことができれば、求核力の低い芳香族化合物の付加反応が進行するのではないかと考えた。はじめに、シクロプロピルベンゼン、トルエン、各種ホウ素化試薬を用いてシクロプロパンとホウ素化試薬の反応性を調べた。ジクロロメタン中、三塩化ホウ素(BCl3)を室温で攪拌したところ、目的とする1,3-アリールホウ素化が進行した化合物は確認できなかった。反応時間、温度、ホウ素化試薬の当量、添加剤などを種々調査した結果、ジクロロメタン溶媒中、トルエンを10等量、BCl3を5当量加えて-30℃で48時間攪拌後、ピナコールとトリエチルアミンで反応液を処理すると、目的の3,3-ジアリールプロピルボロン酸エステル誘導体を81%の収率で単離することができた。本反応は、アルキル鎖、フェノキシドやハロゲン(クロロ基、ブロモ基を4位に有するアリールシクロプロパンでも適用可能であった。また、トルエン以外のアルキル鎖を有する芳香族炭化水素化合物でも同様の反応が進行することを明らかにした。本反応では、はじめにアリールシクロプロパンとBCl3が反応することで、シクロプロパン環の開裂、トリクロロボリル基との付加反応が進行し、続く芳香環のFriedel-Crafts型の反応により3,3-ジアリールアルキルボラン中間体が得られると考えられる。他にも、著者はこの中間体に対し、ピナコールとトリエチルアミンの代わりに塩基と過酸化水素で処理すると、アルコール誘導体が、アジ化ベンジルで処理すると,2級アミン誘導体が中程度以上の収率で得られることも見出した。

(ii)炭素酸素σ結合を切断し、炭素―炭素σ結合または炭素―ヘテロ原子σ結合を同時に生成する反応機構でベンゾフラン誘導体を合成する方法は、遷移金属触媒を用いた転移を伴う環化異性化反応に限られている。ベンゾフランは医薬品や農薬などの機能性分子に多く含まれる有用な骨格であるが、転位できる官能基としては、アリル基、含ホウ素官能基、ビニル基、カルボニル基、プロパルギル基に限られている。このような背景下、当研究室では、ニッケル触媒を用いたアクリル酸の転位による2,3二置換ベンゾフランの合成を報告している。この反応は、ニッケル触媒によるアクリル酸エステルの転位反応を利用した初の合成法であるが、現在ではインドールの合成も報告されている。いずれの例でもニッケル触媒が使われている。ところで、著者が所属する研究室では、本反応がパラジウム触媒でも進行することを見出していたが、その場合の反応条件最適化、基質一般性や反応機構に関する考察については未解明であった。パラジウム触媒によるアクリル酸エステルの転移を伴う環化異性化反応は初の例であり、その反応性に興味が持たれる。基質には二工程で合成できるo-(フェニルアルキニル)-フェノキシアクリル酸メチルを用いた。種々条件を検討した結果、基質、Pd(dba)2(10mol%)とPCy3(20mol%)のジメチルホルムアミド(DMF溶液を110℃で7時間加熱攪拌したとき、目的の2-フェニル-3-アクリル酸メチル-ベンゾフラン誘導体を95%の収率で得ることに成功した。また、本反応の基質一般性について検討した結果、アルケン上にアルキルエステル、アルキン上に芳香環が必要なことを明らかにした。他にも、ベンゼン環上にメチル基やクロロ基を有する場合の反応性についても調査した。また、クロスオーバー実験などによる反応機構の考察についても調べた結果、これまでのニッケル触媒を用いた転移を伴う環化異性化反応と同様に、5員環メタラサイクルを経由する反応で進行することが示唆された。

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