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書き出し

Generation and Utilization of Organoalkali Reagents via Reduction or Decarboxylation

Wang, Shuo 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24432

2023.03.23

概要

学位論文の要約
題目

Generation and Utilization of Organoalkali Reagents
via Reduction or Decarboxylation
(還元あるいは脱カルボキシル化を利用した
有機アルカリ金属反応剤の発生と利用)

氏名

王 爍

序論
有機アルカリ金属反応剤は有機合成において有用な反応剤であり、その発生法の開発
は古くから研究されている。有機アルカリ金属反応剤の発生法として、炭素―ハロゲン
結合の切断を利用した直接還元法や他の有機アルカリ金属反応剤を用いたメタル化な
どの方法がある。一方、脱カルボキシル化によって有機アルカリ金属反応剤を発生する
方法もあるが、その例は極めて少ない。また、有機アルカリ金属反応剤において、有機
リチウム反応剤の発生法は広く研究されているが、有機ナトリウム反応剤および有機カ
リウム反応剤の発生法の開発はまだ発展途上である。その理由として、有機ナトリウム
および有機カリウム反応剤は活性が高く扱いづらいからである一方で、有機リチウム反
応剤よりも優れた反応性を有している。これらの理由に加えて、希少元素であるリチウ
ムと比べてナトリウムとカリウムは地球上に多く存在しているため、有機ナトリウム反
応剤と有機カリウム反応剤の発生法の開発が期待されている。
そのような状況のもと申請者は、有機ナトリウム反応剤および有機カリウム反応剤の
効率的な発生と利用を目指した。アリールシクロプロパンが金属ナトリウムの還元によ
ってシクロプロパン環の開環反応が進行することでラジカルアニオン種が系中に発生
し、このラジカルアニオン種は系中に共存するホウ素求電子剤によって速やかに捕捉さ
れた。生成したラジカル種は金属ナトリウムによるさらなる還元を受け、ホウ素求電子
剤によってアニオン種が再度捕捉されることで高収率かつ高い syn 選択性で 1,3-二官能
基化生成物を与えた。その他、アミド基を有するアリールシクロプロパンを基質として
用いることで、高い anti 選択性で二つの異なる官能基を導入できた。また、入手容易な
カルボン酸のカリウム塩を二機能性反応剤として用いることで、C−H カルボキシル化
を実現した。加熱条件下でカルボン酸のカリウム塩が脱カルボキシル化することで有機
カリウム種が発生し、強塩基として作用することで基質の脱プロトン化が速やかに進行

した。脱プロトン化によって発生したカルボアニオンが、系中に共存する反応剤由来の
二酸化炭素によって捕捉され、カルボキシル化が達成された。種々のカルボン酸塩の検
討によって、トリフェニル酢酸のカリウム塩を用いることで、従来の炭酸セシウムおよ
び二酸化炭素ガスを用いた C−H カルボキシル化反応の報告例よりも低い温度でカルボ
キシル化を達成した。

1 章 金属ナトリウムを用いたアリールシクロプロパンの開環二官能基化反応
ひずんだ骨格を有するシクロプロパンは反応性に富み、遷移金属触媒を用いる反応を
はじめ様々な開環反応が知られている。そうした反応の一つに単体アルカリ金属による
還元が挙げられる。アルカリ金属による還元によってシクロプロパン環が開環し、1,3ジアニオン種が発生する。この 1,3-ジアニオン種はハロゲン化アルキルやカルボニル化
合物で捕捉可能であるものの、効率は非常に悪い。これは、生じた 1,3-ジアニオン種が
不安定であり、系中で分解してしまうためである。アルカリ金属によるシクロプロパン
の還元的開環反応を有機合成上有用な手法として確立するためには、還元によって生じ
たアニオン種の速やかな捕捉が必要となる。
申請者の研究室では、アルカリ金属による還元条件に耐えるもののカルボアニオンと
の反応性に優れた特別な求電子剤を用いる反応を研究している。こうした状況の中、申
請者は還元条件に耐える様々なアルコキシ置換ホウ素求電子剤を用いたアリールシク
ロプロパンの開環二官能基化を実現した。メトキシピナコラートボランを求電子剤とし
て還元反応系中に共存させることで、生じるアニオン種の速やかな捕捉が可能となり、
目的の 1,3-ジボリル化体が高収率かつ高い syn 選択性で得られた。1,3-ジボリル化生成
物から酸化反応やカップリング反応により立体保持での分子変換も実現した。ホウ素求
電子剤の他に、エポキシド、オキセタン、ホルムアルデヒドを用いても良好な収率で目
的の二官能基化生成物が得られた。また、金属ナトリウムと基質を加える順番などの手
順が還元的ジボリル化反応の収率へ与える影響を検討した。その結果、金属ナトリウム
と基質を加える順番は収率にほとんど影響を与えないことが明らかとなり、大量合成に
おける本反応の有用性を示せた。

2 章 金属ナトリウムを用いたアリールシクロプロパンカルボキシアミドの開環二官能
基化反応
第 1 章に引き続き、申請者は 2-アリールシクロプロパンカルボキシアミドを用いる
ことで、シクロプロパン骨格上に導入したアミド基が与える開環ジボリル化反応の収率

と立体選択性への影響を検討した。その結果、予想された開環ジボリル化生成物は得ら
れず、モノボリル化生成物が主生成物として得られた。その理由として、基質が還元に
より開環した後に生じたベンジルアニオンがホウ素求電子剤に捕捉され、六員環エノラ
ート中間体が生成し、後処理によってプロトン化されることでモノボリル化生成物を与
えたと考えた。このエノラート中間体はプロトン以外の求電子剤でも捕捉できると考え、
ベンジル位のボリル化の後にヨードメタンや無水酢酸、ジメチルジスルフィドなどの
種々の求電子剤で捕捉することで高収率かつ高い anti 選択性で二官能基化生成物が得
られた。また、三置換のシクロプロパンカルボキシアミドの開環官能基化反応を検討し
たところ、反応温度の違いによる炭素―炭素結合切断位置の選択性制御を達成した。昇
温実験から、低温条件によって生成する速度論的な開環反応の中間体から熱力学的な中
間体へ異性化する現象も見出した。この異性化を利用した新規反応の開発が期待されて
いる。

3 章 カルボン酸塩を二機能性反応剤として用いた C−H カルボキシル化反応
二酸化炭素を用いたアレーン類やアルキン類などの C−H カルボキシル化反応が多く
報告されている。しかし、このような C−H カルボキシル化反応では、高い反応温度あ
るいは高価な遷移金属触媒が必要なだけでなく、二酸化炭素ボンベから二酸化炭素ガス
を供給する必要がある。今回申請者は、扱いやすいカルボン酸塩を強塩基かつ二酸化炭
素源の二つの役割を果たす反応剤として用いることで C−H カルボキシル化反応の実現
を目指した。加熱条件下、溶液中でカルボン酸塩が脱カルボキシル化によって分解し、
生じた有機アルカリ金属種が強塩基として作用することで基質の脱プロトン化が進行
した。カルボン酸塩から脱離した二酸化炭素は反応系中に留まり、基質の脱プロトン化
によって生じたカルボアニオンと反応することで基質のカルボキシル化生成物が得ら
れた。種々のカルボン酸塩を検討した結果、トリフェニル酢酸のカリウム塩を用いるこ
とでモデル基質であるベンゾチアゾールのカルボキシル化反応を温和な条件下で実現
できた。また、トリフェニル酢酸塩の対カチオンの検討によって、カリウムカチオンが
重要であることが分かった。この手法を用いることで、幅広いアレーン類やアルキン類
の基質が適用しただけでなく、医薬品誘導体や生理活性物質の合成にも成功した。また、
この手法ではモデル反応の生成物である 2-ベンゾチアゾールカルボン酸エステルの大
量合成および二機能性反応剤であるカルボン酸塩の調製と目的物であるカルボン酸エ
ステルの one-pot 合成にも成功し、トリフェニル酢酸のカリウム塩の有用性を示した。

結論
申請者は博士後期課程において、有機ナトリウム反応剤および有機カリウム反応剤の
発生法の開発と効率的な利用を行った。金属ナトリウムを用いたアリールシクロプロパ
ンの還元的開環反応では、生じたアニオン種を還元条件に耐えるホウ素求電子剤での速
やかな捕捉によって高収率かつ高い syn 選択性でのアリールシクロプロパンの 1,3-ジボ
リル化を達成した。さらに、アミド基を有するアリールシクロプロパンを用いることで、
高収率かつ高い anti 選択性で非対称な二官能基化を実現した。三置換のシクロプロパン
カルボキシアミドを基質として用いた際に、反応温度の変化によって炭素–炭素結合切
断位置を制御できることを見出した。また、入手容易なトリフェニル酢酸のカリウム塩
を強塩基かつカルボキシル化剤の二機能性を有する反応剤として用いることで、遷移金
属触媒を用いずに、温和な条件下でのアレーン類やアルキン類などの C−H カルボキシ
ル化を実現した。この手法を利用することで、モデル反応の生成物である 2-ベンゾチ
アゾールカルボン酸エステルの大量合成および二機能性反応剤であるカルボン酸塩の
調製と目的物であるカルボン酸エステルの one-pot 合成も達成した。 ...

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